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新型コロナウイルスによって変わる外食 〜日本の外食産業の構造と脆弱性〜


はじめまして。飲食店の経営やプロデュースを中心に活動している、周栄 行(シュウエイ アキラ)と申します。この度、こちらの料理王国Web版にてアフターコロナの外食産業の未来について考える連載を持たせていただくことになりました。

新型コロナウイルスによって社会構造が変化していく今、 特にそのインパクトが大きいのが外食産業です。ここ数ヶ月外出自粛が続いただけで、信じられないほど多くの飲食店が経営存続の危機に陥っていることは、様々な報道を通して皆様も耳にしているところでしょう。通常の営業ができない中で、デリバリーやテイクアウトにシフトして生き残りを図る、というお店もよく目にされていることと思います。

そもそも、なぜここまで外食業界全体が苦しくなってしまうのでしょうか。たかだか1〜2ヶ月売上が落ちたりなくなったりするだけで潰れそうになってしまうのでしょうか。数十年続いた洋食店や老舗の弁当屋の閉店などが連日ワイドショー等で報道されています。その程度で危機に陥るようでは経営がなっていないのではないか、という声も聞こえてきます。しかしながら、ここには日本の外食産業が抱える根本的な、そして構造的な問題があります。

この連載では、まず外食産業においてコロナウイルスの影響がなぜここまで大きいのか、業界全体の構造や状況について解説をして行きたいと思います。業界についての解像度を高めた上で、今何が起きているのか、そしてこれから外食産業がどうなっていくのか、どう変化していくべきなのかについて、数回に渡って考えて 行きたいと思います。

第一回となる今回は、まず基本的な飲食店の収益構造について説明します。

私のnote「なぜコロナウイルスは飲食店を殺すのか」https://note.com/akirashuei/n/nb5cbc88e0418


でも触れているのですが、基本的に外食産業は薄利多売の収益構造です。

日本における外食産業は全体で25兆円、事業者数は60万以上、そして働く人の人数は400万人を超える大きな産業です。しかし、外食の上場企業の営業利益を見ると、営業利益率が10%を超えるのは全体でも3社程度しかありません。ほとんどの会社は営業利益率が2〜4%程度に収まります。もちろん大きな会社はそれだけ本部費用などがかかるのですが、小さな個人店でもそこまで利益率は変わらず、そこそこうまく行っているお店でも10%程度です。

大きなコストとしては「F(食材費)・L(人件費)・R(家賃)」の3つが上げられます。食材費30%、人件費30%、家賃10%くらいが目安と言われています。これらを足し合わせただけでもすでにコストは70%を超えます。そこに、水道光熱費、広告費(グルメサイトへの掲載費など)、その他雑費などがかかってくるので、やはり10%程度しか残りません。

普段から利益率が低いので、当然のことながら内部留保はあまりできません。そして、薄利がゆえに、増収増益を達成しようとすると多く売る、つまり、新規にお店を出すのが一番手っ取り早い選択肢になります。新規出店するためには、手元にそこまでお金がないので当然、借入をすることになります。借入をする以上、返済が発生します。すると、規模が大きくなればなるほど、借金の額も大きく、それに従って返済の額も大きくなります。

もちろん、1店舗だけを経営していても、外出自粛が続く現状は売上が上がらず、日々赤字が続いてかなり厳しい状況でしょうが、今特にダメージを受けているのは、これから拡大して行こうと積極的に借入をして飲食店を展開していた会社やグループでしょう。リスクをとって挑戦をしていたプレーヤーほど、足元のキャッシュフローが逼迫しています。

そしてこれは無利子での借入や、政府や自治体から出るわずかばかりの補助金、そして向いていない店舗構造で無理矢理行うデリバリーやテイクアウトで根本的に解決できるレベルではないのです。

今起きているのは、外食産業にとって致命的で残酷な変化です。もちろん、外食に携わる人たちは、生き延びるためにこの変化に対応していかねばなりません。

一方で、お客の側も外食に関して意識を変化させていかねばならない局面である、私は考えています。

そもそも、どうしてここまで日本の外食産業は厳しいビジネスモデルになっていたのでしょうか。これまでも飲食店は3年で10%しか生き残らないと言われてきました。10年以上生き延びる飲食店になると1%程度だと言われています。

一方で、皆様も海外旅行に行って、「海外はなんでこんなに食事が高いんだろう」、「やっぱり日本の食が一番安くて美味しい」と感じたことがあると思います。どうして日本の食はこんなにクオリティが高いにも関わらずこんなに安く食べられるのでしょうか。

次回は、日本の外食産業がなぜこのようになっているのかについて、詳しく説明して行きたいと思います。


文=周栄行(しゅうえい あきら)

1990年、大阪生まれ。上海復旦大学、NY大学への留学を経て早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行へ就職。独立後は、 飲食店の経営・プロデュースをはじめとして、ホテル、地方創生など、食を中心に幅広いプロジェクトに関わっている。


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