モスコミュール発祥の地アメリカでは、ショウガを発酵させた自然発泡の清涼飲料水「ジンジャービア」でウォッカを割り、銅のカップで飲む。大阪市西区の「バー・ツバメ」の金子歩さんは、モスコミュールに個性を出そうと、ショウガをぎっしり漬け込んだ自家製生姜ウォッカを作った。ショウガだけでは物足りないので、タカノツメ4〜5本、叩いて潰したピンクペッパー粒ほどを一緒に漬けて4〜5日おく。土ショウガを用いるのは、しっかり香りを引き出すためだ。
金子さんの出身地は、金物産業で知られる新潟県燕市。洋食器の生産は質、量ともに日本屈指の地だ。故郷の銅器を活かすために考案したのが、このモスコミュールなのだ。レシピは生姜ウォッカを40cc、ショウガと柑橘のリキュールを10cc。ライムを搾り、ジンジャービアで満たしたら、強炭酸水を10ccほど加える。底から静かにステアして、先ほどのライムをのせれば完成だ。甘さはほとんどなく、豊かなショウガの香りとさわやかな飲み口の後に、ピリッとペッパーの辛みが来る。爽快だが尖りのない丸い味わいは、一般的なモスコミュールと別物だ。「一杯目に飲まれる方が多いですが、食後にもおすすめですよ」
なかには生姜ウォッカだけをロックで注文するファンもいるが、カクテルに辛みがあることに慣れていないため、驚く人もいるという。「食事に合わせる醸造酒と違い、カクテルはそれ自体を味わうもの。辛みだけでなく、燻香やスパイスの香りも自由に楽しめるのが魅力です」ちなみに金子さんのブラッディメアリーは、生トマトとタバスコ入り。 クラフトジンには山椒を使ったものもあり、トマトハイにタバスコも定番化しつつある。飲み物で辛みを楽しむ可能性はまだまだありそうだ。
Ayumu Kaneko
1979年、新潟県燕市生まれ。大阪での大学時代にレストランバーでアルバイトを経験し、接客業に興味を持つ。2002年に師匠である早川惠一さんがオープンした「Bar Leigh北新地」に入店。「君が店を出るのは独立するとき」との師の言葉通り、 14年5月に退店。11月「Bar TSUBAME」開業。
Bar TSUBAME
バー・ツバメ
大阪市西区靭本町1-13-7 協和信濃橋ビルB1
06-6479-0717
● 18:00~翌1:00
● 日休、連休の場合は月休、臨時休あり
● 18席
https://ja-jp.facebook.com/bartsubame/
藤田アキ=取材、文 畑中勝如=撮影
本記事は雑誌料理王国2019年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2019年7月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。