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【若手シェフ4人の一汁一菜】Salmon&Trout 中村拓登さん


理想は、 体にすんなりとなじむ料理

「食べ疲れしない料理こそが信条」と話す中村氏。シェフ就任1周年イベントでの精進料理が好評を博し、コースの軸にもなりつつあるそうだが、プラントベースの食材や料理については、「植物由来にこだわるというより、頂いた時に体に負担がない、季節に合わせて体にすんなりとなじむ料理であることを大切に思っています」と言う。
「日本の食事とは、本来そういったものですよね。バターや乳製品は僕自身が食べ疲れするので使っていませんが、これは、体に正直に耳を傾けたら、すんなり受け入れられるものがそうだったという感じでしょうか。プラントベースとの付き合い方も、そんな、気負いのないスタンスですね」。季節感については、料理に当て込むのではなく、表現した料理から季節を感じ取って欲しいとの思いが強い。残暑の体に優しい2品を伺った。

1品目は、「米の研ぎ汁」にくず野菜を加えて乳酸発酵させた漬け汁がベース。水キムチは汁こそが栄養の宝庫とも言われるが、くず野菜で汁のみを生成して活用。フードロスにもひと役買っている。さっぱりとした乳酸菌の酸味を生かし、スイカの果汁と炭酸水を合わせ、梅酢に漬け込んだみょうがと、香ばしく焼いた秋ナスで、名残とはしりの出合いを表現。プチプチとした炭酸の感触、発酵のうま味を感じる汁に、みょうがの食感と、香ばしい焼きなすが甘くとろける。

2品目は打ち豆、厚揚げ、みそや醤油といった「大豆たんぱく」を重ね、ご飯があってもなくても進む構成に。打ち豆は大豆とは異なり、すぐに戻せるのも魅力。これは甘辛味に炒り、しめじは南蛮酢でさっぱりとマリネ。厚揚げはマスタードオイルで香ばしく焼いてクミンとコリアンダーをひと振りする。3つのていねいな仕事を組み合わせることで、懐かしい甘辛味にスパイスの香りが加わり、新鮮な印象が生まれた。
「昔から当たり前に作られてきた調味料や無理なく手に入る素材。日常を見つめ直すことで、再発見していければ。それこそが、今の僕が考える東京らしい料理かもしれないです」

【レシピ】みょうがと焼きなすの、スイカ水キムチ

乳酸発酵の滋味深い味わいを、さっぱり頂く

水キムチの汁の乳酸発酵の酸味、梅酢に漬けたみょうがの爽やかさ、香ばしく焼いたナスの甘味が重なる。スイカの果汁の代わりに和梨をおろし、同様に仕上げれば秋の一品に。炭酸を加えず、昆布出汁で伸ばしても。

材料(2人前)

みょうが……小1個
梅酢……適量
なす……1個
薫製塩(または自然塩)……1、2粒
スイカ、水キムチのベース(※下記作り方参照) ……各同量
塩……適量
炭酸水(軟水)……適量

作り方

  1. みょうがは縦半分に切って熱湯でさっと茹で、梅酢(水と同量で割ったもの)に浸す。
  2. なすは丸ごと焼いて皮をむき、縦半分に切ってから食べやすい長さに切り、燻製塩をふる。
  3. スイカは種を除いてミキサーにかけ、鍋で一度煮立ててアクを引き、裏ごしして冷やす。
  4. 水キムチのベースとスイカジュースを好みで合わせ、塩で調味する。
  5. 器になす適量を盛り、縦に千切りにしたみょうがをあしらう。3を注ぎ、炭酸水を静かに注ぐ。

今回は、炭酸水:スイカの果汁:水キムチのベースは2:1:1程度

水キムチ風ベースの作り方


材料(容器に合わせて好みの分量で)

  1. 鍋に米の研ぎ汁適量を入れて火にかけ、沸騰させる。2%程度の塩を溶き、そのまま冷ます。
  2. スイカの皮の部分適量、ズッキーニなどの野菜くずを好みで2:1くらいの分量で容器に入れ、1をかぶるくらい多めに注ぐ。1日ほど常温に置き、酸味が出たら冷暗所に移す。そのまま乳酸発酵が進むので、様子を見ながら、好みの味になったところで使用する。
  3. 漉して保存容器に入れ、冷蔵庫で保存する。

※ 刻んだトマトやきゅうりを加えて冷麺のベースにするなど、様々に使える。
※ 昆布、ニンニクなどもうま味になる。赤唐辛子を加えると腐敗防止に。

米の研ぎ汁に塩とくず野菜を加えて乳酸発酵させると、これだけでゴクゴク飲めるような乳酸発酵ドリンクに。麺のベースにするなど、調味料として活用できる。

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