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【若手シェフ4人の一汁一菜】REVIVE KITCHEN 井口和哉さん


手をかけることで素材本来の力を引き出す。

コスメティックブランド「THREE」が、東京・表参道に構える「REVIVE KITCHEN THREE AOYAMA /restaurant RK」は、動物性のものを使用せず、ベジタリアンメニューを提供するレストランだ。フランス料理をキャリアのベースにして、現在はヴィーガンのメニューも店で出す井口和哉シェフは、プラントベースをどう捉えているのか。「肉や魚の代替品としてプラントベースの食品を使用することはありません。たとえばエリンギは鶏肉に似ていると言われますが、僕としてはエリンギがエリンギとして美味しいように料理して食べてもらいたい」と井口さんは話す。

しかしこれは、単に素材をシンプルに調理する、という話ではない。井口さんによれば、良い素材には手をかけてこそ浮き彫りになる個性があるという。「一菜でソースにしたオクラにしても、ここまでくたくたに茹でてなお香りと味が残っている。農家さんがきちんとつくられているから野菜に力があって、調理の仕方によって味わいの幅がつくれるんです」と井口さんは言う。素材の持ち味を自在に引き出し、絶妙な味わいと食感に仕立てるからからこそ、井口さんの料理は一皿の中で変化に富む。

「一汁は、発酵させたマッシュルームの酸とトマトの酸、皮の焦げからくる酸の、3つの酸でまとめています。同じ方向の味わいでもニュアンスの異なるものが最低3種類あると、その料理を食べている最中に微妙に味わいが変化していくんです。一菜のほうでは、茄子のジューシーな肉厚感に、オクラのネバネバ感、タケノコのコリッとした食感が重なり、一皿でさまざまなテクスチャーに出合えるように設計しています」と井口さんは話す。

この「余韻の長さ」が実現されているからこそ、過剰な油分などを添加せずとも、素材本来のもつ味わいから満足感ある一皿を生み出すことができるのだ。「僕自身は肉も魚も食べます。でもクリエイションとして、野菜とキノコだけを使うという制限を設けることで、自分の料理をつくることにつながると思っています」

【レシピ】マッシュルームと発酵トマトのコンソメ焼き冷やしトマト

冷えたトマトにスープの酸が際立つ

具にしたトマトは天日で干すか、オーブンがあれば100℃で一時間ほどセミドライにすればその日に使用可能。「乾燥マッシュルームの代わりに、どんこの出汁などでも代用できると思います」と井口さん。

材料(2人前)

トマト……1/ 2個(浮き実用)
発酵トマトウォーター……1個分
乾燥マッシュルーム……10個分
水……300ml

バジルオイル(作りやすい分量)
バジル……100g
ひまわり油……300g
花穂紫蘇……適量

作り方

  1. (1) 発酵トマトウォーター、(2) 乾燥マッシュルーム、(3) バジルオイル、(4)浮き実用のトマトの素材を仕込む。
    (1) トマトを密閉した容器に入れて重さの2%の塩(分量外)をうち、25~28℃程度で2週間程度発酵させる。それをミキサーにかけて、キッチンペーパーを敷いたザルの上に静かに流して一晩おき、クリアな液体を作る。
    (2) マッシュルームを80℃のオーブンで加熱し、一晩乾燥させる。
    (3) バジルと70℃に加熱したひまわり油をミキサーで5分間ミキシングしたものを漉しておく。
    (4) トマトを常温で1週間程度追熟させる。
  2. 鍋に水300mlを入れて沸かし、1の乾燥マッシュルーム を加え15分程度煮出す。発酵トマトウォーターを加え、味を調える。
  3. 器にトマトを並べ、冷蔵庫で冷やしておいた3のスープを器に注ぐ。最後にバジルオイルを適量たらし、紫蘇の花を茎から外して飾る。

【レシピ】炭火で焼いた翡翠茄子たたきオクラ

異なる食感が奏でるハーモニーが楽しい

素揚げした翡翠茄子は、一晩マリネすることで油分と水分を入れ替え、さらに炭火でじっくりあぶることで油を落とす。とろとろの食感ながらしっかりと食べ応えが残る仕上がりに。夏が旬の緑竹の食感とピリッとした苦みが爽やか

材料(2人前)

翡翠茄子……1個
発酵万願寺唐辛子……2本
オクラ……10本
塩こうじ……20g
発酵マッシュルーム……5個分
緑竹……1個
枝豆……4 ~ 5房
カシューナッツ……2 ~ 3粒
エストラゴン……適量
かたばみ……適量
アマランサス……適量
ひまわり油……翡翠茄子1個分の皮の8倍量

作り方

  1. (1) 発酵万願寺唐辛子、(2) 発酵マッシュルームなどの素材を仕込む。
    (1) 万願寺唐辛子を密閉した容器に入れ重さの3%の塩(分量外)をうち、25~28℃程度で2週間程度発酵させる。
    (2) マッシュルームを密閉した容器に入れ重さの3%の塩(分量外)をうち、25~28℃程度で10日程度発酵させる。
  2. 翡翠茄子を170℃の油で素揚げし、氷水で急冷した後、皮をむく。むいた皮は直火で焦がし、8倍量のひまわり油と一緒にミキサーにかけてオイルをつくる。
  3. 1-①と塩こうじを混ぜて保存容器に注ぎ、2を入れて冷蔵庫で一晩おく。
  4. 3でマリネした茄子を、炭火で15分程度じっくりとあぶって油を落とす。
  5. オクラを8分程度くたくたになるまで茹でる。ヘタを落として刻み、1-②で延ばしてソースをつくる。
  6. 緑竹は角切りにし、200℃のオーブンで10分程度軽く火を入れる。
  7. 皿に5のソースを敷き、ヘタを落として縦半分に切った茄子と緑筍を置く。2のオイルを適量垂らして、炙った枝豆、削ったカシューナッツと一緒にエストラゴン 、かたばみ、アマランサスなどのハーブを飾る。

text 中森葉月 photo よねくらりょう

本記事は雑誌料理王国2020年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2020年10月号 発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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