独立前にCFを活用し、目標金額以上の資金と、店を応援してくれる支援者を獲得した飲食店開業者に、CF活用のメリットを、具体的な活用方法や成功のコツを交えて聞いた。
CONCEPT
クリエイティブな料理を、若い人でも気軽に楽しめるようにと、価格を抑えたコース料理を提供するレストラン。全国を巡って見つけたすぐれた食材を使い、ひと皿のポーションを抑えた多皿コースが特徴だ。ドリンクには国産ワインや日本酒を含めたペアリング、ノンアルコールペアリングを用意する。
「セララバアド」オープンに際し、建物の工期が半年遅れたため、この期間に集客につながる準備はできないかとCFを活用しました。目的は資金集めだけでなく、店のプロモーションと事前集客。
当店は最寄り駅から離れた住宅街という立地ですから、オープンしてすぐに集客できるか不安でした。また僕は元々ホテルシェフだったのですが、ホテルで勤務しているとお客さま個人との密なつながりが、街場のレストランシェフと比べると少ない。そこで、CFを使ってオープン前にファンを獲得しようと考えたのです。ご支援いただいた方で、ある程度席を埋めることができれば、軌道に乗るのではないかと考えました。
オープン後は幸いにも、支援者さま以外の方にも多くご来店いただきました。なかには「CFのページを見て来たいと思っていた」という方もおり、リターン購入以外の宣伝効果も発揮してくれたと思います。
プロジェクトページづくりで意識したのは、ストーリーづくり。集客目的の活用でしたから、リターン内容は来店していただけるよう、おもにコース料理の事前販売にしました。購入を促すためにも、生産者さまの紹介や工事の様子などをアップし、支援者さまと一緒にお店をつくり上げていく感覚にできるページづくりを心掛けました。
また、集まった資金は内装費やテーブル、椅子購入費の不足分に充てることを明記しました。資金をどう使うか、お金の行く先を明らかにすることも大切だと思います。
今振り返ってみると、質問やコメントへのこまめな返信や、感謝のメールを送るなど、支援者さまへの気遣いができれば、もっとよかったかなと思いますね。
CFを活用してよかった点は、改めて言葉として表現することでコンセプトの輪郭がはっきりと見えたこと。料理人は言葉の表現が苦手な人も多いですが、ページを作っていくうちに、頭のなかで描いていただけのビジネスプランやビジョンが、より明確になるのでおすすめです。
Chef 橋本宏一さん
1970年大阪府生まれ。スペインの「エル・ブジ」などを経て、マンダリンオリエンタルホテル東京の「タパスモラキュラーバー」で料理長を務める。 2015年1月に独立。
虻川実花=取材、文 林 輝彦=撮影
本記事は雑誌料理王国292号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は292号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。