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自宅でチャレンジ!南フランスの人気パティシエが伝授する秘伝のビスキュイ4選


地元産の果物やナッツを生かした滋味あふれる素朴な菓子への回帰

ラ・ファム・ドゥ・ブーランジェ ポール・ブレさん

 コート・ダジュールの港町バンドルから内陸へと続くブドウ畑。そのなかを15分ほど走ると、丘の上に鳥の巣のようにこんもりと佇む村が青空を背に浮かび上がる。城塞都市として築かれたル・カストレは、ヴァカンス客や近隣の住人を惹き付けてやまない、中世の面影を残す美しい村である。

 この村の一角に、ポールさんのパティスリーはある。過去には、阪急うめだ本店で開催された「フランス祭」でビスキュイの量り売りをし、7日間で450キロの小麦粉を使い切ったほど人気を博した。

毎朝3時から30種のビスキュイを焼く


 ポールさんは妻ベアトリスさんと1987年に、ル・カストレ村に「ラ・ファム・デュ・ブーランジェ」を創業した。以来毎日、何百枚ものビスキュイを量り売りしてきた。「毎朝3時から、30種のビスキュイを焼くんです」と、ポールさんは当たり前のように話すが、現代ではこんなスタイルの店はフランスでも稀だ。多くは、工場で大量生産されている。もちろん味の差は歴然としており、その証に、店のファンはわざわざ近隣から車を走らせて、この店にビスキュイを買いにくる。

 今回、阪急うめだ本店で作ったレシピのうちの4種を公開していただいた。どれも南フランスに伝わる伝統的なビスキュイだが、従来のナヴェットよりバターの分量を少し増やして硬すぎる点を改良するなど、随所に工夫が凝らされている。なかでも、何よりポールさんがこだわったのは、南仏の素材を活かすこと。「マカロン・プロヴァンサルには、地元のハチミツとアーモンド。ナヴェットにはオレンジの花水。カニストレリにはレモンと白ワイン。そしてタルトレットにはドライフルーツやナッツ類をふんだんに」

 とはいえ、ここ数年で地元産の松の実や干しイチジクが急激に値上がりした。「気軽にふんだんにというわけにいかなくなってしまったよ」。

 アーモンド、干しブドウ、干しイチジク、ヘーゼルナッツを使うタルトレットのトッピング「マンディアン」は、本来は「物乞い」を意味する言葉で、それほど昔は安くて身近な食材だったのだが、いまでは高級食材になってしまったのだ。

日本にはない「カニストレリ」の食感


 夏は気温が高く、石灰岩の山ばかりの南フランス。牧草が少なく牛が飼えないため、料理にも菓子にも、バターはあまり使えない。ビスキュイも同様で、カニストレリなどには卵もバターも使用しない。北フランスの濃厚なバターサブレとは異なる、カリっと軽い食感が新鮮だ。逆にマカロンは、小麦粉の代わりに粉末アーモンドを用い、ハチミツを加えるため、中がしっとり柔らかい。

 マカロンは、ルネサンス期の王アンリ2世に嫁いだフィレンツェのカトリーヌ・ド・メディシスがフランスに伝えたと言われ、南仏には当初の素朴な姿が残り、パリでは19世紀に、クリームやコンフィチュールを挟んだ、洗練されたマカロン・パリジャンが生まれたとされる。

 世界中の食材を組み合わせて最新のスイーツを生み出そうとする流れと、地元で用いられてきた素材を見直し、信頼できる生産者から入手した食材で手作りするテロワールの焼き菓子。ポールさんのビスキュイが人気を博しているのは、現代のふたつの潮流を如実に表している。滋味あふれる美味しさに舌鼓をうつのは、懐かしさだけで買いに来る熟年層だけでは決してないのだから。

【レシピ】カニストレリ Canistrelli au citron

もともとコルシカ島の伝統的な焼き菓子。バターも卵も使わずして、この独特の軽いサクサク感。卵の代わりに入れるのは、白ワイン!

材料(約130個分)

フランス産小麦粉…1kg/白ワイン …250ml/ピーナツオイル…250ml/グラニュー糖…300g/ベーキングパウダー…25g/レモンの皮…2個分

作り方

(1) 白ワイン、ピーナツオイル、すりおろしたレモンの皮、小麦粉、グラニュー糖、ベーキングパウダーを混ぜ合わせる。目安はミキサーで1分弱。

南仏の食材 白ワイン&レモン
白ワインはどんな種類でも可。レモン2個分は、皮をすりおろしておく。
ミキサーにすべての材料を入れ、ゆっくり混ぜ合わせる。いちばん遅い速度で。

(2) 正方形にのばす。
(3)表面にはけで水を塗る。

撹拌しすぎると、サクサク感がなくなってしまうので、耳たぶくらいの硬さになったら終了。
正方形にのばしていく。手早く、均等の厚さに。約5~6㎜厚が目安。

(4)表面にグラニュー糖をたっぷり(レシピ外)ふりかけ、のばす。
(5)端を切り落とし、3.5cm角にカットする。
(6)170℃のオーブンで、約25分焼く。

表面につける水はほんの少し。その後、グラニュー糖を表面にのばしていく。
端を切りそろえてカット。生地を仕込んだら、すぐに焼かないと、水分が溜まってしまう。

【レシピ】ナヴェット Navette

港町マルセイユで生まれたビスキュイ。ナヴェットとは「小舟」の意味。 18世紀にサン・ヴィクトール教会で作られたのが始まりといわれる。

材料(約240個分)

フランス産小麦粉…1.2kg/グラニュー糖…600g/バター…300g/ベーキングパウダー…30g/オレンジの花水…300cc

作り方

(1)前日に、オレンジの花水と砂糖を合わせて火にかけ、シロップを作っておく。
(2)小麦粉、バター、ベーキングパウダーをサブラージュする。
(3)冷やしておいたオレンジの花水で作ったシロップを加え、ゆっくり混ぜ合わせる。
(4)一晩冷蔵庫でねかせる。
(5)翌日、成形し、170℃のオーブンで約

手で小さく丸める。ひとつ10gくらいを目安に。
手のひらで細長くのばす。両側を細く舟型になるように。
割れ目を入れる。真ん中2cmほど、下まで切り込みが入るように深く。割れ目を広げて少し抑え、ボートの舟形にする。

南仏の食材
オレンジの花水

【レシピ】マカロン・プロヴァンサル Macaron Provençal

小麦粉を使わず、アーモンドの粉で作るマカロンは、中が柔らかく、ハチミツの風味が口の中で広がる。

材料(約135個分)

粉末アーモンド…1kg/ブラウンシュガー…1kg/卵白…320g/粉糖…400g/ハチミツ…50g/アーモンドのエッセンス…2滴

作り方

(1)粉末アーモンド、ブラウンシュガー、アーモンドのエッセンス、卵の白身、ハチミツを混ぜ合わせ、軟らかい生地を作る。
(2)粉糖を加え、さらにこねる。
(3)冷蔵庫で1週間ねかせる。
(4)小さく丸め、表面に水をつけ、粉糖をふりかける(レシピ外)。
(5)170℃のオーブンで15分焼く。

ひとつ20~25g見当で、生地を丸める。直径約3cm。
はけで表面に水をつける。たくさんつけすぎないよう注意。
上から均等に粉糖をかける。

南仏の食材
ハチミツ

【レシピ】タルトレット・カラメリゼ Tartelette Caramélisée aux fruits secs

サブレ生地の小さなタルトの上に、カラメリゼした木の実や、ドライフルーツのマンディアンをトッピング。様々なバリエーションが可能。

サブレ生地 材料(約700個分)

フランス産小麦粉…1kg/グラニュー糖 …500g/バター…500g/ベーキングパウダー…10g/卵…225g

作り方

(1)小麦粉、グラニュー糖、バター、ベーキングパウダーを混ぜ合わせる。
(2)2 生地にバターが混ざって粉状になったら卵を入れ、こねる。
(3)約1.2㎜の厚みに伸ばす。
(4)型に入れ、敷きこむ。
(5)165℃のオーブンで12分焼く。

トッピング1
アーモンドのカラメル Caramel d’amande

グルコース70g、ハチミツ100gを合わせて沸騰させる(タルトレット25個分の材料/以下同)
火から下ろして生クリーム100gを入れる。
スライスしたアーモンド150g、皮付きアーモンド250gを入れ、ざっくり混ぜて出来上がり。あとはタルトにのせるだけ。クルミやヘーゼルナッツ、松の実なども同様に。

トッピング2
マンディアンMendiant

水と砂糖同量でシロップを作り、好みのドライフルーツ、クルミ、ヘーゼルナッツなどを入れ(干しブドウは事前に水に15分つけておく)、ハチミツ、シナモンを適量加え、ひと晩おく。
Paul Bray
南仏、ル・カストレ村のパティスリー「ラ・ファム・ドゥ・ブーランジェ」のオーナー・パティシエ。村にパン屋がないため、村人のためにバゲットも焼いている。これがまた、じつに美味。

町田陽子=取材、文、写真 井田純代=撮影 

本記事は雑誌料理王国第227号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第227号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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