牛肉とワインを知り尽くしたソムリエによる最新のペアリング


決めては脂肪の質と味つけ

上質な牛肉が相性のよいワインと出合えば、食材としての肉はその液体と一体になり、マリアージュのいう名の芸術作品となる。
「肉料理にフルボディの赤ワイン」という定説は忘れ、牛肉とワインを知り尽くすソムリエに最新のペアリングを教示してもらおう。

渋谷ワイナリー東京

赤身肉のビステッカを軽快なワインで楽しむ

都市型ワイナリーに併設したレストランでは、ソムリエの宮田貴子さんが自社醸造ワインのほか自然派を中心にセレクト。造りたてのフレッシュな自社醸造ワインに合わせ、肉質がソフトかつ低脂肪で、さっぱりとした味わいを楽しめるNZ 産牧草牛をオンメニュー。

Pairing 1
NZ産牧草牛フィレ× NZ産のフレッシュなピノ・ノワール

赤身肉の代表格、フィレ。運動に使わない筋肉なので肉質がとびきり柔らかくて繊細。加熱のしすぎは禁物のナイーブな部位を、じっくりと時間をかけて火入れしているからこその美しいロゼ色の身に垂涎。このビステッカに、同じくNZ 産のピノ・ノワールをペアリング。肉質を生かし、しっとりと仕上げたフィレ肉と、柔らかく溶け込んだ微細なタンニンのワインが心地よく寄り添い、優しくジューシーな果実味が肉のうま味を引き立ててくれる。

2020 Pinot Noir P 003 2020 / Shibuya Winery
ピノ・ノワール P 003 2020 / 渋谷ワイナリー

Pairing 2
NZ産牧草牛サーロイン × 酸のある大樽熟成のセミヨン

芳しい香りと味わい、なめらかな食感が別格のサーロイン。肉の王者に、大樽で熟成させたオーストラリア・ビクトリア州産セミヨン主体の白を合わせてみよう。セミヨンの柔らかさと厚みが弾力のある肉質とリッチな味わいに同調。さらに冷涼な産地ならではの鋭角な酸が、上品に脂肪の入ったうま味の強いサーロインを受け止め、ユニークなマリアージュを見せる。ビオディナミ栽培のブドウは
エネルギーにあふれ、パワフルなビステッカとの相性も抜群だ。

2015 Hochkirch The Blanc / Hochkirch Wines
ホッフキルシュ・ザ・ブラン 2015 / ホッフキルシュ

ソムリエ
宮田 貴子さん

渋谷ワイナリー東京
東京都渋谷区神宮前6-20-10
MIYASHITA PARK North 3F
TEL 03-6712-5778
※営業時間は店舗にお問い合わせください
無休
https://www.shibuya.wine

焼肉たまき家

黒毛和牛雌を部位別にパーフェクトマリアージュ

希少な黒毛和牛の雌牛をリーズナブルに提供する焼肉の名店。脂の溶ける温度が低い雌牛は豊かな風味ととろけるような食感を肉汁とともに楽しめる。ガストロノミーを知り尽くす小野幸男さんの提案は、銘醸ワインを用いつつも新たな驚きに満ちており、今すぐ飲みたい衝動にかられるほど。部位の特徴と味付けを鑑みた至福のペアリングを紹介。

Pairing 3
サンカク × 端正なブルゴーニュ白

目を見張るほど美しい霜降りは最高部位のカルビ(肩バラ)である証。微塵もくどさを感じさせないのは上質な雌牛ならでは。この特上カルビを塩わさびでいただくなら、上品でしっかりとミネラル感のあるシャルドネを合わせたい。端正な酸とくっきりとした輪郭をもつピュリニー・モンラッシェの抑制の効いた果実味は、舌の上でとろけるような食感とうま味にバランスよくマッチし、ワインのミネラルが鮮烈な風味の塩味と相まって、肉の脂を甘美に羽化してくれる。

2017 Puligny Montrachet 1er Cru Les Folaieres / Domaine Chanson
ピュリニー・モンラッシェ プルミエ・クリュ レ・フォラティエール 2017 / ドメーヌ・シャンソン

Pairing 4
イチボ × 雅びな味わいのブルゴーニュ赤

臀部の骨周辺のイチボはサシがほどよく入った赤身肉。これにおろしポン酢を少量のせて、クラシックなスタイルのピノ・ノワールをペアリング。リッチでスケールの大きなヴォーヌ・ロマネの1 級畑レ・スショの芳醇な風味が、ほどよく脂肪がのったきめ細かく柔らかな肉のおいしさを底上げ。熟成香が優雅にたなびき、ポン酢の酸味とも調和する美しいマリアージュ。品のよいアーシーな味わいは赤身肉のワイルドなニュアンスを上品な質感へ一変させる。

2013 Vosne Romanee 1er Cru Les Suchots / Domaine Confuron Cotetidot
ヴォーヌ・ロマネ プルミエ・クリュ レ・スショ 2013 / ドメーヌ・コンフュロン・コトティド

Pairing 5
ラムシン × 甘苦く芳醇なアマローネ

ラムシンはサーロインから続くモモ系の赤身で、肉のきめが細かく、火入れしても柔らかいのが特徴。レアでもいいが、しっかり焼きたいタレ派なら、イタリア・ヴェネトの至宝アマローネを提案。甘辛いタレと肉が一体となって焼けてゆく香りは、煮詰めたベリーのように濃厚なアロマに重なる。メイラード反応による香ばしさと、ブドウの凝縮感たっぷりのほろ苦い芳醇なワインは、お互いのために用意されたかのようなゴールデンカップルといえるだろう。

2009 Amarone della Valpolicella Classico / Bertani
アマローネ・デッラ・ヴァルポリチエッラ・クラシコ 2009 / ベルターニ

シェフ ソムリエ
小野 幸男さん

焼肉たまき家
東京都千代田区霞ケ関3丁目2-6
東京倶楽部ビルディング1F
TEL 03-6550-8299
※営業時間は店舗にお問い合わせください
日休
http://tamakiya.tokyo

text 谷 宏美 photo 岡積千可

本記事は雑誌料理王国315号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は315号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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