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なかはら流!牛肉の塊を最高のごちそうへと昇華させる手切り大解剖!


手切りへのこだわり

 手切りにこだわる理由はシンプルで、冷凍か生なら生、機械か手切りなら手切りがおいしいと思うから。薄切りのためにスライサーを使うと、必要以上に刃が当たって肉の表面が溶けてしまいます。置いておく時間が長いほど表面は溶け、せっかくの脂も抜けてしまう。だから手で切ってすぐに焼くのがうちのスタイル。刃を入れる角度を微調整するのも、手切りだからできることです。

 肉は個体差があり、すべて同じとはいかないもの。その日の肉に合わせて切る厚さも変えるので、店にはかりを置く習慣がありません。肉のおいしさは目で見て、匂いを嗅ぎ、テクスチャーを経て最後に味。だから味を感じる妨げになるものを取り除き、テクスチャーを重視します。厚さは違っても食後感が変わらなければ、「今日もなかはらの肉を食べた」と感じていただけるのです。

なかはらの手切り大解剖

ヒレ

ヒレ部分は1本で納品される。この状態で約5.8kg。掃除によって約50%をそぎ落とす。以下は、中央のシャトーブリアンの切り方。

赤身と脂の境目に指を差し込み、脂をめくり上げる。力を加えなくてもはがせるところまで進め、引っかかる筋に軽く刃を当てながら大きな脂をはがす。

赤身を極力触らず、取り除く脂や筋だけに触れるよう注意する。肉を持ち上げる時も脂を掴むようにして、筋の位置を確認しながら刃を当てていく。

脂の層をはがすたびに、次の脂の掴める部分や赤身との隙間を探る。無理に手ではがそうとせずに、境目に刃先を入れて軽く引きながら切っていく。

さらに脂を取り除いていく。肉の割れ目は筋のそばにあるので、筋の位置を確認して指を差し込みながら刃先を入れ、筋を切るのがポイント。

ここで耳やヒレ耳と呼ばれるサイドマッスルを切り離す。ここには筋が多く入っているため、食べる場合は丁寧に掃除をする必要がある。

肉を立体的に捉えながら、筋の流れ(つながり)を確認することも大切。中原さんはこの時点で、まだ包丁のほぼ刃先しか使っていない。

ここで肉の全貌が明らかになり、表面に筋が見えてくる。包丁の刃を45度にキープしたまま肉に当て、逆の手でガイドしながら刃を滑らせていく。

刃の角度は45度のまま、最後まで刃を通す。はがしている脂や筋を掴みながら刃を動かすことで、赤身に触れなくとも安定感が得られる。

掃除が終わった状態。口に入れた時にストレスとなる筋を取り除き、臭みの元となる脂が徹底的に排除された。

スネ

通常は「なかはら」では提供せず、姉妹店の「ヘンリーズバーガー」で挽いて使用。筋が非常に多く、どこまで掃除するかの判断が難しい部位でもある。

ここでも脂の下側に指を入れると筋と脂の分かれる部分があるので、そこに刃先を入れてまずは脂をはがしていく。この部位は脂も筋っぽいのが特徴。

筋っぽい部分ではあるが、力を入れて引っ張りすぎないよう注意しながら、数回に分けて表面の脂を丁寧にそぎ落としていく。

筋が表面に出てきたら、筋本体を押さえたまま刃を45度に入れて引きはがしていく。刃を肉から浮かせるよう意識すると、はがしすぎが防げる。

表面に見えている筋をすべて取り除き、見た目でかたそうな部分がなければ終了。色が深い赤でツヤもあり、味が濃そうに見える状態がベスト。

サーロイン

表面の脂を一切残さないのが「なかはら」のサーロイン。取り除く量はほかの部位に比べ少ないものの、きめ細やかな処理を施していく。

小骨の残りがちなゲタと呼ばれるあばらの部分を切り落とし、ここでも筋付近に指を入れて脂をはがしていく。刃先は補助として入れる程度。

肉と脂の境目をなぞっていくと、肉の割れ目が見えてくる。割れ目のくぼみに筋があることを見極めながら、筋に沿って指を差し込む。

ここでも自然に隙間が生じるので、ある程度脂を手ではがしながら、肉が引きちぎれてきたところで刃を添えて切り離していく。

最も太い筋はまだ肉に残っている状態なので、ステーキならカット後に筋を見極めながら切り落とす。これによって口に当たるかたい部分がなくなる。

ランプ

ランプからとれる、やわらかくステーキ向きな肉質のランボソの切り方。中央から縦に伸びる厄介な筋があるので、肉を3Dでとらえて刃の入れ方を決める。

肉の線維に対して、切る角度は90度。まずは切る角度を見定め、切りやすいように肉をひっくり返すとよい。この場合、刃表を外側に向けて切ることになる。

肉の中央を走る太い筋は、次第に細くなって消えるのが厄介だ。指を入れて筋に沿って切り分けてしまうのも手。

筋をそのまま残して切ると、肉に筋の割れ目が入る。ステーキカットしたあとに、筋だけを丁寧に外す方法もある。

割れ目はあるものの、筋を取り除いたステーキカットのランボソ。このように閉じた状態で焼けば、割れ目はほとんど気にならない。


本記事は雑誌料理王国第268号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第268号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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