中国料理というジャンルに対して、固定観念を持っていないだろうか?
画一的なイメージを持っていないだろうか?歴史が古く、奥深い世界である一方、ここ数年、個性ある料理人が自由な発想で営む中国料理店が登場している。そんな中国料理の"新世代"ともいえる若手料理人たちに話を聞いた。
新宿・荒木町「の弥七」は、暖簾のかかる割烹のような店構え。店内も白木が基調の「和」の雰囲気で、中国料理店とは思えない佇まいだ。ユニークな店名は、高知の実家が「風車」という中国料理店を営むことから、「風車の弥七」にかけ、「後に続く」という意味で名付けた。
店主の山本眞也さんは東京の名店だけでなく、上海でも1年半の修業を積んだ。さまざまな経験を踏まえた上で、店では本場の味そのままではなく、「日本人が作る日本人のための中国料理を追求したい」と考えた。日本料理の調理法や技術を積極的に取り入れているのだ。
「冷凍物は使いません。魚ならお鮨屋さんで扱うような鮮度の良いものを使う。走り、旬、名残などを意識しながら、食材を活かした、見て美しく、器にも手を抜かない中国料理を出していきたい」
外食では積極的に日本料理店に出向き、料理や盛り付け、サービスなどの参考にする。中国には「豪快に手で食べる」という料理もあるが、「の弥七」のお客さまは年齢層もやや高い。手で食べるのが好きではない人も多い。「だから、上海蟹はお出ししない」と山本さん。香箱蟹も、剥いた蟹の身を甲羅に詰めて供すなど、極力お箸で食べてもらえるように工夫する。
「ただし、すべてを品良くしてしまうと、希薄な印象になってしまう」
ときには荒々しい味が必要な事もある。そういう時は、「いい意味で中国料理のよさを出す」という。
お客さまの年齢が高ければ高いほど、油分の多い正統派の中国料理をイメージして来店する方が多い。だから、オープン当初はそういう店と比べられて苦戦した。
「ようやく『これはこれでいい』と理解していただけるようになって、よかったなと思っています」