食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」

名匠のスペシャリテ「ルグドゥノム ブション リヨネ」クリストフ ポコさん


時代を超えて愛され続ける名匠のスペシャリテがある。
リヨン料理「ルグドゥノム・ブション・リヨネ」のオーナーシェフ、クリストフ ポコさんと、「ピスタチオ入り自家製ソーセージ添え 野菜 マセドワン」

美食の都リヨンの食文化を神楽坂のブションで

 高速列車TGVでパリから2時間、「美食の街」リヨンで、私は生まれ育ちました。郊外には50年も三ツ星を獲得し続ける「ポール・ボキューズ」をはじめ、世界に名だたるガストロノミーレストランがあるのは、ご存じの通りです。でも、リヨンの食の魅力は多彩です。街には、「ブション」と呼ばれる独特の雰囲気を持つ気軽な飲食店がたくさんあります。ブションは、パリのビストロとも似て非なる雰囲気を持っています。

 中世から絹織物の交易で栄えたリヨンで、大衆が食事とワインを楽しんだのがブションの始まりでした。料理の作り手は地元の「お母さんたち」。リヨンを美食の街とした最初の担い手は、彼女たちでした。その一方で、まだフランスがヨーロッパの片田舎と呼ばれていた時代に、国際都市リヨンでは先進国イタリアのメディチ家仕込みの宮廷料理が根づいていました。

 この街では富裕層の料理と大衆の料理の、心地よい融合が生まれていたのです。これこそがブションが育んできたリヨン料理です。

 その真髄は「素材の持ち味を活かすこと」に尽きます。そして、「食を楽しむこと」「人々の集う温もり」をとても大切にしてきました。

 リヨンで生まれ育った私は、確信しています。リヨンがフランスの食文化の中心であり、その象徴がブションだと――。

 調理学校「ル・コルドン・ブルー」で教鞭をとるために来日して9年後、私はわが故郷リヨンに敬意を表し、「日本で初めてのリヨン人によるブション」を、ここ東京・神楽坂にオープンしました。神楽坂の風情は何ともいえず素敵です。大都会東京にあって、巨大ビルがありません。

 ここに暮らす人々は、昔の風情を守ろうとしています。石畳みの裏道は、故郷フランスのよう。

 毘沙門天にほど近いこの本多横丁の「ルグドゥノム・ブション・リヨネ」には、リヨンのブションのイメージを忠実に再現しました。「ルグドゥノム」とは、リヨンの古名です。ローマ人の都市として誕生し、2000年の歴史を刻んできた古都です。だからルグドゥノムとしました。

 らせん階段やモザイク状のタイルの床、樫の木のテーブル、錫の鉄板を使ったカウンターなど、ブションならではのスタイルです。

 ここでリヨン料理を、ボジョレ―ワインとともに味わっていただきたい。わがブションの定番は、コショナイユと呼ばれる、豚肉を使ったシャルキュトリ(ソーセージやパテ)です。私は「日本シャルキュトリ協会」の会長としても、コショナイユの普及に努めているところです。

 前菜としてお出ししている「ピスタチオ入り自家製ソーセージ添え野菜マセドワン」は、優しい味わいに仕立ててあります。マセドワンとは野菜をさいの目に切り揃え、自家製のマヨネーズで和えたサラダ。このリヨンの〝おふくろの味〞がソーセージとぴったり合います。

 素朴ながら味わい深いリヨン料理を神楽坂のブジョンを通じて、より多くの日本の方々に楽しんでいただきたい、そう願いながら、日本の仲間たちと厨房に立っています。

クリストフ ポコ Christophe Paucod
1973年、フランス南東部リヨン郊外ヴェニスィウに生まれる。15歳で料理の道へ。ルーアンの二ツ星レストラン「ジル」をスタートに、パリの「プラザアテネ」をはじめ、名門ホテルで腕を磨く。98年に来日。料理学校「ル・コルドン・ブルー」で教鞭をとる。2000年から「ホテルソフィテル東京」の総料理長に。07年に独立、「ルグドゥノム・ブション・リヨネ」をオープン。 11年にミシュランガイドの一ツ星を獲得。「日本シャルキュトリ協会」会長。

ルグドゥノム・ブション・
リヨネ

東京都新宿区神楽坂4-3-7 海老屋ビル1F
03-6426-1201
● 11:30~14:00LO、18;00~21:30LO
● 月、第1・3火休
● 40席
www.lyondelyon.com

長瀬広子=取材、文 依田佳子=撮影

本記事は雑誌料理王国第257号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第257号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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