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日本のジビエを食べつくす!おいしいポイント便利帳


ジビエは入荷の時期や状態、産地によって味わいが大きく変わるもの。ジビエを最良の状態で提供するための豆知識を集めてみました。

鳥類

日本には狩猟可能な鳥類、つまり合法的に食べられる鳥類が約30種類、生息している。このうち80%が渡り鳥で、大半が冬に飛来する冬鳥だ。これらの鳥のなかで、おもに食用にされるのが、キジとカモ類である。味わいを大別すると、キジは里山に生息し、あまり飛ばないため肉質がやわらかく水分に富む。また、とりわけ渡り鳥に属するカモは、運動量が多いため肉質が締まっている。飛来してすぐは身痩せするので、7~10日後に仕留めた鳥がよい。

キジ

亜種のコウライキジを除くキジは、北海道と沖縄を除いて全国的に分布する。コウライキジは中国、朝鮮半島の移入種。キジは里山に住む雑食性で畑の野菜や穀類、ミミズなどを食べている。エサが豊富な晩秋のメスキジがよい。運動量が渡り鳥と比べて少ないため、肉質がやわらかく水分に富む。

カモ

日本で捕獲可能なカモのなかで食べて旨いのは、おもにマガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモなど。首が緑色のマガモのオスは「コルヴェール」と呼ばれる最高級品。日本では脚の黒いコガモは「タカブ」と呼ばれ、おいしくないと思われているが、フランスでは美味なカモ「サルセル」として珍重される。

イノシシ

鹿と同じウシ目であるためか、肉質は赤身で脂も非常に美味。北海道を除いて全国的に分布し、東京や静岡などでは、豚との交配によって生まれ、野生化したイノシシが捕獲されることも多い。山間ではなく平地など運動量の少ない土地の個体の肉質はやわらかい。

クマ

北海道に生息するヒグマは陸上哺乳類では日本最大で雑食。草食のツキノワグマは本州に分布する。たとえばサケを捕食するヒグマのように、エサによっては肉質の臭みが強くなることがある。里に降りずに山奥で木の実などを食しているクマは美味だが、とても稀だ。

鹿

俗称として北海道に生息する鹿をエゾ鹿、本州の鹿を本州鹿と呼び分けているが、どちらもウシ目鹿科で同じ種類のニホン鹿。しかし、実際に食べてみると両者の肉質や味わいは明らかに異なっており、メニューを組み立てる際には、別の鹿と考えたほうがよい。一般にエゾ鹿は体が大きく脂がのっている。ニホン鹿は、肉質の色合いがより赤黒く非常にあっさりとしているため、熟成して使うなど、味わいを出す工夫が必要となる。

エゾ鹿

北海道に生息するニホン鹿。11月初頭に受胎し、冬ごもりに備えてエサをひたすら食べている11月半ばの牝鹿が旨い。オスもこの頃になるとフェロモン臭が抜けてくるが、オス肉は上手に熟成させると大変に美味。

本州鹿

沖縄を除く本州以南に生息するニホン鹿でエゾ鹿よりも小ぶり。長野県など夏鹿の狩猟が許可されているエリアもある。この時期のオスは出産の必要がなく、畑の農作物などを豊富に食べていて肉質がよく美味。

国産ジビエの魅力は、なんといっても鮮度と状態のよさにある。「ジビエは香りの強い肉」というイメージが強いが、質と鮮度のよい国産のジビエは臭みや脂っこさもなく、肉そのものに旨味を味わうことができる。こうしたジビエの質を決めるのは、動物の仕留め方と処理方法、処理のスピードだ。

動物は一発で仕留めないとしばらく走って逃げるので体が熱くなり、乳酸が前身にまわってしまう。どのジビエも上手に仕留めたものは、血が肉にまわっていないのですぐにわかる。また、仕留めた動物はすぐに処理をして冷まさないと、雑菌が繁殖したり、味が落ちたりする原因となる。鹿やイノシシなどの四ツ脚の動物の場合は仕留めてすぐに排血し、冷やしてから内蔵を抜いたものがよい。腕のよい猟師のなかには、皮を剥いでから内臓に一切傷を付けずに手早く正肉のみを切り取る人もいる。なお、鳥類は内臓を抜かずに熟成するが、その場合も腸管は必ず取り除かないと臭くなる。砂肝などを傷付けずに、腸管のみを抜き取っている仕入先は腕がよい。

また、ジビエは家畜と異なり自然のなかで育つため、それぞれの性質や自然環境によって肉質や味が異なる。この点もジビエを扱うおもしろさのひとつだ。たとえば、運動量が少ない動物は、一般的に身質がやわらかくなる。平地に住むキジの身は渡り鳥のカモよりもやわらかく、水分が多い。あるいは、同じイノシシでも、山に住む丹沢産は起伏の少ない平地に生息する伊豆産と比べて筋肉質になる。

同じ種でもエサや環境により身質や味わいが異なる

何をエサにしていたか、その動物の捕れた場所も非常に重要だ。たとえばカモの最高級品はマガモのオス「青首鴨(コルヴェール)」だが、なかでも新潟県の米どころで銘柄米を食べているカモが、とくに美味とされる。反対に穀類が周辺に少なく、川で魚を捕食していたカモの身は非常に魚臭くなってしまう。鹿やイノシシも同様にエサによって肉の味が変わる。北海道では牧草地の草を食べている鹿は「草地鹿」と猟師たちに呼ばれ、山奥で山ブドウなどを食べている鹿と区別される。

いつ捕れたかという点にも注意を払いたい。狩猟解禁時期間中でも、生殖期間、受胎期間などによって味が異なる。エゾ鹿ならば、10月末から11月初頭までは生殖期であり、フェロモンの匂いが非常に強い。またイノシシは1月以降生殖期間となり、大変にフェロモン臭くなってしまう。国産のジビエを仕入れる場合には、これらの点に留意すると、質の高いジビエを入手できるだろう。

伊藤由佳子・文/構成

本記事は雑誌料理王国210号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は210号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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