【新型コロナウイルス特別企画】新型コロナウイルス感染症。その時、日本の飲食店はどう動いた? 「クリスチアノ」佐藤幸二さんの場合


本記事は、5月7日(木)発売の料理王国6・7月合併号緊急特集「コロナ時代の食の世界で新しい「ものさし」を探しに。」に掲載中の記事から、現在の状況を鑑みて特別に公開するものです。

□融資を受ける

ピンチをチャンスに
アフターコロナを見据えた融資&事業展開を

「リーマンショック、東日本大震災と10年に一度、大きな動きがある。今回は早めに備えました」と話すのは、「クリスチアノ」や「お惣菜の煎餅もんじゃさとう」などを運営する佐藤幸二さん。アフリカ豚熱(アフリカ豚コレラ)が中国で猛威を振るい、武漢でコロナが拡大していく様を見て、2月中旬から行動を起こした。

 まず手を付けたのは試算表だ。「融資の申請には3か月以内の決算書と直近の試算表が必要だと経験から知っていたため、すぐに動けるよう書類を用意しました」。 3月初旬には「セーフティネット4号」の申請をし、4月初旬には認定が下りたという。これは無担保で借入ができる制度で、借入先は自分で選ぶ。「新しい銀行との取引を始める機会でもある。いくつかの銀行に相談し、金利が低い銀行と交渉して決めました」。

 借入金額については「会社の規模と売り上げを示して最大値を借りた」と佐藤さん。「通常は、直近売上の3か月分が借入上限と聞き、現状からなるべく多めに借りられればと申請を出しました。申請タイミングが早かったこともあり、希望通りの金額を借りることができました」。

 こうした非常事態では、後から補助金や給付金が出る。それも過去2回の非常事態から経験済みだ。「早いタイミングで資金を確保できたことで、存続不可能な事態は避けられたと思います」。

 4月1日には「マル・デ・クリスチアノ」を臨時休業し、「クリスチアノ」のテイクアウト&デリバリーを開始。「惣菜と煎餅もんじゃさとう」で惣菜の経験を積み、本格的にデリバリー事業への参入を考えていた佐藤さんにとって、ある意味ピンチをチャンスにする機会になりそうだ。

スタッフからのアイデアでテイクアウトは日々ブラッシュアップを図れている。容器に料理名のシールを貼るようになったのもスタッフの声から。

「食のシーンが大きく変わる可能性がある中、テイクアウトやデリバリーを一時的に行うのではなく、事業の一つの柱として育てていきたい」
 ピザのデリバリーで2年間働いた過去の経験が生きた。「ゼンリン」で正確な地図を購入し、ポスティングエリアをスタッフで共有した。スタッフが自らポスティングすることで、店の価格帯とマッチする家に無駄なく届けることができている。一時は9割減だった売上も、テイクアウトとデリバリーで通常の7 ~8割の売上まで戻ってきたと話す。

「収束後も世界的な不況が来るだろうし、厳しい状況に変わりはない。今は貯蓄を意識し、自治体のサイトをこまめにチェックし、実務的な話は色々な人から聞くようにしています。飲食業界は、この経験を乗り越えたら本当に強くなると信じています」

4月1日からテイクアウトを実施。店内の100以上あるメニューを1週間で絞り込み、 4月16日にはポスティング用のメニューを作り上げた。料理数はデザートを含め34品。

さとう・こうじ
株式会社キュウプロジェクト代表取締役。1974年、埼玉県生まれ。ANAホテル&リゾーツでキャリアをスタート。その後、イタリア、フランス、イギリス、タイなどで多彩な国の料理を学ぶ。帰国後は店舗デザインや経営も身につけ、2007年に自身の会社である株式会社キュウプロジェクトを設立。2010年12月にポルトガル料理店「クリスチアノ」をオープン。現在は「お惣菜と煎餅もんじゃさとう」など直営4店舗、「ポークビンダルー食べる副大統領」など提携店舗3店舗の計7店舗を運営している。

ポルトガル料理 「クリスチアノ」
東京都渋谷区富ヶ谷1-51-10プリティパインビル1F
テイクアウト&デリバリー 予約 10:30~ 受け取り 12:00~21:00
ディナー 18:00 ~22:00(21:00 LO)
http://www.cristianos.jp/access/


text 柿本礼子

本記事は料理王国2020年6・7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2020年6・7月号当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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