GEM by moto /千葉麻里絵さんが語る日本酒動静

コロナ禍という今までにない状況の中で、2020年は日本酒業界にとっても転機となった。恵比寿「GEM by moto」の千葉麻里絵さんは、お店に立てない日もあったこの一年、何を考えていたのか。いま変化を迫られる日本酒業界の2021年の動向を聞いた。

右から、「今西酒造 菩提酛2004年醸造甕熟成」「とおの どぶろく・水もと二年熟成」「仙禽 オーガニック・ナチュール 2020」。今西酒造の甕熟成は58本限定の出荷で千葉さんがデザインを監修した。

日本酒動静:日本酒の「アッサンブラージュ」について

――この一年、日本酒業界で目立った動きは何かありますか?「アッサンブラージュ」はキーワードかと思っていますが……

ドン ペリニヨンのリシャール・ジェフロア氏が参加するIWA 5で用いられる「アッサンブラージュ」というブレンドの考え方は、確かに注目されていますよね。真鶴で知られる田中酒造も、ソムリエがマスターブレンダーとなって造った「TANAKA 1789」をリリースしています。共通するのは伝統的に日本酒造りの中で行われてきたブレンド(調合)とは、まったく異なる感覚で組み立てられた酒だということです。どちらも試飲していますが、正直に言うとまだどう捉えてよいかわかっていません。

私にとって日本酒は繊細な水彩画、一方でワインは油絵です。どちらが良い悪いという話ではなく、異なる種類の芸術だということです。日本酒は造りたてだと水々しく、熟成させることで時間とともに味わいが濃くなっていく傾向にあります。ブレンドした場合も、それぞれ元の酒の味わいが完全には混ざり切らず、グラデーションのような重なりが感じられます。ワインはヌーボーのときから味わいにある程度ぎゅっとした濃さがあって完成されています。

アッサンブラージュで造られた日本酒というのは、いわば両者の特性が合わさっていて、水彩画の道具を使いながら油絵を目指して描かれた絵に例えられると思います。人は見たことがないものって受け入れ難さを覚えるものですが、日本酒のアッサンブラージュについて、いまはそういう感覚ですね。

美意識の違いもあると思います。日本は素材信仰主義で、シンプルこそ素晴らしいとされることが多いです。料理でも引いていくのは得意ですが、逆にないものを足していくことは苦手。ソースで掛け算していくフレンチとは別の理想を描いてきたのだと思います。

今西酒造 菩提酛2004年醸造甕熟成
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GEMのぶり大根

奈良の今西酒造と千葉さんの共同企画で、菩提酛(ぼだいもと)造りの酒を甕の中で16年熟成した。シェリー酒のような甘みとコクに合わせるのは、ふんだんにスパイスを使ったGEM by moto流のぶり大根。ナツメグ、コリアンダー、花椒にポルチーニが入った大根おろしの上にブリをのせ、素揚げした二十日大根の食感も楽しい。

次ページ:日本酒における「ブレンド」の動向



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