旬の魚を調理するプロの技を大公開!「コントワール ミサゴ」土切祥生さん(グリル編)


基本的には網や串などを用いて、炭やガスの直火で素材の表面に焼き色をつけて「あぶり焼き」にする方法。直火でなくとも、溝の入ったグリル板を使って焼く場合も「グリル」と呼ぶ。肉や魚などの表面に焦げ目がつくことで、香ばしい味わいが料理に反映されるのが特徴。調理法の中でももっともシンプルかつ伝統的な手法で、古代エジプト時代でも炭や薪を使ったあぶり焼きは行われていたとされる。

「小学生の頃から父親について、よく魚市場に行きましたね」と懐かしそうに話す土切祥正(つちきりよしまさ)さん。実家は静岡の寿司店で、自身も若い頃に寿司職人だった経歴を持つ。それだけに、魚の扱いには人一倍、気を使う。

今回「グリル」のテーマに選んだ魚は、築地仕入れの気仙沼産カツオ。カツオは赤身の魚で肉に共通するような旨味を持っている。そこでしっかりと火を入れて焼くよりも、牛ステーキのように中身はレアな状態で、あぶってグリルにするのが最良の調理法と考えた。
 

また、多少ねかせたほうが旨味の増すタイのような白身魚とは異なり、カツオは鮮度がすぐに落ちやすいため、おろし方にも気を配る。「何度も包丁を入れると生臭さが増すので、必要最低限に包丁を入れて素早くさばきます」と土切さん。血合いを丁寧に取り除いて、身に臭みを残さないのもさばき方のコツだ。溝のついたグリル板で焼くメリットは、カツオの皮や身に適度に焦げ目がついて、その香ばしい味わいが楽しめるところにある。
 

そして考案されたのが、写真の「カツオのカルパッチョ グリビッシュソース」。日本人に馴染み深い「カツオのたたき」だが、ピクルスの酸味が利いたソースや甘味のあるカリフラワーのムースと出会い、フレンチ仕立ての西洋の皿となった。

カツオのカルパッチョグリビッシュソース

持ち味の異なる2種類のソースを合わせて、カツオのたたきをフランス料理の皿に構築。グリビッシュソースは、焦がしバターにコルニションのピクルスやケイパー、トマト、卵の黄身を加えた酸味のあるソースで、カツオに爽やかな風味を与える。カリフラワーとジャガイモのピュレに生クリームを加えたムースリーヌは、野菜の旨味とまろやかな甘味を添えた。

<カツオのカルパッチョ>(1人分)
カツオ…約100g/塩、コショウ、オリーブオイル…各適量

<グリビッシュソース>(1人分)
コルニションのピクルス、ケイパー…各10g、トマト(湯むき)…1/8個/ゆで卵の黄身…1/4個/バター(無塩)…20g/パセリ、塩、コショウ…各適量

<ムースリーヌ>(20人分)
タマネギ…4個/カリフラワー…2㎏/バター(無塩)…250g/フォン・ド・ヴォライユ…1ℓ/ジャガイモ(メークイン)…4個/生クリーム(脂肪35%)……カリフラワーのムースリーヌに対して1/3の量

[作り方]
1.カツオのカルパッチョを作る。カツオを三枚におろし、血合いを取り除いて筒切りにする。
2.1に塩、コショウをふり、全体にオリーブオイルを塗る。
3.グリル板を熱し、2の皮面から焼き、四方を焼く。
4.グリビッシュソースを作る。鍋にバターを熱し、みじん切りにしたコルニションとケイパー、パセリ、ゆで卵の黄身、賽の目に切ったトマトを加えて炒め、塩で調味する。
5.ムースリーヌを作る。鍋にバターを入れ、タマネギのスライスとひと口大に切ったカリフラワーを炒める。
6.5に皮をむいて賽の目に切ったジャガイモとフォン・ド・ヴォライユを加えて煮詰める。ミキサーにかけ、漉し器で漉してから冷やし、生クリームと合わせる。 7.カツオをスライスして皿に盛り、シブレットをのせる。グリビッシュソースをまわしかけ、ムースリーヌを添える。

POINT
火を入れ過ぎず、中身はレアの状態で焼き目を付ける

カツオは血合いをきれいに取り除き、縞模様がはっきりとした腹側を筒切りにする。焼く時は、まず鉄串で皮に数カ所穴をあけておき、皮の縮みや膨張を防ぐ。また、皮や身がグリル板にくっつかないようにあらかじめ塩、コショウとともに全体にオリーブオイルを塗っておく。グリル板は強火で熱しておき、まず皮目を下にしてヘラで押さえながら焼く。そして方向を変えて格子状に焼き目をつける。側面は軽く焼き目がつく程度で、火を入れすぎない。スライスした時、身の断面がピンク色になるレアの状態に仕上げる。

土切 祥正さん

1976年静岡県生まれ。東京都内の寿司店で修業後、フランス料理人に転向。北海道のオーベルジュ「ヘイゼルグラウスマナー」で働く。広尾「ブラッスリー マノワ」で4年間勤務後、2010年独立。

コントワール ミサゴ
東京都港区西麻布4-17-22アビターレ西麻布2F
☎03-6427-3376 
●11:30~14:00LO(月~金のみ)、18:00~22:00LO 
●日休 
●http://missago.com

本記事は雑誌料理王国207号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は207号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


SNSでフォローする