おしぼりは、一般的に手や顔を拭くためのもので、よく使われている例として、タオル地の布片を水に浸して絞り、適度に湿らせたものがあります。食事前や食事中などに食卓に置いて手を拭くのに便利なように供したものです。
おしぼりはいつ頃から使われるようになったのでしょうか。またおしぼりの語源は何か、一般的によく使われているおしぼりの素材として布、紙、不織布が使われています。
本記事では、おしぼりの歴史や素材としての布おしぼり、紙おしぼりの違いやそれぞれの特長、シーンに合った選び方、おすすめのおしぼりについて詳しくご紹介します。
諸説ありますがおしぼりの歴史は古く、「古事記」や「源氏物語」が書かれた時代まで遡ると考えられています。「古事記」は712年に書かれた書物で、現存する日本最古の歴史書と言われております。当時から使われていたというのであれば、今から約1300年以上も前からおしぼりがあったことになります。公家が客人を家に招く際に濡れた布を提供して使っていました。
江戸時代になると木綿の手ぬぐいが普及し、旅籠(はたご)という宿屋の玄関に旅人のために水を張った桶と手ぬぐいが用意されるようになり、客は汚れた手足をぬぐう時に使っていました。
周囲が海に囲まれた日本は汗をかきやすい高温多湿の気候です。それに日本人の清潔好きな気質も手伝い、おしぼりが誕生したと考えられています。おしぼりという名は江戸時代に濡らした手ぬぐいをしぼり、汚れた手や足をぬぐった『しぼる』という行為が起源になったと言われています。
戦後復興で日本に少しずつ飲食店が増えていくと戦時中の混乱で消えかけていたおしぼりの習慣が徐々に普及し始めました。当時はおしぼりを自店で洗って提供していましたが、客数が増えると手作業では提供がおいつかなくなり、昭和30年頃からおしぼりを貸すビジネスが生まれました。当時は布製のおしぼりが一般的でした。
海外のおしぼり事情を調べてみると、欧米の飲食店ではテーブルに着く前に手を洗い終えていることが前提で、日本の飲食店で食前に出されるようなおしぼりは無いようです。
その代わり、食事中に口元を拭いたりするナプキンや食事中に汚れた手を洗うフィンガーボールがあります。
欧米では外食先でのテーブルマナーが確立していることで食前のおしぼり提供の文化は無いようです。ただし、食事中や食後におしぼりを提供する場合はあります。例えばイギリスでは、牡蠣を食べるときに手が汚れるのでおしぼりが用意されます。一方、アジアや東南アジアは、日本式のおしぼりを提供する飲食店があります。各地に展開する日本食のお店が発祥のようです。
紙おしぼりは一般的に『使い捨ておしぼり』と言われている不織布で作られたおしぼりのことを指します。サイズは大きなものから小さなものまで様々で、形は主に平型(平たく折りたたまれているもの)、丸型(ロール状に巻かれているもの)の2種類です。
素材はパルプやコットンなどの天然素材を主成分とした不織布、再生紙を使った不織布、レーヨン等の化学繊維を主成分としたものがあります。通常はポリ素材などの袋に入っており、その袋に自社のロゴを入れて提供している飲食店もあります。例えばテイクアウトに紙おしぼりを付けることで、自社の宣伝にもなります。
紙おしぼりとウェットティッシュ、どちらもパルプ、コットン、レーヨンなどの不織布などでできており、水分や殺菌剤を含み、手を拭いて清潔にすることができます。
それでは、なぜ『紙おしぼり』『ウェットティッシュ』と呼ぶのでしょうか。その一番大きな違いは、紙おしぼりは個包装、ウェットティッシュは1つの容器にたくさん入っていることです。また、使われている殺菌成分や防腐剤なども違いがあります。紙おしぼりは、食事の前に手をきれいにし、食中毒を防ぐのが主な役目ですので、次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤が使われています。
ウェットティッシュには殺菌剤、防腐剤以外にも、肌荒れを防ぐ温潤剤や保湿剤、油脂分を除去するためのアルコールや洗浄剤が含まれているものがあります。
紙おしぼりは、コストや拭き心地といった市場ニーズに合わせて、様々な素材の製品があります。その代表的な素材がパルプやコットンなどの天然素材を主成分とした不織布、レーヨン等の化学繊維を主成分としてものとなります。
ソフトな拭き心地、破れやすい、安さが魅力
厚手で保水性に優れる、比較的破れやすい
滑らかな肌さわり、比較的破れにくい
以上のような素材による特徴があります。
近年では再生紙を使った不織布も出てきています。
なお、環境面の配慮から、使った後はどの素材も燃えるゴミとして処分できますので、飲食店においては、店内で使うことも出来ますが、屋外で使用するテイクアウトにも適しています。
紙おしぼりの中には、いわゆる普通の紙おしぼりと高級紙おしぼりがあります。
一番の違いは紙の厚みです。一般的に使われる普通の紙おしぼりの厚みは40g/㎡~55g/㎡で、高級紙おしぼりの厚みは60g/㎡~80g/㎡です。厚みの違いが普通と高級の大きな違いの一つです。
また、紙おしぼりを包装する袋にも違いがあります。普通の紙おしぼりは透明や半透明のポリ素材の袋を使っていますが、高級紙おしぼりには見た目も高級感があるパール感のあるフィルムなどを使っています。
さらに臭いに関しては普通の紙おしぼりはアルコールのような臭いがしますが、高級おしぼりはアルコール臭を極力取り除き、ほぼ無臭になっているものが多いです。
ここでは紙おしぼりを使う上で気になる安全性についてご説明します。紙おしぼりは濡れており主成分は水です。水だけではカビや細菌が繁殖することがありますので、防腐剤が含まれています。また製品によっては手指を拭いた時に清涼感が得られるようアルコールを含むものもあります。
これらの薬剤はすべて人体に安全なものを使っています。
日本清浄紙綿類工業会加盟メ-カ-では「安全・衛生基準」として基布・薬液の成分など、製造に関わる基準を定めています。それらの基準を満たすことで、ある程度の長期間保管ができます。また布おしぼりよりもコンパクトで場所をとらず、持ち帰り時にも優れた面があります。
布おしぼりは昔からあるおしぼりです。現代は一般的にはタオル地の布片を水に浸しており、適度に湿ったものとすることで、食事前や食事中などの食卓において手を拭くのに便利なように供したものです。布片は巻くかたたむかなどして細長く成型され、ポリ素材の袋に入っていたり、袋に入れずにおしぼり受けに乗せて出されることが多いです。
また、繰り返し使うことができるので、自店で洗濯して運用することもありますが、使うおしぼりの量が多いと手間がかかるという理由から、使ったおしぼりを回収し、洗浄後、再度供給する貸おしぼり業という業者を通して、布おしぼりを使うこともあります。
次の章では具体的な布おしぼりの特徴について述べていきます。
布おしぼりは紙おしぼりと比較して、高級なイメージがあることから根強い人気があります。
1番の特徴として1本で手の汚れを拭きとることができます。
さらに使い回しができ、1本あたり平均25回リユースができるので、使い捨て紙おしぼりと違い、環境に配慮した面もあります。
また、温めたり冷やしたりできるので時間帯や季節、料理によって温度をかえて提供できるという演出ができます。演出面では布おしぼりに香り付けをし、季節感や店の由来に基づいた香りで提供することができます。これらは紙おしぼりでは出しにくい特徴ですので、顧客満足度を高める効果にも繋がります。
この章では紙おしぼりを選ぶ際の3つのポイントについてご紹介します。
ポイントはサイズ、形状、素材です。
いつ、どこで、誰に、どのように提供するかによって検討する必要があります。
同じお店であったとしてもランチとディナータイムではメニュー価格が違う場合は、2タイプの紙おしぼりを用意して、下記のように場面によって使い分ける手段もおすすめです。
・ランチタイムは価格が安い紙おしぼり、いわゆる大きさが小さめで厚みも薄いのを使う。
ディナータイムは大きくて厚みのある高級紙おしぼりを使ってみる。
・テイクアウトとして提供する場合においても料理の価格帯によって、使い分けをしてみる。
では大きさ/サイズはどのようになっているのでしょうか。実は紙おしぼりには統一したサイズというものはありません。各製造メーカーによって違いがありますが、おおよその目安となるサイズをご紹介します。
提供しやすく。リーズナブル。
標準サイズです。喫茶店などで広く使われています。
大判サイズでボリューム感があります。
上記サイズは、展開した際の長辺(縦幅)です。
コンビニで弁当などを買うと付いてくる紙おしぼりや、回転寿司チェーンに置いてある紙おしぼりはSサイズがよく使われています。用途に合わせて適切なサイズを選ぶと良いでしょう。
平型(平たく折りたたまれているもの)、丸型(ロール状に巻かれているもの)が大半を占めます。平型はお客様に提供しやすくカジュアル感があります。また、かさばらないので、省スペースで保管できます。Sサイズの場合は大きさが小さいこともあり、平型が圧倒的に多いです。
丸型は布おしぼりと似たような形状であり、ボリューム感があり、MまたはLサイズに多いです。丸型はロール状、平型は平たく折りたたまれられていることもあり、一般的に拡げる時には丸型の方が拡げやすくなっています。そのためアルコールの提供を伴う飲食店やホテルの場合、比較的丸型の紙おしぼりを使うことが多くなっています。
紙おしぼりの素材は自然素材または化学繊維です。天然素材ではパルプやコットンといった不織布、化学繊維ではレーヨンなどの不織布が原料として使われています。パルプはソフト感があり、コットンは保水性に優れる、レーヨンは滑らかな肌触りがあります。パルプの中でも、最近では再生紙100%の紙おしぼりも増えてきています。
またイートインとテイクアウトで素材をかえるのも一つです。イートインでは厚手で保湿性に優れるコットンやレーヨン、テイクアクトではソフト感があり比較的価格の安いパルプを使い分けるのはいかがでしょうか。さらに屋内外のイベント出店時には再生紙100%を使い、提供する料理のみならず、エコもPRをすることができます。
ここでは、使用用途に応じたおすすめの紙おしぼりを紹介します。
Sサイズは小さいながらも手指を拭くことはできます。
ご自宅などで食べる際にはコストの安いSサイズでも役割を果たすでしょう。
Mサイズは一般的なサイズです。
価格的は比較的リーズナブルで、手指を拭くためには十分なサイズ感です。
形状は和を意識した店ならば丸型、その他の業態であれば平型、丸型どちらでも対応できます。
Lサイズであれば、布おしぼりと比べてもボリューム感は遜色ありません。
素材もレーヨンであれば破れにくいので、食事中にも使えます。
包装の袋も高級感のあるパールフィルムの袋に入ったおしぼりをおすすめします。
ここまで、おしぼりの歴史や紙おしぼり、布おしぼりの特徴などをご紹介しました。
おしぼりというのは日本が発祥で、しかも1300年以上の歴史がある、実に伝統のあるものです。
提供する側としてどのような素材、サイズを使うのが自店に向いているかという観点で選んでいきましょう。
紙おしぼりは保管がしやすく手軽ですが、ちょっと安っぽい感じを受ける場合もあります。
布おしぼりにはボリューム感があり、温度を変えることで、お客様へのおもてなしへ繋がります。
双方にそれぞれのメリット、デメリットはありますが、日本のおしぼりという文化は、これからも継続されていくでしょう。
記事提供元
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