Q. 「指導」と「パワハラ」の境界線は?
カジュアルなフランス料理店のシェフです。どのスタッフにも、食材の扱い方から普段の生活態度まで、きちんと指導したいと考えており、暴力はふるいませんが、時に厳しく叱咤することもあります。しかし、スタッフがパワハラを受けたと言っています。指導とパワハラの区別は何なのでしょうか。また指導の際に気をつける点があれば教えてください。
(30代 フランス料理店)
A. 法的な線引きは難しい。よく話し合って信頼関係を築くべき
最近、「パワハラ」という言葉がそこかしこで聞かれます。そのためなのか、お店が安易に「パワハラだ」と糾弾されることもあるようです「。パワハラ」という言葉は、法律上、細かく定義されているものではありません。だからこそ、指導とパワハラの区別は簡単ではありません。
現実問題として、もちろん、手を上げるのは一発でアウトです。口頭での注意も、度が過ぎれば違法と判断されることもあります。たとえば、「死ね」「クズ」など、誰が聞いても明らかに否定的な表現を使ったり、業務とは関係ない私生活や家族をおとしめるような発言は、避けた方がよいでしょう。
一対一だと、お互いに逃げ場がなくなるうえ、誤解が生じた場合に取り返しがつかなくなりますから、厳しく指導する際は、第三者を立ち会わせた方がよいと思います。
いずれにしても、厳しい指導が良い指導というわけではありません。相手によって、叱咤するのか、ほめるのか、ベストな指導方法は異なります。重要なのは、相手をしっかりと見てあげることです。ぜひ愛情をもって従業員との信頼関係を築いてください。
飲食店専門弁護士 石﨑冬貴
1984年、東京都生まれ。神奈川県弁護士会会員。横浜パートナー法律事務所所属。飲食店法務を専門的に取り扱うほぼ唯一の弁護士。著書に『なぜ、飲食店は一年でつぶれるのか?』(旭屋出版、2018年)がある。
本記事は雑誌料理王国2018年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2018年11月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。