Ristorante HONDA(リストランテホンダ)/本多哲也
師匠「リストランテ アルポルト」 片岡護
「ミラノで修業していた時、知人を通じて片岡護シェフから打診をいただいたのです」と懐かしそうに語る本多哲也シェフ。片岡シェフの懐石風小皿料理という独自のイタリア料理のスタイルに、自身が積み重ねてきた料理と違った魅力を感じた。
帰国後「リストランテ アルポルト」に入ってからは、第一線を走る片岡シェフの考え方を吸収しようと、テレビ局、撮影現場、地方でのフェアなど休日でもとにかくついていった。5年半の間に20冊を超える料理本に携わり、雑誌の取材にも立ち合い、ほぼ毎日が撮影だった。その間、生産者にもたくさん会う機会に恵まれ、その縁が今も続いている。
今回、無数にある師匠の料理から「修業時代のこの味」として選んだのが「冷製カペッリーニ ガスパチョ仕立て、毛ガニ添え」だった。
「僕がミラノにいた90年代後半は、冷製パスタはおそらく1軒位しか提供していなくて、イタリアではまず見かけなかったですね。ケッカとかティエド(熱々でなく生温かい)はありましたが。ガスパチョ仕立ては片岡シェフが初めてではないでしょうか」
片岡シェフの下で修業を始めて数カ月で初夏を迎え、初めて作った冷製パスタだったので強く印象に残っているという。ガスパチョの野菜のうま味に毛ガニの甘味を足した構成だ。これは今でもアレンジして提供している。
「僕のレシピではトマトジュースの代わりにトマトのクーリにして、リーペンソースやタバスコを使わず、もっと野菜が主張するようにしています。当時よりも野菜が格段に美味しくなっていますから」
4月後半からフルーツトマトのカペッリーニを提供し、初夏を迎えると、このガスパチョのカペッリーニが登場する。師が生み出したレシピは、骨格は変えずに細部を時代に合わせた味わいにしている。
材料(10人前)
キュウリ4本
セロリ2本
タマネギ1/2個
完熟トマト3個
ニンジン2cm
緑ピーマン2個
赤パプリカ1/3個
<A>
[ニンニク1片、トマトジュース 800ml、白ワインビネガー60ml、E.V.オリーブ油大さじ4、バルサミコ酢 小さじ1、タバスコ数滴、リーペリンソース数滴、グラニュー糖15g、塩・コショウ適量]
毛ガニ25g(1人前)
カペッリーニ25 g(1人前)
<飾り用野菜>
タマネギ、ニンジン、セロリ、ズッキーニ、キュウリ、赤・黄パプリカ、アサツキ各適量
作り方
1. 野菜すべてをひと口大に切り、容器に入れてAすべてを加えて混ぜる。
2. 12時間マリネしたらミキサーにかけ、液状になったもののうち1/2量をさらに裏ごし器で濾し、残りの1/2量と合わせて冷蔵庫で冷やしておく。
3. 飾り用野菜(タマネギ、ニンジン、セロリ、ズッキーニ、キュウリ、赤・黄パプリカ)を5mm角に切り、歯ごたえが残る程度に茹でる。
4. カペッリーニを塩湯で2分ほど茹でる(カペッリーニは細いので、あまり早くかき混ぜないようにする)。茹で上がったらボウルに張った氷水にとって冷ます。パスタが完全に冷えたらザルに上げて水気をよく切る。
5. 4のカペッリーニに軽く塩(分量外)を振る。
6. 2を人数分の分量のみボウルに取り、5のカペッリーニを入れよく合わせる。塩・レモン汁、E.V.オリーブ油(各分量外)で味を調えて皿に盛る。
7. 6の上に3をのせて、さらに毛ガニをのせる。小口切りにしたアサツキをふる。
text 飯島千代子 photo 長瀬ゆかり
本記事は雑誌料理王国2020年8・9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年8・9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。