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全部分かりますか?海苔の産地と種類


 海苔は、701年の大宝律令には「租税の対象」と記され、平安時代の貴族たちは海苔の佃煮が大好物だったといわれるほど、日本人には馴染みの深い食材である。現在の海苔養殖の基礎は、江戸時代後期の江戸・大森に始まるともいわれる。

「海苔が生育するには、いろいろな条件が揃わないと難しい。川が海に流れ込む栄養分豊富な浅瀬の静かな海であること。もちろん潮の干満も関係します。江戸時代の隅田川には、そんな自然条件が揃っていたということでしょう」と語るのは、全国漁業共同組合連合会・販売事業部のり推進室室長の湊裕光さんだ。

「浅草海苔」というブランドが確立されたのは、浅瀬の海だった大森が海苔養殖の発祥地となり、「浅草海苔」が江戸の名産品となっていったからだ。東京湾は、現在も主力漁場として、「本場」の格を保っている。

有明海の干満の差と技術でおいしい海苔をつくる

 日本では年間約85億枚の海苔が生産されている。乾海苔のサイズは縦21センチ、横19センチ。加工工場の機械化にともない統一された。

 現在、高い評価を受けているのは、佐賀、福岡両県の有明海漁場の晩秋に行われる「初摘み」。とくに佐賀県の海苔畑は有明海の最も奥まった場所にあり、栄養豊かな河川と海流がぶつかる汽水域にある。

 6メートルの干満の差があることを利用して、網の千出を頻繁に行う支柱式養殖を行う。「千出」とは、タネをつけたノリ網を一定の時間、空気中(海の上)に出して乾燥させることをいう。こうして、海苔の旨味成分であるグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸、アデニル酸を増加させる。4月の糸状体の培養から、早くて7カ月、11月に初摘みを迎える。秋芽と呼ばれるこの柔らかなノリが尊重されるのだ。

 また、最近では生海苔も注目されている。とくにシェフたちは、美しい緑色と芳醇な香りを活かし、酢の物などのほかにも、イタリアンやフレンチの食材として活用する。

 とはいえ、生海苔はなかなか市場には出回らない。浜名湖で採れるヒトエグサも、市場に出回る多くは、天日乾燥させた「青ノリ」となる。

 海外でも日本の海苔は、衛生で安全、ヘルシーと評判だ。アメリカ、台湾、シンガポール、フランスなどへの輸入量も伸びている。

「海外では健康や安全を志向する裕福層を中心に関心を呼んでいます。日本の伝統食材・海苔は、お米と一緒に食べるものという従来の枠を超えて、健康的なスナックとして、また料理に使う食材として、海外でも日本でも可能性を秘めている」と、湊さんは見ている。

おいしい日本の海苔を知って料理に活かす
海苔のおもな産地

【宮城】松島湾 外洋部
ブランド力を活かして復興がはじまっている

本来は東北一の産地だが、東日本大震災により甚大な被害を受けた。「松島湾海苔」のブランド力を生かして生産が進んでいる。

【福島】松川浦
青ノリ(ヒトエグサ)の産地・松川浦

福島県唯一の潟である松川浦は、風光明媚な観光地で波も穏やかなため、青ノリ(ヒトエグサ)の産地として全国的に知られる。

【千葉/神奈川】東京湾
江戸前ブランドの後継ぎ千葉の海苔

東京湾の主力漁場は千葉県。香りの良さは全国一といわれ、他県産を「バチ」 と呼んで扱わない問屋があるほど、流通筋の信頼は強い。

【静岡】浜名湖
鮮やかな緑色の浜名湖の「青板」

浜名湖で養殖されるのは緑藻類のヒトエグサ。地元では「青板」と呼ばれる。滑らかな舌触り、鮮やかな緑色、磯の香りが特徴。

【静岡】浜名湖
鮮やかな緑色の浜名湖の「青板」

浜名湖で養殖されるのは緑藻類のヒトエグサ。地元では「青板」と呼ばれる。滑らかな舌触り、鮮やかな緑色、磯の香りが特徴。

【愛知】西三河、知多東三河
色・艶、香りよく黒の色も深い

西三河、知多、東三河は江戸時代からの歴史があり、全国でも有数のおいしい海苔の産地。とくに色の良さは知多といわれる。

【三重】桑名~鳥羽
約5億万枚(全国生産量の5%)を生産

江戸末期から明治初期にかけて、木曽川河口域の桑名から、伊勢湾口部の鳥羽までを良質の黒海苔の産地としての地位を確立した。

【三重】鳥羽以南
鳥羽以南は「糸青」の産地

鳥羽以南は、すべてアオノリ類の養殖を行っている。なかでも「糸青」は、ふあっとした風情と優しい口あたりが好まれている。

【兵庫】明石浦
明石浦の一番摘みの乾海苔が評判

約17億枚の生産力があり全国でもベスト3に入る。とくに豊かな漁業である明石浦の一番摘みの乾海苔の評価が高い。

【兵庫、岡山、広島、山口、香川】瀬戸内海
浮き流し漁場の大産地海苔質は硬め

沖での養殖を可能にした、タネ網を海面に浮遊させる浮き流し式養殖によって瀬戸内海は大産地になった。海苔質が硬めなのが特徴。

【徳島】吉野川と那賀川の河口域
スジアオノリの全国一の生産地

吉野川、那賀川の河口域で採れるスジアオノリは「糸青」と呼ばれ、ふわっとした絹糸のような風合いがある。高級食材として使われる。

【高知】四万十川
四万十川の川海苔

四万十川の河口付近で育てるアオサノリは、高知の名物の川海苔。色が薄く、さっぱりした味で乾燥アオサと佃煮が人気。

【大分】沿岸部
歴史ある老舗が高品質の商品を提供

大分の歴史は古く、国東半島を回り、南は大分市近郊から臼杵まで広範囲で行われていた。現在も老舗が高品質の海苔を提供している。

【福岡】有明海
初摘みは香りも口当たりも格別

初摘みの出品のときは、全国から名店や百貨店納入メーカーの仕入れが集まる国内有数の良産地。共販は福岡有明海漁場。

【鹿児島】出水市
日本の最南端の海苔養殖

県内各地で行われていたが、1980年代初頭から熊本県境に近い八代海に面した出水だけになった。無酸処理の海苔として有名。

【熊本】有明海
全国に先駆けて新技術を開発

熊本県水産試験場が、イギリスのドリュー女史が解明したノリのライフスタイルをもとに人工採苗を全国にさきがけて開発した。

【長崎】有明海
寿司向きとして高い評価を得た

有明海に面した島原市、有明町、国見町一体が古くから寿司向きとして評価が高かったが、諫早湾干拓により、その役割を終えた。

【佐賀】有明海
「佐賀海苔Ⓡ 有明海一番」は1万枚に3枚の貴重な品質

年間約21億枚を生産する日本一の生産地。独自の品質基準をクリアした「佐賀海苔 有明海一番」は、1万枚に3枚という貴重な品質だ。

日本一の生産量を誇る有明海の海苔漁場。網の千出を頻繁に行う支柱式養殖は、千満差が6mある有明海ならではの光景である。

海苔の種類

海藻は、黒ノリなどの「紅藻類」と、青ノリとして出回る「緑藻類」、コンブなどの「褐藻類」に大別される。ここでは食料とされる代表的な青ノリと黒ノリの形態や特徴など『ノリ図鑑』を紹介する。

紅藻類

【アオクサノリ】 Porphyra tenera

明治期の日本藻類の祖・岡村金太郎博士によって養殖されていた品種。良質の海苔の代名詞だったが病気に弱いため1965年ごろから養殖が困難に。

【スサビノリ】 Porphyra yezonensis

見た目はアサクサノリに似ているが、アサクサノリが病気に弱いことから、苦心の末に移植法が開発され、北海道の有珠湾から移植された。

【ナラワスサビノリ】 P.yezoensis form.narawaensis

1965年、ひときわ長く伸びるノリが千葉県袖ヶ浦町奈良輪で発見。スサビノリより生産量が増やせるため、全国の漁場に移植され現在は主流を占める。

緑藻類

【ヒトエグサ】 Monostroma nitidum

商品として使われる青ノリ。主に佃煮の原料になる。1層の細胞からなり、薄くて柔らかい。養殖は可能。産地の熊本では「青板」「青バラ」と呼ばれる。

【アナアオサ】 Ulva pertusa

アオサ属の主要種。大きさは20~30センチ。成長するにつれ、藻体に大小の穴がつくことからこの名が。三河湾ではバンドコと呼ぶ。粉末にして使う。

【ボタンアオサ】 Ulua conglobata

ボタンの花のように重なり合うことから、この名がついた。春から夏にかけ、太平洋側中・南部の岩場などに群生する。養殖はしていない。

【スジアオノリ】 Enteromorpha prolifera

「アオノリ属」は、香り、口どけがよく、乾燥、粉末にして香りづけなどに用いられる。徳島、四万十川では、「糸青」「すじ青」と呼び、珍重される。

【ウスバアオノリ】 Enteromorpha linza

ほかのアオノリ属は、1層の細胞層からなるが、これは緑辺部と茎部を除き2層からなる。幅広く伸び、高品質の青のりとなる。愛媛産が有名。

【ボウアオノリ】 Enteromorpha intestinalis

大きさは約10センチ。円柱状でほとんど枝分かれしない。養殖は行われず、ほとんどが磯の香りがいっぱいの天然もの。岡山産や徳島産が知られている。

【ヒラアオノリ】 Enteromorpha campressa

昔は採った藻をそのまま束ねて売った。その様子を和歌山では、女性の髪型「島田」にみたて、ヒラアオノリは「島田青」と言われ、今もこの名で通る。

写真提供:アサクサノリ、スサビノリ、ナラワスサビノリ、ヒトエグサ、アナアオサ、ボタンアオサ、ウスバアオノリ、ボウアオノリ、ヒラアオノリは千葉県立中央博物館分館海の博物館。スジアオノリは鶴岡英作氏。


本記事は雑誌料理王国第229号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第229号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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