開放されたカウンターに立つシェフが、目の前で料理を仕上げる様子も“美味しい”。
昼は担々麺で名を馳せる名店の夜の素顔は、自由な発想で生まれる中華と自然派ワインを重ねて楽しむ宴だった。
担々麺と汁なし担々麺で行列のできる店として「虎穴」を認識している人は多いだろう。しかし、それではあまりにももったいない。ディナーのコースを自然派ワインとともに味わってこそオーナーシェフの小松仁さんが生み出す独自の中華料理の世界を噛みしめることができる。
ディナーは月替りのコースのみ。献立は、温冷の前菜3品とスープ、メイン2種、〆の食事という構成だ。うなぎやクエ、そして鹿などの食材のほか、サバやブリなどの中国料理のイメージとかけ離れた食材も厭わず使う点が興味深い。
「食材にボーダーは設けていませんが、創作中華でもありません」と小松さん。中華料理の軸は保ちつつ、毎日出かける市場で得る自由な発想を大切にしているのだろう。
例えば前菜として供される「鯖叉焼」。塩を振って脱水した後に叉焼のタレに漬け込んだ鯖を七輪で炙ったもの。中心はレアに仕上がるように仕上げてある。潰した銀杏を整形し、片栗粉をまぶして揚げた「銀杏のきんつば」を添える。料理とともに味わいたいのが、フランス産を中心とした自然派ワイン。800本ものワインをストックしているがリストはないため、好みを伝え小松さんの提案に委ねるのが正解だ。
虎穴(フーシュエ)
東京都中央区東日本橋3-5-16 仙石ビル1F
TEL 03-6661-9811
11:30 ~ 14:00、18:00 ~ 22:00LO ※日曜ランチはおまかせコースの予約のみ
月休
text 近藤由美 photo 八田政玄
本記事は雑誌料理王国2020年2月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年2月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。