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中華料理界のコーディネーターとして活躍する「サトタカ」が見た中国の今


中国の食文化の魅力を広く深く伝えるWEBメディア「80C(ハオチー)」。その編集者・ライターとして活躍する「サトタカ」こと佐藤貴子さん。取材では国内の名だたる中華料理店を総ナメ、大陸や台湾にも年間幾度も訪れて、現地情報のアップデートも欠かさない。まさに中華料理界のコーディネーターとして活躍する「サトタカ」。その足跡を辿り、その視線の先にあるものを探ることで、中華料理の世界に新しい座標を発見できるかもしれない。

中華料理人の交差点、早田哲也の功績
名物の火鍋を筆頭に四川料理の名店として評判の「中国料理仙ノ孫」。オーナーシェフの早田哲也氏は、中国への買い出しや技術交換会など、中華料理人たちを横で繋ぐ、料理人の交差点役を積極的に買って出る。中華の世界をシャッフルし、確実に面白くしている人物だ。

下の写真の赤いTシャツに身を包んだ巨漢が早田シェフ。今年10月上旬に10日間の日程で、買い出しとリサーチのために出かけた成都・重慶から帰国した瞬間に撮った写真だ。ともに帰国したメンバーは全員中華の料理人。「早田さんは、一緒に中国へ出かけたり勉強会を開催したりと、今の30~40歳代の中華料理人たちを横軸で繋げる立役者。ゆるく心地の良い学び合いと技術交換の環境を作ったという意味での功績は大きいと思います」とサトタカは言う。…まさに“中華料理人の交差点”。「料理人の旗振り役を積極的に買って出ている早田さんが、今の中華料理界をパワーアップさせているように思うんです」。

今回早田シェフとともに帰国したのは、横浜は本牧で四川料理を繰り出す「中国料理香」
の柴田順平氏、山口県宇部市で四川料理店「虎の子」を営む児島寛康氏、ホテルメトロポリタン長野内の中国料理「皇華」料理長の磐城智一氏。帰国後は現地で得た情報や技術を交換するために、食事会を開く予定。
中国料理 仙ノ孫
東京都杉並区西荻北4-4-2
TEL 03-3390-4808
12:00~14:00 LO
18:00~20:30 LO
月・火休(水のランチ休)

今「サトタカ」が大切にしている、大陸で円卓を囲む価値
中華料理界で今サトタカが注目しているのは以下の3点。
①中華の料理人たちを横に繋げる「仙ノ孫」の早田哲也シェフ
②中華の世界で誰も見たことのない地平を見据える「茶禅華」の川田智也シェフ
そして3つめが、③大陸で円卓を囲むこと。
「(中国の)大陸で円卓を囲む」ことにどんな価値があるのか?をサトタカに聞いてみた。

さて。本題に入る前に「サトタカ」の紹介。プロフィール的にはこんな感じだ。
サトタカ(佐藤貴子)。食と旅を中心としたエディター、ライター。中華食材専門商社のECサイト立ち上げと運営を通じて中華食材に精通。中華料理店、中国食材、中国の現地レポートなど、“中華料理の今”を丁寧に伝えるWEBマガジン「80C(ハオチー)」のディレクター。
大衆店から高級店まで新しい中華料理店が開店したと聞けば取材に赴き、台湾や大陸中国にも年間に幾度となく訪れ、現地の食文化リサーチや最新情報のアップデートも欠かさない。そんなサトタカが目下のところ注力していること、それが“大陸で円卓を囲む”こと。

重慶市の農家レストランにて円卓を囲む。家の裏で走り回っている地鶏を絞めて調理。トイレの横に豚がいたという鮮烈な初体験も。
「紅酸湯(ホンスゥァンタン)」は、中国の麹などで乳酸発酵させたトマトをスープで割って煮込む鍋。苗(ミャオ)族をはじめ、貴州省東南部に住む少数民族に伝わる料理。
貴州省のツアーで朝食に食べた「白酸牛肉湯(バイスゥアンニュウロウタン)」という鍋料理。発酵させた米の研ぎ汁で牧草牛を煮込むさっぱりした味わい。
総勢21名で貴州省に赴き、郷土に伝わる鍋料理を囲んだシーン。料理研究家や中国在住経験者のほか、上海在住の中国人も参加。

大人数で出かけると、中国は俄然楽しさを増す

「1人で行くより大人数で行ったほうが中国は確実に楽しい」とサトタカ。…確かに大陸の中国料理は1皿のポーションが大きい。ゆえに、大勢で食卓を囲めると1度の渡航で体験できる料理の数が増える。「中国の食文化は、まだ私たち日本人が知らないことのほうが遥かに多い。そして大陸で味わう料理は“美味しさの地平線”が違うと感じます。美味というより楽しい。なんというか、半ば乱暴に胃袋を掴まれる感覚に近いかも」

胃袋目線で中国を旅すると、今までの中国観が一変する。

中国と聞くと得体の知れない怖さを感じる人も少なくないでしょう。言葉の壁もありますね。飲食店や市場で英語はほぼ通じず、中国語のみで方言もある。そんな大陸の旅の心理的ハードルを下げる機会を提供したい」ということで、サトタカは「胃袋目線で中華圏を旅しよう」をキャッチフレーズに、中国の現地のディープな食文化の最新事情や中国への旅情報を提供し、実際に胃袋目線で大陸を旅するツアーやイベント等の企画・実施を手掛けるサービスを始めた。その名は「ROUNDTABLE(ラウンドテーブル)」。

本文でも紹介したわらびを加えて発酵させた塩水の鍋料理店では、上半身裸体の男性陣が円卓を囲んでいるというシーンに遭遇。
屠畜前の内容物が残った状態の牛の胃袋を調理する、牛瘪(ニウビエ)という料理は中国西南部一帯に住む侗(トン)族の郷土料理 。
貴州省東南部の街、都匀の「水庫飯店」。注文が入ると飼っている鶏を締めるところから料理が始まる。大陸ではよくあるシーン。
左の写真でどの鶏を食べるかを選んだ後に、締めて料理になるまで37分。木姜鶏と呼ばれるこの料理は腸や血も入る鶏の全部鍋。

臭い、奇天烈。でも心地よい。知らなすぎた中国の新しい一面。

ラウンドテーブルのサイトでは、2019年9月に出かけた中国西南部の貴州省で出合った料理の一部が記事化されている。例えば、ワラビを加えて発酵させた塩水をスープとして使う、強烈な臭気を放つ鍋。あるいは、屠畜前に食べた内容物がまだ残っている牛の胃袋を使った鍋。…まぁまぁ強烈だ。そして斬新過ぎる。「中国料理を中国料理と呼ぶのは、フランスやイタリアなどの料理をまとめて“ヨーロッパ料理”というようなものだと思います」とサトタカは言う。中国はひとつの国。しかし、国土は広く地域ごとに収穫できる作物も違う。中国には56の民族が住んでいて、言葉も食文化も食習慣も異なるのだ。

糸を引かない現地の納豆で調味する貴州省名物の豆鼓火鍋は、省都・貴陽市内の専門店で。少人数ではこの大きさの鍋はサイズオーバー。
左の写真の豆豉火鍋のベースとなる納豆調味料で作った炒飯。具は豚肉と青菜を少々。「自宅でつくる時は、モチ麦をブレンドした白米を使うとおいしい」とか。

「中国料理とは、多彩な地方料理の総称です。なかでも惹き付けられて止まないのは、中国西南部の食文化。少数民族が多く住む貴州省は、トマト、唐辛子、米のとぎ汁、わらび、小魚など、壷の中で発酵させる調味料づくりが盛んです。また、南北に長く標高差がある雲南省は、ヤクの肉からマンゴーまで、ひとつの省とは思えないほど食材が多彩。特に夏場は松茸とポルチーニなどのきのこ天国に。その躍動感を体験すると心が踊ります」。体験は最高のメディアだ。胃袋目線で中国を旅すると、今まで見ていた中国とは違う姿がきっと見えるはず。

text 小林淳一 photo 佐藤貴子

本記事は雑誌料理王国2019年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2019年12月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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