中華の巨匠が伝授!素材を最大限に活かす火入れ。秘密は【下味】にあり!


3カテゴリーごとの【下味】調理のポイント

「旨味を上手に引き出せない」と思っている人はぜひ試してみて

もちろん、こうした中国料理の技や知恵は、西洋料理にも応用できる。例えば、肉をフライパンで焼くときも、下味をつけるだけで、上に乗せたソースがからみやすくなる。
「口に入れたときに、ハッとする旨さを感じるはずですよ」
ごま油の代わりにオリーブオイルを使ったり、酢の代わりに柑橘類の酸味を利用することも可能だ。

「素材の旨味をもっと上手に引き出したい」「新たな料理を考えてみたい」などと思っている人は、ぜひ「下味」という中国料理の技を試してみてほしい。そこからまた、新しい発想が生まれるだろう。
「同じ5秒で仕上げる、といっても、内臓系は高温で、魚介系は低温で、肉系はその中間という具合に、私は火加減を変えています。そうすることで、仕上がりもおいしさもぐっと変わってくるんです」

「下味をつける」というひと手間には、旨さを引き出し閉じ込める知恵が、詰まっているといえよう。

脇屋さんに学ぶ【下味1:肉系】

硬い牛のもも肉も全卵で下味をつけることでふわっとやわらかくなるんです

塩と水をまぶしたあとで全卵を加える。水を入れることで全卵や塩が吸い込みやすくなる。

全卵のみだと肉が硬くなる。水を入れてやわらかく。

手でよく混ぜる。肉に卵液をしっかり吸わせることで、仕上がりがやわらかくなる。

粘り気が出てくるぐらい、しっかり混ぜる。

片栗粉と油を入れて再びしっかり混ぜ、片栗粉と油で肉をコーティングする。

天ぷらにならないように、片栗粉と全卵は少なめに。

さらに油をかけるが、このときは混ぜない。そのまま冷蔵庫に入れて落ち着かせる。

2度めの油は炒めたときに素材同士がくっつかないため。

青椒肉絲を調理する脇屋シェフ。牛肉に下味がついているため調味料が入りやすく、火も通りやすい。肉はやわらかく、ピーマンはシャキッとした歯ごたえに。
青椒肉絲

牛肉に下味がついているため調味料が入りやすく、火も通りやすい。肉はやわらかく、ピーマンはシャキッとした歯ごたえに。

脇屋さんに学ぶ【下味2:魚介系】

卵白で味も美しさも際立たせる

塩を軽く全体に振って味を馴染ませたら、卵白を入れてよく混ぜる。

塩はほんの少量でOK。ホタテの持ち味を引き出す程度。

素材を損なわないように丁寧に、しかし卵白を吸い込ませるようにしっかりと混ぜていく。

艶や粘り気が出てきたらOK。この感じが目安。

片栗粉をまぶしてしっかり混ぜたら、油を2回に分けて入れるのは、肉系と同じ。

1度目の油はしっかり混ぜ、2度目の油はかけるだけ。

ソラマメとゆでたタケノコとホタテを一度油通しし、その後鍋に戻して味つけをしていく。

この間、約10秒。下味をつけているからこその早業だ。

脇屋シェフによる「ホタテと空豆の炒め」の一皿。火入れに時間をかけていないため、ソラマメは色鮮やかでホタテもふんわりやわらか。それでいて味はしっかり。卵白だけを使うので見た目も美しい。
ホタテと空豆の炒め

火入れに時間をかけていないため、ソラマメは色鮮やかでホタテもふんわりやわらか。それでいて味はしっかり。卵白だけを使うので見た目も美しい。

脇屋さんに学ぶ【下味3:内臓系】

中国料理だからごま油だけど西洋料理ならオリーブオイルでも良い

醤油を少し入れ、コショウを加えて混ぜる。その後で塩で味をしめる。

醤油を入れることで、内臓系の雑味が消える。

片栗粉をまぶしたら、油を入れて混ぜる。内臓系の場合、2回目の油はごま油がよい。

卵は使わず、少量の片栗粉をまぶすだけ。

傷つきやすい内臓系は、スプーンを使って、ごま油でマリネするような感覚で混ぜる。

やわらかい素材は傷つけないように、丁寧に混ぜる。

火が入りすぎてカチカチになりがちなレバーも、下味をつけることで仕上がりもふっくら。

下味をつけると味がのりやすく、火入れも短縮できる。

脇屋シェフによる「鶏レバーと野菜の炒め」の一皿。油通しをした鶏レバーと野菜を、鍋に戻して酒、醤油、豆板醤、コショウ、酢を合わせた調味料で味つけ。牛肉やホタテのときよりも高温でサッと炒める。鶏レバーの旨さが際立つひと皿だ。
鶏レバーと野菜の炒め

油通しをした鶏レバーと野菜を、鍋に戻して酒、醤油、豆板醤、コショウ、酢を合わせた調味料で味つけ。牛肉やホタテのときよりも高温でサッと炒める。鶏レバーの旨さが際立つひと皿だ。

脇屋友詞Yuji Wakiya
1958年札幌市生まれ。
「山王飯店」 「キャピトル東急ホテル」 などを経て、2001年、東京・赤坂に「Wakiya一笑美茶樓」をオープン。現在、東京、横浜で4店舗のオーナーシェフを務める。「World Gourmet Summit」(11年)に参加するなど世界に活躍の場を広げている。

トゥーランドット臥龍居
東京都港区赤坂6-16-10 Yʼs CROSS ROAD1、2F
03-3568-7190
● 8:00~22:00LO(土・日・祝は9:00~) 時間帯によってメニューが変わる
● 無休
● 昼4500円~ 夜8000円~
● 180席
www.wakiya.co.jp

山内章子=取材、文 富貴塚悠太=撮影

本記事は雑誌料理王国273号(2017年5月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は273号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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