今や飲食店にとっての集客チャネルは無数にある。食べログ、ぐるなび、Rettyと言ったグルメメディアだけでなく、Twitter、Facebook、InstagramなどのSNSを活用して顧客との接点を作る飲食店も多い。それらのメディアは画像と文章を中心としながらも、昨今はInstagramのストーリーのように短時間の動画にも対応している。より若い世代が使うTikTokも15秒という短いフォーマットの中で、いかに人々の興味を惹きつけるかに特化している。
基本的に、各飲食店は自らの得意とするフォーマットのSNSを伸ばしていく。有名どころの飲食店経営者や料理人でSNSを活用していない人はいないだろう。
例を挙げると、吉祥寺「肉山」のオーナー光山英明氏は、Facebookを活用した店主の先駆けの一人。今や多くの店主や料理人が行っているキャンセル情報をFacebook上に流し、お客さんを募集する手法を真っ先に行っていた。さらに、直近では有料noteも始め、積極的な情報発信を行っている。
Instagramだと「ドヤ顔」で握った寿司を出す様子をSNSで投稿する「照寿司」の渡邉 貴義氏も「すきやばし次郎」の小野二郎氏に次いで、世界でも最も知名度のある寿司職人の一人と言っていい。
シェフによってそれぞれ注力しているSNSがある。
それではYoutubeはどうだろうか?今更に聞こえるかもしれないが、筆者は料理人が真剣にYoutubeに取り組むことに、まだ十分に価値があるのではないかと考えている。
各種SNSはどちらかというとキャッチーな写真と文章、そして短い動画が中心になる。Youtubeの場合はもう少し長い時間の動画コンテンツになる。伝えたい内容の濃さやコンテンツの分量を求めるのであればYoutubeは有力な選択肢になり得る。作った動画コンテンツを上記のSNSで流すこともできるし、良質で手間のかかったコンテンツは蓄積される資産に等しい。積み重ねれば積み重ねるだけ、その価値は増していく可能性を秘めている。
一方で、Youtubeは難しいメディアでもある。コンテンツ決め、動画の撮影から編集と、かかる手間や工数はその他のSNSよりも多い。「オテル・ドゥ・ミクニ」の三國清三シェフ、「Sio」の鳥羽周作シェフをはじめ料理人としてYoutubeに取り組んでいる方達は少なからずいるが、まだそこまで多くない印象だ。強い料理系Youtuberもいるため、コンテンツのクオリティが求められる。どの切り口で、どのレベルのコンテンツを作り込んでいくか。手間も労力もかかる上にセンスも求められるだろう。生半可な気持ちで取り組んでもまず上手くいかない。しかし、だからこそ、そこをやり切る料理人には大きなメリットがもたらされるのではないかと、筆者は考えている。
文=周栄行(しゅうえい あきら)
1990年、大阪生まれ。上海復旦大学、NY大学への留学を経て早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行へ就職。独立後は、 飲食店の経営・プロデュースをはじめとして、ホテル、地方創生など、食を中心に幅広いプロジェクトに関わっている。
大人気YouTubeチャンネルを運営する「オテル・ドゥ・ミクニ」三國清三シェフをはじめ、名店のシェフやYouTuberとして人気のシェフたちの、料理動画の可能性と極意をご紹介します。
【2022年2月号出演シェフ】
オテル・ドゥ・ミクニ/三國清三さん
菊乃井 本店/村田吉弘さん
リストランテ アクアパッツァ/日髙良実さん
菊乃井 本店/村田吉弘さん
リストランテ アクアパッツァ/日髙良実さん
帝国ホテル 東京/杉本 雄さん
ポンテベッキオ/山根大助さん
リストランテ フローリア/小林諭史・シェフロピアさん
城二郎さん
パーク ハイアット 京都 シグネチャーレストラン「八坂」/久岡寛平さん
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