中国料理の新世代 気鋭の若手料理人に学ぶ「技ありのひと皿」【の弥七 】山本さん

脆皮鶏(ツイピージー)

皮をパリパリに仕上げるコツは、乾燥させることと「酢」の活用

油をかけ回しながら鶏の皮目をパリパリッとガラスのように仕上げる「脆皮鶏(ツイピージー)」。香ばしいパリッとした皮としっとりした肉質が、口の中で絶妙なコントラストを感じさせる広東料理のひとつだ。山本さんは、「脆皮鶏」が看板メニューの上海の中国料理店で修業していたことがある。日に羽、鳩や鴨も合わせれば300羽を捌く大型店だった。その体験をベースに、どうすればおいしく、しかも皮目がパリッと仕上がるのか試行錯誤し、今のやり方にたどりついたという。

鶏は、しっとりした肉質の山梨県の「美桜鶏」を使用している。取り残しのある毛はもちろんのこと、ピンセットで毛根まで取り除いてキレイにそうじ。シナモン塩を肉にすり込んで味を含ませたら、熱湯を回しかけて皮を張らせる。
次に麦芽糖、米酢、赤酢で作る「皮水」を全体にかけ、その後、乾燥させる。
「一番のポイントは、しっかり乾かすこと。これをきちんとしないとパリパリにはなりません。でも、乾かしすぎてもダメ。それが難しい」

左右と下からの3方向から扇風機で風を当てて乾燥させる。しばらくすると鶏の水分が身と皮の間に出てくる。その水分がなくなった時がベストな状態だ。だいたい1日半。梅雨の時期は3日ほどかかる。 

(左)1日乾燥 もう少し乾燥が必要
(右)1日半乾燥 ベストな状態
パリッと仕上げる一番のポイントが、鶏をしっかり乾燥させること。左右と下からの3方向から扇風機を当てて乾かす。身と皮の間に出てくる水分がなくなった時がベストな状態。

吊した鶏に、100度前後の白絞油を10分間かけ続けた後、皮の色合いを見ながら180~200度に温度を上げて仕上げる。できあがった鶏を吊しておくと、急速に冷却されて皮が飴のように固まる。

皮をパリパリにするには、「皮水」に含まれている「酢」も大きな効果を発揮しているという。

「酢を入れると、歯切れのいい、飴の層があるような食感になります」逆に酢なしの場合は、歯切れが悪く、ゴムのようになる。
さらに「皮水」に入れる糖を麦芽糖にすることで、よりガラス化しやすいこともわかった。
「油ものには、さっぱりとした付け合わせがいいですから」と、山本さんは大根おろしに山椒の葉を和えた木の芽みぞれ酢をそっと添えた。

脆皮鶏(ツイピージー)熱い油を回しかけて皮目をパリパリに仕上げたひと品。普通はレモンや香草が付け合わせだが、「の弥七」では日本人の味覚に合わせ、酢と塩で味付けた木の芽みぞれ酢を添えて。角切り大根の食感も楽しい。
脆皮鶏(ツイピージー)

熱い油を回しかけて皮目をパリパリに仕上げたひと品。普通はレモンや香草が付け合わせだが、「の弥七」では日本人の味覚に合わせ、酢と塩で味付けた木の芽みぞれ酢を添えて。角切り大根の食感も楽しい。

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