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トップシェフが通う「とんかつ」都内の名店5選


渾身の「3度揚げ」に感動!
東京・蔵前「すぎ田」のヒレかつ

通う人
ローブリュー

櫻井信一郎さん
ウチの店の常連さんに「絶対おいしい」と勧められて行ったら、揚げ方、仕事の熱心さ、店の清潔さすべてに感動。厚みがある肉の旨さを引き出す絶妙な火入れと、薄くきめ細かな衣も素晴らしくてペロリと食べられた。次は家族みんなで行きます。

 カウンターの奥には美しく磨き揚げられた赤銅の鍋がふたつ。「火入れがウチのすべて」という店主の佐藤光朗さんは、まず170度の油で約1分半、次に120~130度の低温の油に移してじっくりと約分。最後はまた高温の油に戻す絶妙な「3度揚げ」で、しっとりと軽い口当たりのとんかつに仕上げる。 

 豚肉は「とんかつにしておいしいかどうか」を基準に選んだ千葉県産。肉の旨味をストレートに伝えたいから、約3センチの厚さにもこだわる。「面倒なようだけど、今はこれがベスト。でもまだまだ研究の余地はあると思います」。38年前に父が始めた浅草の名店「すぎ田」の味を守りつつ、自らもさらに磨きをかけながらファンの期待に応える。

ヒレかつ
千葉県産の厳選した豚ヒレ肉を使用。約20分かけて揚げることで、しっとりとジューシーな味わいに。別注文のご飯は上質な「信州野沢プラチナ越光」を使用。
佐藤光朗さん  Mitsuaki Sato
1980年東京都生まれ。大学時代から、厳しい父のもとで手伝いながら修業。 4 年前に父が他界してからは、店主として夫婦で「すぎ田」の味を守り続ける。

すぎ田
東京都台東区寿3-8-3
03-3844-5529
● 11:30~14:00 17:00~20:30(20:15LO)
● 木休
● 20席

トンカツ好きが年通い続ける本物の味。
東京・銀座「ぎんざ井泉」の黒豚ロースカツ定食

通う人
つきぢ田村
田村 隆さん
トンカツならココと決め、今も月に4回、もう20年近く通っています。しっかりした歯触りなのにやわらかい黒豚ロースは絶品。ピカピカの炊きたてご飯や、しじみ汁など細やかな心遣いもうれしい。

「お箸で切れるやわらかいとんかつ」で、幅広い世代に愛される名店だ。「チャッパという道具で力を入れず肉を叩くことで、やわらかく仕上げています。叩いた肉を元の大きさに戻すのが職人技」と語るのは、39年間店を守る小高昭男さんだ。

 常連が8~9割を占める店では、メンチとコロッケを合わせた「メンコロ定食」など、お客のリクエストから生まれたメニューも多い。なかでも食通をうならせるのが黒豚ロースカツだ。脂の甘味がありながらしつこさを感じないのは、ラードとサラダ油をブレンドした油で揚げているから。「初めてのお客さんが2度めに来てくれた時が一番うれしい」と小高さん。その笑顔ともてなしの精神も、人気の理由に違いない。

黒豚ロースカツ定食
糖分と塩分のバランスがいいパンを使い、店内で8㎜に挽いて2~3日寝かせたパン粉を使用。富山コシヒカリをやわらかめに炊いたご飯や健康を気遣うしじみ汁も人気。
小高昭男さん Akio Odaka
1948年千葉県生まれ。大学卒業後、都内のとんかつ店で修業。1976年に上野本店より暖簾分けされ、弟とふたりで「ぎんざ 井泉」を開業。 2 人前からの出前も評判だ。

ぎんざ 井泉
東京都中央区銀座6-12-15 いちご銀座612ビル2F
03-3561-2329
● 11:00~21:00(20:30LO)
● 日休

常に勢いを感じる個性的なとんかつ。
東京・目黒「とんかつとんき」のロースカツ定食

通う人
モンサンクレール
辻口博啓さん
10年くらい通っているけど、いつ行っても勢いを感じる店。薄い衣と肉汁がしたたるジューシーな感じも好みです。あれだけのお客さんをキビキビとさばく接客も素晴らしい。

 夕方4時の開店とともに次々とお客がなだれ込み、カウンターは分で満席。静かな店内にはトンカツを揚げる油の音が高らかに響き渡る。「衣の味も楽しんで欲しいので、粉と卵を3回繰り返しつけています。パン粉は店で細かく挽いたものを使い、160度の低温で約20分、じっくりと揚げています」と語るのは、76歳になる店主吉原功章さんの甥にあたる吉原出日さんだ。

 薄くきめ細かい衣をまとったカツは、意外なほど軽い。衣、揚げ、盛り付けと完全分業された仕事や、客のタイミングに合わせた接客も「とんき」の真骨頂。「体が動く限り揚げ続ける」という店主とベテラン職人の仕事が、いつの時代も変わらぬ「とんき」の味を支えている。

吉原功輝さん Kouki Yoshihara
1939年新潟県生まれ。 1939年(昭和14)に創業した「とんき」の 2 代目。 76歳になった今も店に立ち、弟や甥、ベテラン職人とともに「とんき」の味を守り続ける。

とんかつ とんき
東京都目黒区下目黒1-1-2
03-3491-9928
● 16:00~22:45LO
● 火・第3月休
● 100席

月に1回は無性に食べたくなる!
東京・銀座「銀座梅林」のヒレカツ定食

通う人
懐食みちば
森川 保さん
店の目の前にあり10年くらい通っていますが、トンカツはここしか食べないほど大好き。いつも食べるのはヒレカツですが、豚肉の質や揚げ具合、ご飯や味噌汁などどれをとっても大満足です。

 銀座初のとんかつ専門店として1927年(昭和2)に創業。昼はカツ丼目当てのサラリーマンが行列をつくるが、一番人気はやはり「元祖ひと口カツ」だ。「上質な生肉を、綿実油などの植物油でじっくりと揚げているので、軽い口当たりが楽しめます」と調理長の都澤芳次郎さん。

 剣立ちの美しさにこだわるパン粉は、糖分を抑えることで豚肉の味を損なわず、焦げ付きを防ぐ特注の12ミリを使用。衣を色良く均一に仕上げるには、卵がついたパン粉をより分け、常にきれいなパン粉を使う気遣いも大切だ。香り豊かな山形米つや姫のご飯や、創業者が考案した甘酸っぱい元祖とんかつソースなど、老舗ならではのこだわりが、本物を求める食通の心を捉え続ける。

ヒレカツ定食
手のひらで優しく卵型に整え、綿実油などの植物油のみを使い180℃で5分。軽い口当たりながら、上質な肉の旨味がしっかりと伝わる贅沢な味わいだ。
都澤芳次郎さん Yoshijiro Miyakozawa
1956年宮城県生まれ。19歳で上京し、都内の洋食店で修業。ホテルニューオータニのとんかつ店を経て、1995年に「梅林」へ。 2013年より調理長に就任。

銀座 梅林
東京都中央区銀座7-8-1
03-3571-0350
● 11:30~20:45LO
● 36席
www.ginzabairin.com

とんかつ激戦区で一番のお気に入り!
東京・目黒「大宝」の特上ロースカツ定食

通う人
ラール・エ・ラ・マニエール
長屋英章さん
母が若い頃行っていたこともあり、4年前から通っています。特上ロースは脂のつきが絶妙で、待ってでも食べたい味。塩で食べるとさらに脂の旨味が引き立ちますよ。

 目黒駅にほど近い権之助坂商店街で約年。「大宝」は、目黒の三大とんかつ店のひとつとして客が絶えない人気店だ。25年前から店を預かる鴇田廣さんは、「体が覚えたやり方だから、温度や時間と言われても人に教えるのは難しい。とんかつが揚げて揚げて、というのを待つだけだよね」と言いながら、客の注文に合わせ次々ととんかつを揚げる。

 豚肉は、茨城や栃木などの北関東産。ふわりとした粗めの丸高パン粉をつけ、しっかりと立つように揚げたとんかつはいかにも食欲をそそる。「菜箸でさわって、カツのご機嫌を伺いながら揚げる、と先輩から教わった」と鴇田さん。ベテランの確かな味と気さくな雰囲気が、今日も多くのファンを招き寄せる。

特上ロースカツ定食
しっかりと立ったパン粉が食欲をそそる特上ロースカツ。長年使う埼玉県の丸高パン粉を、押さえ過ぎないようフワッとつけるのがポイントだ。噛みしめるほどに旨味が増す豚肉は、北関東産を使用している。
鴇田 廣さん Hiroshi Tokita
1948年岩手県生まれ。 36歳で飲食の道へ。25年前に「大宝」に入店。以来、目黒とんかつ御三家と言われる名店の大将として、熟練の技で店を支え続ける。

大宝
東京都目黒区目黒1-6-15
03-3491-9470
● 11:30~14:30 17:30~22:00
● 木・第2水休
● 13席
www.tonkatsu-taihou.jp


小林薫=取材、文 伏木博=撮影

本記事は雑誌料理王国第251号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第251号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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