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【受け継ぐということfile3】プロダクトデザイナー 辰野しずか


陶芸家、建築家、プロダクトデザイナー、茶人、杜氏、農家。異業種のトップランナーは、何を受け継ぎ、それをどのように未来へ引き継ごうとしているのか。職業やジャンルに関係なく共鳴するであろう、6人の価値観に迫る。

背景の美しさに魅せられて

先日、「神が潜むデザイン」というテーマで、学生時代に惹かれたデザインについてコラムを寄稿する機会がありました。振り返ってみると、当時の自分が知るデザインからは思い浮かばなくて。熟考した末にしっくりきたのが、数年前にホウキモロコシの端材で作る靴ベラのプロジェクトで関わった、手作りの米澤ほうき工房のものづくり。ほうき箒作りは7割が畑仕事らしく、工房の前の箒の原料であるホウキモロコシ畑で、職人さんが栽培から手がけています。その地で素材を作り、自分の手を動かし、掃きやすい箒を作る。そこに、単純な物の見た目の美しさではなく、背景の美しさを感じて、まさに「神が潜むデザイン」だと思いました。

そもそも「工芸」には、そういう背景の美しさがあります。長年培ってきた人の能力が反映されたものづくりや、大変だけれど継続する美しさに対して、単なる造形美は敵わないと思っています。もちろん、簡単にできる美しいものにも価値があるとは思いますが、そういったものに一人の人間として惹かれてしまう。効率化を突き詰める時代の流れの中で、追い込まれている工芸を、少しでもデザインの力で、次に受け継がれていくきっかけ作りをしたいという思いで取り組んでいます。

この9月に第2弾が発表された、佐賀・有田焼窯元「渓山窯」の「mg&gk(もぐとごく)」という食べ物と飲み物の器のブランドもそのひとつ。後継ぎの若い女性社長が率いる家族経営の窯には、柔らかな雰囲気が流れていて、その空気を活かした新しいプロダクトを考えました。通常、有田焼で使用される呉須より薄い色で、瑞々しさを表現。さらに、普段よりも、少しフェミニンなデザインに振ったのは、代々続いた有田焼の次世代を担う女性社長という「受け継ぐ人」を意識したから。頑張ってきた人が報われるデザインを施すことも、私の哲学です。

辰野さんが手がける、 有田「渓山窯」の食べ物と飲み物の器のブランド「mg&g刈。 第2弾は、 ぼうろとほうじ茶を楽しむシー ンを想定して作られた。 渓山窯:TEL 0955-42-2947

辰野しずか
クリエイティブディレクター /プロダクトデザイナー
英国のキングストン大学プロダクト&家具科を首席で卒業。2011 年に独立。2017年に株式会社Shizuka Tatsuno Studioを設立。家具、生活用品、ファッション小物のプロダクトデザインを中心に、企画からディレクション、付随するグラフィックデザインなど様々な業務を手掛ける。 2016年ELLE DECOR日本版「Young Japanese Design TalentsJ賞など受貸多数。
http://www.shizukatatsuno.com/

text 浅井直子 photo 枦木功(portrait)、小川真輝(product)

本記事は雑誌料理王国2019年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2019年10月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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