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女性に大人気!ベジタリアンカレーキッチンカー「ココモカレーフードトラック」


欧米に比べるとベジタリアンへの認知がまだまだ低い日本で、オーガニックベジタリアン料理をコースで提供するなど、日本のベジタリアン料理界におけるトップシェフとして名を馳せる大平哲雄さん。
企業や飲食店とのコラボや商品開発なども精力的に行う傍らで、昨年よりキッチンカー事業をスタートさせた。なぜ今キッチンカーだったのか、その理由を尋ねた。

世界と大きな格差のある日本のベジタリアン市場

「日本のベジタリアン市場は約3.8%程度です。ビーガン人口の約1%を加えても全体の5%を満たない。この数値は戦後から変わらず、一向に上がっていない。その理由は、日本のベジタリアン料理がおいしくないからだと思うんです」

 世界各国で研鑽を積んだ大平哲雄さんは、各地を巡るなかでほとんどの土地でベジタリアン料理の専門店が目に留まったという。ヨーロッパではベジタリアン対応できないと店の品格を疑われ、大衆店でさえ必ずベジタリアンメニューが用意されていた。全人口の約45%がベジタリアンというインドでは、料理のバリエーションの豊かさとおいしさに舌を巻いた。

「ベジタリアン料理をやろうとは思っていなかったのですが、帰国したら日本での認知度の低さに驚きました」。ベジタリアン料理のおいしさをもっと知ってもらいたい。そんな思いで東高円寺にオープンしたのが、オーガニックベジタリアンレストラン「ロータス&フラワーズワン」だ。オーナーシェフとして自ら店に立ち、当時専門店としても珍しかったベジタリアン料理をコースで提供すると、そのおいしさが評判を呼び、たちまち繁盛店に。客の割をノンベジタリアンが占めるという期待以上の成果も得られた。

「味という観点で足を運んでいただけるようになり、そういう意味では自分がレストランでやりたかったところは成し遂げられました」
 その一方で、ベジタリアン料理に対する先入観へのジレンマもつねに感じていたと話す。「これだけ日本でヘルシー志向の風潮がありながら、味気なくて満足感も得られないというイメージが拭えない。おいしかったものが、実はベジタリアン料理だったというところを目指したい」。その第一歩に選んだのが、キッチンカーというビジネスモデルだ。

キッチンカー事業でタッグを組む戸田泰雄さん(左)は、映像業界出身。震災をきっかけに世の中に貢献できる仕事をと、異業種から参入した。

キッチンカー事業の始動が別角度からの反響も呼ぶ

「僕の大きな目標は、日本の3.8%というベジタリアンの需要を少しでも増やすこと。本来なら8%くらいまで広げられる市場だと確信しています。それを実現するためには、まずは普段肉や魚を食べている人においしいと思ってもらうこと。これまでどおりの店の運営だけではできることが限られる、と少し窮屈さを感じていた頃、友人であり、兵庫で淡路島カレーを手がける株式会社ビープラウド代表の大山淳さんから、以前から興味のあったキッチンカーが事業としておもしろいと偶然勧められたんです。ヘルシー層以外に食べてもらうには、キッチンカーはベストだと考えました」

 さらに同時期、岡山でマッシュルームを手がける「ミツクラファーム」から声がかかり、アンバサダーとしてメニュー開発に携わることに。そこで奇しくも、キッチンカーで提供するカレーのベースが誕生する。

 大平さんがキッチンカーの構築にあたりメニュー作りの軸にした条件が、おいしさ・フードロス・装備のポテンシャルの点だ。ミニマム装備のキッチンで、納得できるクオリティのおいしさをワンオペレーションで提供できるメニューをと考えた時に、もっとも廃棄量が少ないのがカレーだった。「事業としても環境に対しても、サスティナブルを目指しました」。種類が増えるほどロスが出るため、カレーの種類はそのままに付け合わせを季節ごとに変えるなど、飽きをこさせない工夫も加えた。

 カレーの誕生をきっかけに外食産業や食品メーカーから次々とお呼びがかかり、コラボや開発の依頼が増えた。昨年は、森永製菓のスタートアップ企業である「SEETHESUN」によるカレーを含むレトルトフード3種を監修し、ナチュラルローソンで全国販売に至ったほか、大手レストランチェーン店でプロデュースしたカレーも、ひと夏で2万食を完売した。「僕の料理の特徴でもある“強い旨味”の技術が企業から求められて、大きな反響と結果もついてきた。嬉しかったですね」。

ココモ全部のせカレー
ココモ全部のせカレー
マッシュルームをベースに香味野菜やスパイスを加え、長時間ゆっくりと調理することで旨味を最大限に引き出したキーマカレー。マイルドな辛さのカレーには、有機コリアンダーチャツネで味わいを添え、インドで定番の前菜や豆系などのトッピングを季節ごとに変える。出店場所によって、ノープラスチックやノーミートといった容器や素材の制限があることもある。

想像以上の高い稼働力と想定外にものを言う接客力

 キッチンカーもさぞかし円滑なスタートを切ったのだろうと伺うと「想像をはるかに超えて価格の影響が大きく、最初は苦戦を強いられました。おいしい料理を出せば売れると思っていた僕は甘かった」と苦笑する。

 オーガニックを前面に謳えば一定層には届くが、あくまでターゲットはヘルシー層以外。おいしさへのこだわりが伝わる場所とのマッチングが重要だとわかった現在は、価格はそのままに各地で順調にファンを増やすが、新たな場所では今もプレゼンテーションが課題だと話す。

 また、コンパクトな稼働で高い利益が出せることも想像以上だったが、実店舗以上に接客力が売上へ直結することも驚きだったそうだ。

「近い将来、働く人口が減るという日本の社会問題は避けられない。未来の問題に対して大きな役割が担えることも、キッチンカーを始めた理由のひとつでした。資金のない若者が少ないリスクで独立できて、しっかりサポートできるスキームを作っておきたかった。今後、数十台に増えた場合もセントラルキッチンには1万食分程度を毎日用意できるスペックを備えています」。東京のあちらこちらで、グリーンのキッチンカーを見かける日も近そうだ。

店主とのコミュニケーションを目当てに来店するという人も珍しくなく、接客が売上を最も左右する。個性派な店主のファンとなる場合も多い。
大平哲雄さん Tetsuo Ohira
株式会社エルフロ代表。世界20カ国以上で料理の研鑽を積んだのち、都内の自然派レストラン店長を経て、2009年にベジタリアンレストラン「ロータス&フラワーズ ワン」を開店。 2018年、「野菜キッチンCocomo」としてリニューアルオープン。現在は外食産業向けにベジタリアン商品開発やプロデュースを行い、国内外で活躍する。

ココモ カレー フード トラック
COCOMO CURRY FOOD TRUCK
出店場所は曜日により異なる
03-6322-0800
● 11:30~14:30(場所により異なる)
● 火休(土日不定休)
● 平均予算 850円~
https://cocomocurry.com


君島有紀=取材、文 林 輝彦=撮影

本記事は雑誌料理王国第298号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第298号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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