1963(昭和38)年、日本橋室町で開業した洋食屋「レストラン桂」。 父の後を継ぐ手塚清照シェフは、調理法も味も的確に受け継いだが、守り抜くのはそれだけではない。今も健在の“店のルール”も、だ。
手塚シェフが徹底して守るこの店のルール、それは「母」。今年81歳になる母上、清美さんのことだ。今は引退した先代の正昭さん(つまりシェフの父上)と清美さんがふたりで創業した当初は高級レストランを意識していたそうだが、当時の日本橋は今にも増して“サラリーマン天国”。オードブルの仕出しや出前など、頼まれたら全力で応える日々。定着してきたサラリーマンの顧客に訊けば、焼き 鳥などの居酒屋メニューや焼酎&ウイスキーのボトルキープなど、居酒屋さながらのオプションが求められる。が、そんなニーズにも全力で応える。…結果、今でもメニューには「ししゃも」や「とりわさ」が看板メニューの「海老フライ」と肩を並べてリストオンされている。
バターで炒めた醤油風味の「かつお節スパゲティ」も同じ流れで生まれた。町内に本店を構える「にんべん」の社員向けに出した鰹節をトッピングしたスパゲティに、同じく室町を拠点にする「山本海苔店」の副社長のご所望で海苔を振ったら、それがうまいと評判に。
“お母さん”には名言がある。「この店に来た人はだいたい家族みたいなもの」。一事が万事その言葉に尽きる。どんな客にも家族のように耳を傾ける名店だ。
レストラン桂
東京都中央区日本橋室町1-13-7
TEL 03-3241-4922
月~金 11:00~14:00LO 、17:00~20:30LO 土11:00~14:00LO
日祝休
text 中村麻矢 photo 鈴木泰介
本記事は雑誌料理王国2020年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年2月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。