本記事は、5月7日(木)発売の料理王国6・7月合併号緊急特集「コロナ時代の食の世界で新しい「ものさし」を探しに。」に掲載中の記事から、現在の状況を鑑みて特別に公開するものです。
大学や中小企業のオフィスが並ぶ大通りを一本入ると、住宅街が広がる文京区白山。「イタリアンバール ミラン」は、都営三田線白山駅すぐの場所でナチュラルワインとイタリアンを提供している。本田健吉さんが料理を作り、妻の真奈美さんがワインを選びサービスをする。店内18席、テラス8席というアットホームな雰囲気だ。
「大人数の宴会使いはないお店なので、3月末までコロナの影響は全くなかった」と真奈美さん。「ただ何も影響ないというわけはないだろうと、2月27日に定期預金を解約して、すぐに使えるお金を用意しました。70万円と少額ではありましたが、少しずつ備えを始めていました」
東京都が週末自粛を要請してから二日後の3月27日、経営方針として2つのことを決めた。平日テイクアウトとランチの提供だ。並行して、日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」への申請を用意。税理士に相談し、過去2期分の決算書と申し込み用紙を送ってもらった。「(公庫には)すでに借入があったので、申し込みもスムーズでした。私が書いたのは、1枚の紙に数か所、借りたい金額と借りる期限などの記入欄だけです。4月3日に借入書類を郵送すると、6日に確認の電話がありました」。そのほか、文京区の緊急融資あっせん制度も検討したが、その後に東京都の「感染拡大防止協力金」など、給付金支給のめどが見えてきたため、追加融資なしと決断した。
「実は日本政策公庫から借りていた200万円の返済が今年中に終わる予定でした。完済したら、予備資金としてまた200万円の融資を申し込もうと思っていたので、少し余裕を持たせて250万円を借り入れました。たとえ臨時休業で売り上げがゼロでもしばらくは大丈夫な金額を確保しつつ、返済時に苦しくならないよう手堅くコンパクトに借りました」
テイクアウトを始めるにあたって、現在入っている保険にテイクアウトも適用できるPL保険を特約でつけた。「月々換算でプラス500円。安心材料にもなった」と話す。
テイクアウトと平日ランチを始めたら意外な反応があった。常連客が近所の仲間に宣伝してくれ、ランチにも新規顧客が入ってきた。コロナ前に日商13~20万円だった同店は現在およそ5割減で維持している。「アルバイトしてくれていた大学生も就職し、ちょうど夫婦二人になったところでした。飲料の仕入れがないので、減収しても手元に生活できるくらいは残る。営業時間を短縮したことで、子供といる時間も睡眠時間も増えたのはよかった。人として生きるにはありがたい時間です」。
この時期だからこそできること、として始めたのが、健吉さんのかねてからの夢だったハンバーガー屋だ。曜日限定で提供して地域でのニーズを探る。
ほんだ・けんきち
イタリアンバール ミラン代表。1973年、埼玉県生まれ。株式会社アルカに就職し、ハンバーガー店やイタリア料理店まで、数々の店長・新店舗立ち上げを手がける。2009年末に独立し、2010年5月「イタリアンバール ミラン」をオープン。2018年に法人化。
ほんだ・まなみ
1980年、新潟県生まれ。品川プリンスホテル、野村證券勤務を経て、結婚・出産を機に同店のサービスに。東京のワインショップ「銀座カーヴ・フジキ」でも販売員として勤務している。
イタリアンバール ミラン
東京都文京区白山5-36-6 石上ビル 1F
03-3812-4888
ランチ 11:30 ~14:00
テイクアウト 11:00 ~19:00
ディナーはテイクアウトのみの営業水休
text 柿本礼子
本記事は料理王国2020年6・7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2020年6・7月号当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。