改札を出ると、そこは大陸だった。中国語や中国の食文化に明るいメンバーたちが今回訪れたのは、池袋駅北口、西川口駅、蕨駅周辺で拡大中の新中華街。都心から運賃数百円の駅前中国を体験すると、中華料理がもっと面白くなる。
その(1) 池袋駅北口エリアはこちら
その(2) 西川口駅西口エリアはこちら
都心から見ると西川口駅のひとつ先、蕨駅から徒歩7分。住民の約半数が中国人という芝園団地では等身大でリアルな大陸の味覚を体験できる。
芝園団地はUR都市機構の賃貸住宅で住民は約5000人。そのうちの外国人居住者約2500人の大半が中国人だ。団地の中心にはスーパーを軸にした「川口芝園ショッピングモール」がある。飲食店も食料品店も八百屋も今ではほとんどが中国人経営。訪れたのは平日の夕方だったが、行き交う人々の会話はほぼ中国語。八百屋の店頭にも「芋头148円」「新到豇豆550円」「今日香菜特价」など、日本人には見慣れない簡体字が並ぶ。
芝園団地に隣接する「芝園ハイツ」のアーケードに「酸辣粉」という看板を掲げ
た店がある。オーナーの王洪敏さんは黒龍江省ハルピン市の出身。店には「ときどき日本人も訪れる」というが「90%が中国人のお客さん」。折しも時刻は帰宅時間。20 ~ 30代と思しき勤め帰りの若者が夕食をテイクアウトするために続々と訪れる。ほぼ毎日この店で夕食を調達しているという男子は、都内のIT企業に勤めているという。王さんも訪れるお客も、流暢な日本語で世間話にも花が咲く。
お客のお目当ては、店の名にもなっているピリ辛の春雨スープ「酸辣粉(サンラーフェン)」600円や、大鍋で煮込んだ醤油味の豚バラ肉をご飯にのせた「卤肉飯(ルーロウファン)」600円。いずれの料理も中国人が日本人向けに営業する中華料理店の味とは異なり、本気の大陸味だが実に美味い。異国の地で営業しているにも関わらず大陸の味の再現性が高い…と感心することこの上ない。
肩を並べて同じ料理をつまみ、あーでもないこーでもないという会話を重ねていると、大陸が少し近づく感覚を味わっている自分に気付くだろう。
本記事は雑誌料理王国2019年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2019年12月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。