食の未来が見えるウェブマガジン

東京都内のユニークなパン屋さん


ベルギーのベーカリーレストランの日本支店、家具屋の一角に構える店、氷温熟成庫を備える店・・・。個性的なパン屋さんが、それぞれどのようなユニークな手法で注目を集めているのか。コンセプト作りから商品ラインナップまで、その理由を探ります。

【東京・芝公園】ル・パン・コティディアン | LE PAIN QUOTIDIEN

ベルギー発、話題のベーカリーレストランはパンも料理もシンプルが身上。

 ベルギーで創業、世界19カ国26都市で展開されているベーカリーレストランが1月、東京・芝公園にオープンした。かねてより海外在住者や旅行者の間で話題になっていたこの店、人気の秘密は、石臼挽きのオーガニック小麦粉、塩、水だけを使った、シンプルで力強い味わいのパン。レシピは創業当時から受け継がれており、東京でも同じ材料と同じ製法で作られる。

 この店ではパンのみならず、料理も提供。代表的なメニューはタルティーヌで、これはハード系のパンに野菜やサーモンなどの具材をのせたオープンサンドイッチだ。ここで使われるのは東京近郊で採れた野菜を中心に、新鮮でヘルシーな材料。パンと食材、それぞれの味わいをストレートに味わえるよう、いずれの料理も、シンプルに調理される。

 レストランスペースには、店の中央に、コミューナルテーブルと呼ばれる大きなテーブルを設置。パンを通じて知らない人とも心地よい空間を共有してほしいという願いがここには込められている。

食事と合わせることを前提とした、ハード系のパンがメイン。石臼挽きのオーガニック小麦をベースに、全粒粉、スペルト小麦、五穀なども使われ、粉の豊かな風味が感じられる。塩気は抑え気味。シンプルな味わいで食べ飽きない。

店主 アラン・クモンさん
Alain Coumont
1961年ベルギー生まれ。フランス各地で料理人として働いたのち、1990年、ベルギーに「ル・パン・コティディアン」オープン。欧米を中心に支店多数。

LE PAIN QUOTIDIEN(ル・パン・コティディアン)
東京都港区芝公園3-3-1
03-6430-4157
● 7:30~23:00(カフェは22:00LO)
● 無休
● www.lepainquotidien.jp

【東京・八王子】ラ ブランジュリ カロン | la boulangerie CALON

酵母が働くぎりぎりの低温度で生地を熟成し、旨味を引き出す。

東京・八王子にある「ラブランジュリカロン」。最大の特徴は、生地を氷温熟成させること。酵母が働くぎりぎりの温度、マイナス6℃でねかせることで、アミノ酸やグルタミン酸が醸成され、旨味へとつながる。8年ほど前から、粉の旨味を引き出すオーバーナイト製法が注目され始めたが、それをさらに発展させた製法で、シェフの 神林慎吾さんが研究を重ねてたどり着いた。

利点はそれだけではない。この店でパン製造にあたっているのはふたり。熟成時間はものによって異なるが、いずれも多少時間が長くなっても問題はない。そのため、臨機応変に対応しやすく、ふたりでも充分にオペレーションできるという。

食事系や菓子パンが売れ筋だが、神林さんが一番力を入れているのがハード系。パンを食事の一部と捉え、灰分の多い粉を使い、雑味やミネラルこそが料理のおいしさを引き立てるパンをめざす。その提案として、ランチ利用できるイートインを併設。ゆくゆくはお酒も楽しめる店舗を作りたいと意欲を見せる。

もとは食品メーカーの倉庫だったところ。敷地面積70坪もの広いスペースに、別経営の洋菓子店と同居する形で店舗はある。そして6畳もの広さを持つ特注の氷熟庫で生地をゆっくり熟成させる。

神林慎吾さん
Shingo Kambayashi
1968年新潟県生まれ。大学を中退し製パンの世界へ。さまざまなパン屋で修業。国分寺「ラ・ブランジュリ キィニョン」後、2006年「ラ ブランジュリ カロン」開店。

la boulangerie CALON(ラ ブランジュリ カロン)
東京都八王子市高倉町64-6
042-682-3757
● 10:00 ~20:00
● 無休
● www.basel.co.jp/calon

【東京・世田谷代田】トロ コーヒーアンドベーカリー | TOLO COFFIEE & BAKERY

一軒家のパティスリーカフェを生かした店とパン作り

 扉の先は、カフェと2階のカフェへ続く階段。その右手の扉を開けると、ようやく厨房の小さな一角にパンのディスプレイが現れる。バゲットはケーキ用ショーケースの中だ。

以前はパティスリー併設のカフェだった。「池尻の店『トロパン トウキョウ』が手狭になって、ここはその倉庫にするつもりだったので、厨房は菓子用のまま手を入れなかったんです」と、シェフの田中真司さん。が、オーナーから「試しに焼いてみたら」と提案された時も、あえて厨房はそのままにした。菓子用のオーブンは、パン用とは底熱も違えばスチームも出ないが、その不充分な設備を逆手にとって、本店以上に独創的なパンを生み出した。

 クープを入れない、トルネード形のバゲットは代表作。「どんな設備でも、工夫しておいしいパンを焼きたいんです。それができるのは『デュヌラルテ』時代、井出則一さんの下で理論を学んだおかげです」。ベーカリーらしからぬ空間と個性的なパンで、オープン半年足らずで池尻店を超える売り上げになった。

入り口に大きな樫の木が茂るレンガ造りの洋館を生かし、ベーカリー&カフェに。以前は外国人用住宅だったそう。

田中真司さん
Shinji Tanaka
1979年兵庫県生まれ。ボクサーからパン職人に転身。「デュヌラルテ」で6年間修業を積んだ後、独立。2009年「トロパン トウキョウ」シェフに。現在は2店を統括。

TOLO COFFIEE & BAKERY(トロ コーヒーアンドベーカリー )
東京都世田谷区代田5-3-1
03-5787-6732
● 12:00~23:00(ランチ15:00LO)
● 火休

【東京・祐天寺】オット パン | OTTO パン

家具店の一角でコツコツと丁寧なパン作り

店の立地も自身の経歴もユニークな「OTTOパン」の店主、木内俊弘さんは「全工程を目の届く範囲で行う」という信念の下、低温長時間発酵の生地と朝一番に仕込むストレート法で作る10種類の生地から30種類のパンをひとりで焼く。材料も自分の舌を基準に選び、「モチモチ感の出る」うどんにも使われる北海道産小麦粉「北ほなみ」を愛用。約7坪の厨房に置ける製パン機器は限られるので、定休日の1日は仕込みにあてる。シーターを購入、クロワッサンを提供するのが次の目標だ。

東急東横線祐天寺駅から徒歩3分。祐天寺の手前、駒沢通り沿いにある。大きな窓からは、テーブルや椅子の奥に、厨房で働く木内さん、その手前に並んだパンが見える。

店主 木内俊弘さん
Toshihiro Kiuchi
1969年東京都生まれ。輸入雑貨店を経営後、パン職人をめざして「アリエッタ」、「ネモ・ベーカリー」で修業。2010年10月、知人が営む家具店「柿八」内に同店を開業。

OTTO パン(オット パン)
東京都目黒区中目黒5-27-24
03-5721-0550
● 12:00~19:00(売り切れ次第終了)
● 水、木休
● www.ottopan.com


本記事は雑誌料理王国第209号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第209号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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