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【新型コロナウイルス特別企画】飲食店と不動産オーナーの新しい関係性、あるいはその可能性について


コロナ禍による飲食店の変化について考える記事シリーズ、第3回目となる今回は、飲食店と不動産オーナーとの新しい関係性の変化、そして今後有り得るかもしれない可能性について、考察していきたいと思います。

前回の記事はこちらから

前回の記事でも触れたように、今回のコロナ禍によって、もともとビジネスモデル上で脆弱性を抱えていた飲食店の倒産が相次いでいます。店舗譲渡・売買系のサイトを見ても、これまでなかなか出てこなかったようなエリアの物件が、信じられないほど安い金額で売りに出ています。どんどん倒産して増え続ける物件の供給に対して、現時点で出店する資金体力のあるプレーヤーがほとんどいないため需要がなく、なかなか成立しません。今現在(2020年5月末日時点)起きている倒産は4月までのダメージによるものがほとんどで、5月のダメージが顕在化するのは6月後半になります。全国的に緊急事態宣言が解除されてはいますが、東京をはじめとして本格的に飲食店の売り上げが回復するまではまだまだ時間がかかると見ています。すでにコロナ禍からの復興フェーズに入っている台湾などを見ても、夜にお酒を出すような居酒屋業態をはじめとした外食の回復スピードは遅く、平時の3〜5割にとどまっているところが多いようです。日本においては、6月〜7月にかけて、これまでをギリギリ乗り越えた飲食店が回復し切らない需要によって耐えきれなくなる例も相次ぐでしょう。

この状況下で、家賃減免を求める声も外食経営者から相次いでいます。これに対する不動産オーナー/大家側の反応はまちまちで、個人系オーナーの一部は即座に家賃減免に応じる場合も稀にあるようですが、大手デベロッパー系はやや動きが遅く、ようやく多少の賃料減免に応じる場合が出てきてはいますが、全体としてそこまでドラスティックな対応がなされている印象はありません。政府の家賃保証額(一律一社600万円・記事執筆時点)に関して、複数店舗の外食を経営する業界団体の要望によって、麻生副総理を会長とする多店舗展開型飲食店議員連盟が立ち上がり、政府に対して積極的な提言をする動きも出てきました。

ネットで不動産クラスターの方々の声を見ている限りでは、飲食店の大家側はこうした賃料減免の動きに対して冷ややかです。それも当然で、不動産大家側にも不動産購入にあたって借入をした分の返済や、固定資産税などをはじめとしたキャッシュフロー上の損益分岐点があり、そう簡単に応じることができない事情があります。そうしたお互いの噛み合わない事情により、飲食店経営側と大家側で断絶が起きている印象があります。

これに関して、私は不動産オーナー(大家)側と飲食店(店子)側の関係性が一部で変化して行くのではないかと考えています。

これまで家賃は飲食店側の立場から見れば固定費でした。これが変動費化する可能性があるのではないか、と見ています。

関西などのごく一部の地域では実はすでにこうした方式をとっている場合があるのですが、家賃が固定費なしの完全変動性となっている契約パターンがあります。

大手商業施設などでは、最低保証額を設定した上で、一定額を超えた分には家賃歩合を設定している場合が多いのですが、そうではなく完全に変動化する契約形態が増えるのではないか、ということです。

今回のコロナ禍の影響はまだまだこれから現れてくると考えています。そうした状況下で、いまは「どうせ今のテナントが出て行っても場所がいいからすぐ埋まるだろう」、と考えている不動産オーナー側の思惑が外れることになると見ています。すなわち、飲食店の撤退が相次いでも、すぐに新規店舗を開業するプレーヤーが現れず、中長期でも全体の飲食店数が減ることで多くの場所でテナントが埋まらなくなるという未来がくる可能性が高いということです。

そうなった場合、不動産価格や賃料は当然下落していきます。オフィスを引き払うテック系のスタートアップなどもすでに増えて行く中で、大手企業でもオフィスを縮小する流れは加速して行くでしょう。ビルのテナントを埋めることはますます難しくなって行くはずです。

そうした中で、飲食店と大家がリスクもメリットも共有するような、先に述べた変動家賃の契約形態が増えてくる可能性はあると思っています。景気が良い時は高い賃料が入り、今回のような危機的状況下ではお互いに耐え忍ぶ。結果的に倒産が防がれることによってテナントの入れ替わりが避けられ、大家側はテナントが空いてしまう機会損失を防ぐことにもつながります。お互いにリスクをヘッジし合い、なおかつ大きく利益がでる局面ではその利益を共有する、そんな関係性を持った契約は、中長期でみれば大家・店子の双方にメリット出てくると考えます。

大家側はより良質なコンテンツを提供する飲食店を欲しがることになり、飲食業界全体でも差別化とレベルアップにつながるのではないでしょうか。

これはあくまで一例ですが、景気の上下をともに耐え抜いて行く関係性が生まれていけばいいのではないかと私は考えています。

さて、次回の記事は、今後の外食産業が向かって行くであろう方向性、生き残りやすい業種業態についてのお話をしたいと思います。


文=周栄行(しゅうえい あきら) 1990年、大阪生まれ。上海復旦大学、NY大学への留学を経て早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行へ就職。独立後は、 飲食店の経営・プロデュースをはじめとして、ホテル、地方創生など、食を中心に幅広いプロジェクトに関わっている。


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