「ジビエは猟師さんが苦労して捕った食材なので、とくにありがたみを感じます。スタッフにもそれが伝わるのがいい」と話す広瀬周悟さん。ジビエは害獣駆除による北海道産の鹿やイノシシ、キジ鳩が狩猟期間外も入荷するので、ほぼ通年提供する。本格的な猟期を迎えた11月からは少しでも東北復興の役に立てればと、宮城県石巻市の猟師から青首鴨や軽鴨を仕入れる。
そして今回は、一羽の軽鴨を血や内臓もペーストにして余すことなく使い尽くし、軽鴨のフォンで煮た、ポトフ仕立てのカブを合わせた。「軽鴨が持つ肉質の旨味を、ローストした時に逃さず提供したい」と考えた広瀬さんは、モモ肉だけでなく胸肉もあらかじめオリーブオイルに浸けて低温でコンフィにする調理法を選んだ。こうすることで、鴨をフライパンで焼いてカットした時に肉汁を逃さず、肉の旨味が丸ごと味わえる料理となった。
ローストした軽鴨のコンフィは、ストレートに肉の旨さを伝える味。軽鴨のフォンで煮たカブをだしごと敷き、レーズンの甘味を感じる内臓ペーストを添えた。
軽鴨は胸肉とモモ肉に分け、冷蔵庫内に1日おいて乾燥させる。その後、塩、コショウ、スパイス、ハーブ、ミカンの皮と一緒にオリーブオイルに浸け、約50℃の場所で2日間おく。ロースト時に肉汁を逃がさない効果がある。
鴨科の軽鴨は体の前部は白っぽく、後部は黒っぽい。雄雌ともに同系色の羽を持っており、くちばしの先だけ黄色いのが特徴。通年、全国各地の河川や池、湖などでつがいや親子連れで生活するのが見られる。渡り鳥ではないが、冬になると東北北部以北の寒冷地の軽鴨は、南部の温暖地に移動。餌は植物の種子を好んで食べる。真鴨ほどポピュラーなジビエ食材ではないが、肉質に大きな差は見られない。
● 青首鴨、軽鴨(宮城県産)
● エゾ鹿、キジ鳩(北海道産)
● イノシシ(静岡県産、栃木県産)
● ウリボウ(栃木県産)
広瀬 周悟さん
1981年茨城県生まれ。石神井公園「クラッティーニ」(閉店)を経て、丸の内「グットドール・クラッティーニ」で約4年半修業。2008年現店のシェフに就く。
Kagurazaka SHUGO
神楽坂しゅうご
東京都新宿区筑土八幡町5-12 相川ビル1F
☎03-5228-1801
●18:00~翌2:30LO
●日、第1月曜休
●アラカルト650円~
本記事は雑誌料理王国210号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は210号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。