自由が丘にある「T’sレストラン」は、昼も夜も客足が絶えない人気店だ。客層は老若男女、家族連れ、おひとり様と幅広い。動物性の食材を一切使わずに調理し、おいしさと健康の両立を追求している。なぜこのコンセプトが生まれ、なぜ人気を集めているのだろうか。
オーナーは下川祠左都(まさこ)さん。下川さんは8年前、知人ががんを患って、野菜中心の食生活にシフトしたことを知った。自分と家族の食事も変えようと、一念発起。まずは、夕食を野菜メインに変えてみた。すると「身体が軽くなったのを徐々に実感したんです」。下川さんはその後、完全なベジタリアンになったという。
食事に「制限」ができると、外食する店が限られてくる。しかも頼めるものが少ない。「ベジタリアン専門店で、本当においしいと思える料理を出す店がほとんどなかったんです」。そこで、その不満をクリアした店を開くことを考えるようになったのだ。
店を経営し始めてからは、動物性食材不使用を前提に、とにかく「おいしさ」にこだわった。料理にコクが出るよう、野菜の旨味を出す工夫を重ね、乳製品に代えて使う豆乳の選定も、クセのないまろやかな味わいを出そうと試行錯誤した。
「食事制限やアレルギーの方のための特別な店にはしたくないんです。普段お肉を食べている人も違和感なくおいしいと感じる料理を目指しています。誰もが同じひと皿を楽しめて健康になれる、それが理想です」
ある常連客は、お子さんのひとりに卵アレルギーがある。普段は、ひとりだけ違う料理を食べることが多いが、ここに来ればなんの縛りもなく、アレルギーのある子もない子も、食事からデザートまで楽しめる。「先日は、つくば市の小学生約2万人分の給食を提供しました。いつもは、アレルギーのある生徒さんはお弁当持参なのですが、その日はほとんどのお子さんが同じメニューを食べることができたんです。ご家族にも喜ばれました」。最近は、宗教上の理由から肉類を食べない人や、様々な食の嗜好をもつ外国人のお客さまも増えているという。
「T’sレストラン」は、オープンから7年目となる現在、動物性食材不使用の担々麺をメインとする「T’sたんたん」を東京駅と仙台駅に展開。アレルギーや食事制限で悩む人が増え、食の嗜好が多様化する今、食卓についたメンバー全員が、安心して心から料理を楽しめるレストランのニーズが、一層高まってきている。
太陽と大地の食卓 T’sレストラン
T’s restaurant
東京都目黒区自由が丘2-9-6 Luz自由が丘 B1F
03-3717-0831
● 11:00~22:00(21:00LO)
● 大晦日・元日のみ休
● テーブル26席、半個室12席http://ts-restaurant.jp
料理王国=取材、文 富貴塚悠太=撮影
本記事は雑誌料理王国第257号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第257号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。