食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」

人気の理由はここにある。こだわりが詰まったエンターテインメントレストラン4選

ガストロノミー ジョエル・ロブション

情報化社会により、一般の人びとの発信力や影響力はどんどん強くなっている。そのお店を利用した人が、第三者にもっとも伝えたいことは「楽しかった」という経験だ。 それは、ただ料理が「おいしい」だけでは勝負できない時代がきていることを表す。 訪れた人の記憶に残る エンターテインメント性の高い店は、必ず「誰かに紹介したい」という欲求につながる。 空間の演出方法、料理の見せ方、そして一風変わったコンセプトの打ち出しなど、独自のエンターテインメント性をもつ4つの店を紹介する。

店は生きもの。最初から100%は目指さない

内装にこだわる
「サローネ トウキョウ」(東京・日比谷)

サローネグループを展開する「有限会社ジュン・アンド・タン」の代表取締役、平高行さん。6店舗ものレストランの立ち上げに携わったプロが語る、店づくりの極意とは?

サローネグループ代表 平高行さん
平 高行
1973年東京都生まれ。国内外で料理人として修業を積んだのち、1998年にグループ1号店をオープン。現在は横浜の「SALONE2007」など6店舗を経営する会社の代表取締役を務める。

自ら内装を手がけることも店づくりは開業後も続く

東京、横浜、大阪でイタリアンレストランを展開するサローネグループが今年3月、「東京ミッドタウン日比谷」に「サローネトウキョウ」をオープンした。オーナーの平高行さんは、料理やサービスはもちろん、食事中の会話や目にする情景など、トータルでお客さまに楽しんでもらうのがレストランの提供するエンターテイメントだと考え、店づくりに携わる。
過去には壁塗りや天井の組み立てなどを自らDIYで手がけたことも。日比谷店では業者との金額交渉から内装のデザイン、器選びまで徹底的に関わった。さまざまな経験を経て、これから独立する人へアドバイスを贈る。「最初から完璧な店づくりを目指すとコストが重くのしかかります。そのしわ寄せは最終的にお客さまにいくことも。欲しいものは、開業して稼いでから揃えれば大丈夫。店はどんどん変化していくものだから」

サローネ トウキョウ
「ないものは作る」をモットーに、友人である鉄工アーティストとともに製作した小物がテーブルを華やかに 演出する。エントランスの陶製のクワガタのオブジェも、お客さまとの会話の糸口をつくる大事なツール。
ウズラのガランティーナ パンフォルテの香り
ウズラのガランティーナ パンフォルテの香り
フォアグラにパンフォルテを加えたペーストを、ウズラで巻いた温前菜。自家製で乾燥させたデラウェアを添えて。料理はグループ各店で活躍してきた、高見博史さんと永島義国さんのダブルシェフが担当する。

内装へのこだわり
原点回帰の意味を込めあえてクラシカルな空間に
「ヨーロッパのグランメゾンのように何十年経っても風化しない、格式のある店に」というテーマのもと、内装はゴールドを多用し、高級感を演出。グループの基本カラーであるロイヤルブルーの絨毯は、店に重厚感をもたらす。窓からは隣接する日比谷公園の緑が眺められ、贅沢な時間が過ごせる。

サローネ トウキョウ 東京日比谷

サローネ トウキョウ
東京都千代田区有楽町1-1-2
東京ミッドタウン日比谷 3F 316
03-6257-3017
● 12:00~15:00(13:00LO) 18:00~22:30(20:00LO)
● 日、第1・3の月休
● コース 昼6000円~、夜15000円(サ別)
● 42席
http://salone.tokyo

斉田麻理子=取材、文土岐節子=撮影


時の流れを忘れる絵画のような建築美

空間にこだわる
「シャトーレストラン ジョエル・ロブション」(東京・恵比寿)

ガストロノミー ジョエル・ロブション

フランスにいるような
空間提案で来訪者を魅了時の流れを忘れる絵

1994年の開業から24年。いまだ色あせることなく、東京・恵比寿の地で存在感を放ち続ける「シャトーレストラン ジョエル・ロブション」。ジョエル・ロブションさんの想いを、日本にいながら感じられるのは、料理やサービスに限ったことではない。非日常を体験させる空間もまた、一生の思い出に残る要素のひとつとなっている。
まるでフランスにいるような感覚にさせるのは、建築様式やマテリアルに秘密がある。壁に使用するライムストーンは、ロブションさんの故郷、フランス・ショビニで産出されたもの。窓枠や扉はルーブル美術館の補修工事を手掛けた業者に依頼し、パーツを日本で組み立てている。どの客席、空間を切り取っても、まるで絵画のような美しさでお客さまを魅了する。一方で、客席から見えない部分にもロブションさんのこだわりが。厨房には窓を設け、閉鎖的なイメージを排除。その日の気候を見て料理を調整できるようにとの配慮がなされている。またアイランドキッチンを採用し、料理人同士が顔を合わせて調理できる環境も、働く人のことを考えての設計だ。
18年8月6日、惜しくも逝去されたロブションさんだが、彼の思想が息づく空間はこの先も変わらずお客さまの心を動かすに違いない。

ガストロノミー ジョエル・ロブション
ロブションのテーマカラーにもなっている赤と黒でまとめた「ルージュバー」。ブラックスワロフスキーのシャンデリアや、クロコダイルの皮を使ったキャンドル台など、大人のための“色気” のある空間に。
ガストロノミー ジョエル・ロブション
3階個室の「エルミタージュ」。3室のなかでもっとも窓が多い個室で、花の絵画が飾られている。

空間へのこだわり
フランス文化を伝える建築
古城のような建物で、フランス文化を伝えたいという想いを表現。1階のラベンダーカラー、2階のシャンパンゴールドなどのカラーリングも印象的だ。2004年のリニューアル時に内装を手掛けたのは森田恭道さん。以前の趣を残しつつ、より洗練されたデザインに変わった。とくにエントランスから2階へ続く螺旋階段は、席に着くまでの期待感を高める役割を果たす。

ガストロノミー ジョエル・ロブション

ガストロノミー ジョエル・ロブション
東京都目黒区三田1-13-1恵比寿ガーデンプレイス内シャトーレストラン
ジョエル・ロブション2F
03-5421-1338または03-5424-1347
● 12:00~16:00(14:00LO、土日祝のみ)、 18:00~24:00(21:00LO)
● 休みは施設に準ずる
● コース 昼12000円~、夜24000円~
● 40席

虻川実花=取材、文 林 輝彦=撮影


常連さんからよく言われる
「地味な一流でいてほしい。派手な三流じゃなく」ってね

器にこだわる
「新宿割烹 中嶋」(東京・新宿)

新宿割烹中嶋 中嶋貞治さん
現在、北大路魯山人作の器は使用していないが、要望があれば現物を見ることもできる。陶芸家・高野榮太郎さんや松林玄衛さんなど、現代作家による器をはじめ、普段使いできる有田焼なども使用する。

「見る料理」といわれる日本料理。料理の印象を大きく変える“器と料理の関係”について、「新宿割烹中嶋」の中嶋貞治さんが提供するひと品から読み解く。

新宿割烹中嶋 中嶋貞治さん
Sadaharu Nakajima
1956年東京都生まれ。京都で修業ののち、1980年に「新宿割烹 中嶋」の店主に就任。ハイアットリージェンシー東京の「佳香」「みやこ」の調理顧問、一般社団法人シェフードの特別会員。

四季を捉えた料理を引き立てる器の使い手

芸術家だけでなく美食家として名を馳せた北大路魯山人主宰の「星岡茶寮」の初代料理長を務めた、中嶋貞治郎さんを祖父に持つ中嶋貞治さん。現在は、父・中嶋貞三さんが分家独立した「新宿割烹中嶋」の二代目として店に立ち、四季を捉えた料理で新旧のお客さまの心をつかんでいる。
「最近では魯山人に興味を持って来る人もだいぶ減り、僕の料理を求めて来店していただけるようになりました」自らの足で毎朝築地に出向き、目利きで選んだ旬の食材に手を加える。近年ではオリーブオイルやバルサミコ酢などの洋調味料も取り入れ、時代に即した進化を遂げているのも特徴。常連客を魅了するのは、料理の味わいだけではない。料理と器の共演による、目で楽しむ一品。それが同店で過ごすひとときを、忘れがたいものにしてくれる。
器は素材、形、重さ、質感など多様。普段使いの器も使いますし、作家が手づくりした品も取り入れ、料理に彩りを添えるようにしています」常連客の「地味な一流でいてほしい」とは、素材の選び方と技術一本で勝負する、飾らない中嶋さんの料理に敬意をこめた言葉。派手な“ショー”こそないが、日本の粋、奥ゆかしいエンターテイメントがここにある。

器へのこだわり
器と盛りつけの気配りが和の心
料理の彩りと器の色、余白のバランスにより、目で楽しむひと品を表現。白い器は爽やかな、赤や黄は温かみのある印象を与えるため、料理の温度や使う素材で合わせる器を考えるとよい。また余白の表現は季節で異なり、夏は料理6に対し余白4、冬は7対3がよいとされる。

新宿割烹 中嶋

新宿割烹 中嶋
東京都新宿区新宿3-32-5 日原ビルB1F
03-3356-4534
● 11:30~14:00(コース13:30LO、定食13:45LO)、17:30~21:30(20:00LO)
● 日、祝休
● コース 昼5000円~、夜8000円~
● 32席
www.shinjyuku-nakajima.com

虻川実花=取材、文 林 輝彦=撮影


シェフそれぞれの特色をエッセンスに加え”今だけ”の料理を提供する

コンセプトにこだわる
「龍眉虎ノ尾」(東京・広尾)

店に立つシェフが定期的に入れ替わり、中国料理のコースを提供する。
こうしたありそうでなかったコンセプトで話題を集めるのが、東京・広尾にある「龍眉虎ノ尾」だ。

龍眉虎ノ尾 龍眉虎ノ尾二代目料理長 長谷川哲男さん 龍眉虎ノ尾三代目料理長 岡田三郎さん
(右)龍眉虎ノ尾二代目料理長 長谷川哲男さん
高校卒業後、虎ノ門パストラルの中国料理店で修業。ホテルの四川料理店やフカヒレ専門店でそれぞれ料理長を務め、2013 年際コーポレーション入社。現「虎萬元 南青山」料理長。
(左) 龍眉虎ノ尾三代目料理長 岡田三郎さん
高校卒業後、ホテルの和食部門に就職。和食料理人として経験を積み、1997 年に際コーポレーションに入社。2010 年「虎萬元 南青山」を経て、現職。薬膳調理指導員の資格を持つ。

日本の四季を追いかけるコース料理を提案

「紅虎餃子房」や「胡同マンダリン」などの中国料理店を展開する際コーポレーション㈱。同社が抱えるトップシェフが入れ替わりで厨房に立つ、そんなユニークなシステムを採用するのが、東京・広尾にある「龍眉虎ノ尾」だ。これまで船倉卓磨さんが3カ月間、長谷川哲男さんが1年間、それぞれシェフを務め、18年8月より岡田三郎さんが3代目シェフに就任した。
料理は日本の四季食材と本場中国の食材を用い、旬を身体に取り入れる自然な食を提案。この柱はブラさず、各シェフの得意料理や思想をエッセンスとして加えたコース料理を提供する。たとえば船倉さんは懐石料理を彷彿とさせる八寸や、火鍋などの豪快な中華料理でコースを構成。一方の長谷川さんは、自身が得意とするフカヒレ料理や牛肉を取り入れていた。
これまでのコース価格は1万5000円だったが、岡田さんに代わったタイミングで価格とメニュー構成を大きく変更。コース価格を5800円まで落とし、アラカルトも用意することで、お客さまが好きなようにコースをアレンジできるプレゼンテーションを行う。岡田さんは「薬膳の考え方を取り入れ、中国の家庭料理での構成を考えている」といい、自分らしい料理を取り入れていきたいと話した。

  • 龍眉虎ノ尾 沸騰海鰻(ハモの辛油がけ)
  • 龍眉虎ノ尾 茉莉花豆角(インゲンと銀杏、ジャスミンの蕾炒め)
  • 龍眉虎ノ尾 羊肉麺(ヤンローメン)
  • 龍眉虎ノ尾 大排翅(フカヒレの姿煮)
  • 龍眉虎ノ尾 八寸

コンセプトへのこだわり
際コーポレーションの集大成
際コーポレーションで抱えるトップシェフが、入れ替わりで厨房に立ち、日本の旬食材を使った中国料理を提案。「龍眉虎ノ尾」のコンセプトは、数々のヒット店を生み出した同グループだからこそ形にできたといえる。料理の柱は代表取締役の中島武さんが考案。そこに各シェフの技術や思想を取り入れた料理を提案する。

龍眉虎ノ尾

龍眉虎ノ尾
東京都港区西麻布4-2-10
03-3486-5560
● 11:30~15:00,18:00~23:00
● 日祝休
● 平均予算 昼1000円~,コース 夜5800円~
● 32席
https://kiwa-group.co.jp/ryubitoranoo

虻川実花=取材、文 林 輝彦=撮影

本記事は雑誌料理王国2018年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2018年10月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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