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【受け継ぐということfile6】コンクリートに囲まれた都会で畑をつくる 農家 小倉崇


生きる力を受け継ぐ。 それが農家

僕は農家の出身ではないので、先祖が守ってきた土地を受け継いでいるわけではありません。都会で農業をやっているので、コンクリートに囲まれた場所へ土を運んで、 新しく畑を作っています。今、僕たちURBAN FARMERS CLUB(以下、UFC)がやっていることは、農薬も肥料も使わずに土の力だけで野菜を育ててみようという試み。健康な土づくりという、先人たちが悪戦苦闘して培ってきた知見や技術を受け継がせてもらい、それを広め、伝えていくことがUFCの役割です。植物も我々人間も土があったから誕生し、今も生命の循環ができているわけです。土とは何かを伝えたいですし、土こそ受け継ぐべきものだと思っています。

農業をやるうえで、ひとりの大先輩農家から受け継いでいる言葉があります。「何のための農業か」。2年前の秋に急逝された、山下一穂さんの言葉です。 山下さんは日本の有機農業界に風穴を空けた方で、畑を丸ごと堆肥にすると言い、自然栽培を組み合わせた循環農法を実践されていました。「農村からはじまる美しい日本の国づくり」のために。では自分は、農業を通して何がしたいのか、どんな社会や未来を創りたいのか。僕が都市に畑を作ってきたことは、自己実現のためではありません。すべての都市生活者が、自分で食べるための野菜を育てられる社会にしたいから。みんなで育てて、みんなで食べようという共有の農業を広めるためです。

キース・リチャーズ(ザ・ローリング・ストーンズ)は「ロックンロールは受け継ぐものだ」と言いましたが、農業も同じです。フォー マットを受け継ぐのではなく、そこにあるカルチャーやスピリットを渡していくものですから。さらに農業は生きることに直結します。生きる力を受け継ぐのが農家だと思っています。

UFCの活動には、 多くの子どもたちが参加。 農を身近に捉える子どもが親になれば、その価値観は次世代へ。都市生活者にとって農が自分事になる未来を目指す。

小倉崇
NPO法人アーバン・ファーマー・クラブ代表理事。
渋谷、 恵比寿、 原宿の畑で土を耕し、 野菜を育てる都市農家。 著書「渋谷の農家」。
http://urbanfarmers.club/

text 馬渕信彦 photo URBAN FARMERS CLUB

本記事は雑誌料理王国2019年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2019年10月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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