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世界のトップシェフに聞く食の未来!フェラン・アドリアさん

Ferrán Adriá フィラン・アドリア

料理人に必要なのは〝ロジック〞。
論理的な考え方を持てばパッションが沸いてくる。

「これから料理をめざす人に向けて、僕たちG9メンバーは何ができるかを考えるために日本に集まりました」と話す、G9の委員長フェラン・アドリア。2011年7月に「エル・ブリ」をクローズしたあと、今後の活動が注目されるが、2014年に料理のシンクタンクともういうべき、エル・ブリ財団を創設するために、現在さまざまなプロジェクトを計画中だと語る。

「まずは世界に向けて、料理のイノベーションを図っていこうと考えています。そのためには、もはや料理の領域だけにとどまらず、化学、栄養学、農業、アートといった異ジャンルと、料理とを対話させたい。世界的に影響力をもつ料理人のみならず、哲学者やデザイナーといった人たちもこの財団に招き、我々のクリエーションに参加できる環境を整えたいと考えています」

 また、ウィキペディアに発想を得て彼自身が名付けたという「ブリペディア」というオンラインによる食の百科事典を開設し、世界に向けて食に関するさまざまな情報を発信する計画もあるようだ。

フィラン・アドリア 4つのテイスト

「エル・ブリ」の最後のディナーで提供した料理の一品「4つのテイスト」は、生のアーモンドに4つの味(甘味、辛味、酸味、苦味)をつけ、樹液から採った水を飲みながら味わう。日本の「五味」にヒントを得て表現した。

未知なる南米の食材が、新たに料理の可能性を広げる


フェランをはじめ、スペイン人シェフたちが創造するコンセプチュアルな料理の数々が、近代の料理史に大きな変革をもたらしたことはいうまでもない。そしてここ数年は、デンマークの「ノマ」に代表される北欧諸国のレストランが発信するノルディック・キュイジーヌが、自然回帰とも言うべきシンプルかつピュアな魅力を放って話題になった。そんな中、フェランが新たに注目しているのがラテンアメリカの食文化。「未知なる食材の宝庫ともいえる南米は、我々にもっとも影響力を与える新興国になりつつある」という。

 彼が南米の食に可能性を見出すきっかけとなったのは、2011年にG9会議の開催地であるペルーのリマを訪れた時のこと。そのペルー訪問の様子はサン・セバスチャン映画祭でも放映されたドキュメンタリー映画「ペルー・サベ」で描かれている。ペルー料理界のリーダーでG9のメンバーでもあるガストン・アクリオの案内で市場を訪ね、その食材の豊富さとパワーに圧倒されたフェランが、「アダムとイブの楽園そのもの」と興奮気味に語っていたのが印象的だった。
ペルーには日系移民が多く暮らしているが、日本料理とペルー料理のフュージョン料理「Nikkei」(ニッケイ)はこの国独特の料理ジャンルだ。フェランの弟であるアルベルト・アドリアは、バルセロナにこのNikkei料理の店をオープンする計画を練っている。

「ペルーの魚介料理のセビーチェと日本の刺身が出合うことで、異なる料理が会話し合い、斬新な料理が生まれるでしょう」

 今まで料理と化学を融合させた分子料理をはじめ、数多くの斬新なメニューを創造してきたフェランにとって、「食」とは何なのだろう?

「まさにその疑問にどう答えていくかを考えるために、私は店を閉め、財団を設立するまでに3年という時間を必要としました。食べる事って何なのか、料理するとはどういうことなのか、レストランとはどういうものなのか。また、火を使わない刺身は本当に料理と呼べるものなのか、もし料理と呼ばずにほかの名前を付けるとすれば何がいいのか等々、さまざまな疑問のひとつひとつを解決していこうと考えているのです」

 ではフェランが考えるいいシェフになるための条件とは?
「料理は論理だと僕は思う。シェフには〝ロジック〞つまり論理的な考え方が不可欠です。もちろん技術は言うまでもない。しかし、よく考えることで、パッションが沸いてくるんですよ」

今後はエル・ブリ財団の活動に加え、G9の委員長としての彼の役割にも大きな期待がかかる。G9の会議は2013年にニューヨーク、2014年にはブラジルで開催予定。各国それぞれに新しいメンバーを加え、食の未来、料理人の未来についての議論が行われていく。彼らの活動に注目したい。

Ferrán Adriá 
フェラン・アドリア

1962年スペイン、カタルーニャ州生まれ。1984年に「エル・ブリ」 にシェフとして入店。87年より毎年、半年間の休業期間を設け、その間、創作活動を行う。 97年にミシュラン三ツ星を獲得。 2006年から4年連続で「世界のレストラン50」 で1位に輝く。 2011年7月、新たなステージに向けて「エル・ブリ」 の幕を閉じる。2014年にエル・ブリ財団を開設予定。

G9国際会議に向けて欧米各国からシェフが来日
2012年9月に東京で行われた「G9東日本大震災復興支援」には、バスク・クリナリーセンターの国際評議委員会のメンバーであるG9および、特別招待ゲストが集結。日本からは服部栄養専門学校の服部幸應校長が参加し、G9委員長を務めるフェラン・アドリアを中心に連日、未来の食や料理を考える会議が開かれた。9月24日には東京ドームシティーホールにて東京宣言を発表。フェランは昨今の料理の変革に触れ、これからの料理人のあり方につい述べた。2015年にバスク・クリナリーセンターでは近代料理のバイブルとなる出版物を計画中。


沖村かなみ=文 岡本寿、富貴塚悠太=写真 

本記事は雑誌料理王国第220号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第220号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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