中華の巨匠が伝授!素材を最大限に活かす火入れ。秘密は【下味】にあり!


中国の食文化に着目し、その技を取り入れている西洋料理の料理人も増えている。

トゥーランドット臥龍居 脇屋友詞さん

「数年前に、すでにニューヨークタイムズの記者に、『今、風は中国料理に向いていますよ』と話していました」と、脇屋友詞シェフは言う。世界を舞台に活躍するトップシェフが感じる料理界の風と現実とは――。

「30年ほど前から日本人の料理長が出てきて、若い子もチャンスがあると思うようになった。今は、店が終わったあとに自主的に研鑽会を開いたりしている。そういう中で中国料理を目指す子が増え、力のある若手が育ってきたんだと思います」

例えば、料理界の若き才能の発掘を目的に開催されるコンペティション「RED U-35」では、昨年、一昨年と連続して中国料理界の若手がグランプリをとった。中国の食文化に着目し、その技を取り入れている西洋料理の料理人も増えている。「ウチにも、わざわざフランスから若い料理人が研修に来るくらい、今、中国料理は世界の注目を集めているんです」と脇屋さんは話す。

中国料理の下味調味料9種。全卵、卵白、油、醤油、紹興酒、コショウ、片栗粉、塩、砂糖。これらを食材によって使い分ける。
下味に使うのは、全卵、卵白、油、醤油、紹興酒、コショウ、片栗粉、塩、砂糖。これらを食材によって使い分ける。

中国料理の最大の特色は【下味】

肉は全卵、魚介は卵白内臓は醤油とコショウで

中国料理ならではの知恵は、乾物の戻し方やスープの取り方などさまざまだが、異分野の料理人が驚く最大の特色は"下味"だろう。

「下味をつける作業さえしておけば、火入れは10秒ほどで完了します。中国料理の"瞬間調理"は火力が強いせいだと思われがちですが、じつは下味がポイント。つまり、中国料理はダンドリなんです」

オーダーが入った時点ですでに準備ができているのも同じ。さっと火を入れ、合わせ調味料で味を調えれば料理は完成する。素材はコーティングされ、調味料の味も浸透しやすくなっている。もちろん、下味をつけることで食材の風味や食感も増す。「下味をつけた食材は、3日間くらいは十分にもちます。おいしさも損なわれない。ほとんどの中国料理店が、2日分くらいは用意しているんじゃないかと思いますよ」

では、具体的にどうやって下味をつけているのだろうか。

「基本的には、食材によって下味の素材は変えます。肉系の場合は素材自体が強いので全卵や油、水、塩などが下味の材料。合わせ調味料も、醤油など色が濃いものが多いので、色はあまり気にしません」

しかし、エビやホタテ、アワビのような魚介の場合は、食材自体が繊細で色も淡いものが多い。味つけも塩味でさっぱり仕上げたいので、卵白や油、塩などを使う。「美しく仕上げるために、色味のない卵白を使うわけです」

ホタテに塩を振り、卵白と片栗粉を合わせてよく混ぜる。艶や粘り気が出てくるまでしっかり混ぜ合わせるのがポイント。
ホタテに塩を振り、卵白と片栗粉を合わせてよく混ぜる。艶や粘り気が出てくるまでしっかり混ぜ合わせるのがポイント。

次ページ:肉系・魚介系・内臓系、それぞれの【下味】の調理ポイント


SNSでフォローする