フードジャーナリスト柴田泉が見つめる「レストランこれから」の、これから「ル スプートニク」髙橋雄二郎シェフ


7月にオープン5周年を迎えました。
コロナ下にあっても改革は続けます

5月2日のル スプートニク

六本木のフランス料理店「ル スプートニク」を営む髙橋雄二郎シェフは3月の最終週、予約のキャンセルが相次いだ時点で臨時休業と物販へのチャレンジを決めた。さっそく4月初頭には「シェフの気まぐれBOX」(2人分1万8000円、税・送料込)を配送にて販売開始。取材したのはそれから約1ヶ月後の5月2日だ。
BOXの内容は、パテ・ アン・ クルートやテリーヌ、ポタージュなど、食べてホッとする品々。「プロが作った料理ならではのおいしさで、少しでも感動していただきたい。そうすれば、こんな時期ですが、笑顔が生まれたり前向きになっていただけるのではないか、と思いまして」と話す。なおBOXは、週末に楽しんでもらえるよう、予約制で毎週金曜日に発送するサイクルに。「毎週、注文の数が増えていることがモチベーションにつながっています」。

営業再開については、5月中のいつかに、と考えていた。 BOXは作ることができる量、すなわち売上げに限りがある。「店を守れるかどうかの鍵を握るのは、やはり営業再開。自治体は 『なるべく外に出ないように』と言い、 レストランは『営業しないと店が続かない』と店を開ける。そのせめぎ合いです。自分としては、十分な対策をとった上で営業を再開するのが、今後も店を続けるためにできる最善の選択だと思っています」。

それから&これから

ル スプートニクでは、レストランの営業を5月18日より再開した。おまかせBOXは6月末まで続け、加えて6月からはオックステールの赤ワイン煮やテリーヌ・ショコラなど、 レストラン営業と両立しやすい単品料理の販売も開始。さらに、デリバリーを請け負うサービス「メニュー」にも登録した。「様子を見ながら、無理のない範囲でいろいろと試しています」。
なお今年7月20日で同店は開業5周年を迎えたが、5周年を機にさまざまな改革を半年ほどかけて実行しようと昨年から計画していた。その一つが店内のリニューアルで、7月13日から5日間かけた工事を経て実現した。一方、料理スタイルの面でも改革を実行。「今まではフランス料理のベースを強く意識していましたが、それが自由になりました。中身はフランス料理ですが、肉まんのように仕立てた皿もあります(笑)」と、コロナの間も立ち止まることなく、変化と前進を続ける。

営業再開後の6、7月で、 常連客を中心に徐々にお客が戻ってきたという同店。特に7月は5周年もあり、好調だった。しかし8月は都内の感染者数の増加に伴い、レストランにとって苦しい時期になると予想。「4、5月ほどの厳しい空気感だと配送の売上げを見込めるけれど、それほどでもなさそう。その一方で、夜の外出は控えるようになるでしょうから、ディナー営業は苦しい。どっちつかずの状態が続きそうです」と懸念する。
ではどうすればいいかというと、やはり、こまめに情報をチェックし、細やかに対応することが大切という。「料理を考えるのが本当に好きなので、それに関しては欲求は落ちないのですが、やはりニーズがないと厳しいですね。お客さまのありがたさを痛感しています。そんなお客さまに選ばれる店になることが第一です」。料理とサービスの総合力でお客を元気づける。そんな食を楽しむ場所としてのレストランのあり方を貫きたい、と考える。

text 柴田泉

本記事は雑誌料理王国2020年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2020年10月号 発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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