日本のカレーの進化が止まらない。カレーも、そのカレーを作る人も、より独自の道へ。「らしさ」を謳歌する5軒を紹介する。
NEW GENERATION 01
NEWROSE
2019.OPEN
日本で進化したリッチでごちそう感あふれるカレー
ピンクのドアを開ければ、カウンターもピンク。ネオ80’s っぽい店内は、カレーを食べる前から興味をそそるアイテムだらけ。名作へのオマージュをちりばめたポップミュージックのように、その元ネタが気になってくる。オーナーシェフの小西健司さんに聞けば、まず店名はパンクバンド「ダムド」の曲名から。ピンクのカウンターはロンドンのヒップなレストラン「RITA’S」に倣ったそう。開店1周年のフライヤーはシティポップのイメージで作ったという。音楽からの気の利いた引用が心憎い。とはいえ最大の「元ネタ」はやはり、大好きだったカレー店。この店をオープンする前に小西さんが通い詰めたのは、1978 年に創業、2020 年 2 月に惜しまれながら閉店した横浜市・鴨居の「カシミール」だった。「実はご主人に、自分もカレー店を始めると打ち明けたことがあるんです。そうしたら『自分が一番おいしいと思うカレーを出せれば、やっていけるよ』とアドバイスをくれて、すごく励みになりました」
小西さんにとって一番おいしいカレー。それはリッチなごちそう感で幸せにしてくれる、日本人が日本で進化させたカレーだ。それを完成させるために、レシピのベースとなる出汁から考えた。町田「アサノ」や、札幌「村上カレー店プルプル」など、名店のカレーを参考に、豚骨、鶏ガラ、魚介、椎茸、昆布と試作を重ねる。結局たどり着いたのは、鯛のアラのスープ。うま味が強いのにクセがない。これをベースに鶏ひき肉と鶏軟骨、さらにレモン果汁を合わせ、コリアンダーやカルダモンでまとめたのが、店のシグネチャー「モダン・レモン・チキン」。鯛と鶏のダブルスープとレモンの爽やかさが斬新だ。
この「モダン・レモン・チキン」と、NEWROSE流バターチキン「ネオ・ムルグ・マッカーニ」や、味噌で日本の煮込みっぽさも感じさせる辛口ビーフカレー「ホテル・ビーフ」をあいがけしたひと皿は、新しくて懐かしい「新世代のリッチなごちそう感」にあふれている。
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text ワダヨシ、田嶋章博 photo 本多 元
本記事は雑誌料理王国2020年6・7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年6・7月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。