フランスの地方で独立した日本人シェフ「レストラン SO」髙橋創さん


〝本物〟だけが受け入れられる古都ディジョンでシンプルに自由に料理を楽しむ

レストランSO 高橋創さん

2014年版の『ゴー・エ・ミヨ』で「今年の若き才能」のひとりに選ばれ、注目を集める「レストラン SO」の高橋創さん。日本では「タイユバン・ロブション」などで腕を磨き、ブルゴーニュ地方の星付きレストランで研鑽を積んだ高橋さんが独立の地に選んだのは、フランスの古都にして、食の都ディジョンである。

SOのパンは、ディジョンの「ラトリエ・デュ・パン L’Atelier du Pain」のもの。フランスのブーランジェリー大会で優勝したこともある地元の名店だ。

シンプルに考えることことばを学ぶこと

ディジョンは栄光のブルゴーニュ公国の王都であり、食文化の中心でもあった。マスタードはもちろん、クレーム・ド・カシスなど、周辺には伝統の名品も数多く、名だたるグランシェフの故郷。その輝きを今も放ち続ける。それだけに、古都の市民は保守的な側面を持ち、料理も本物でないと認めない。高橋さんは、あえてこの古い王都に開業した。

「20席ほどの店の厨房は僕ひとりです。大変ですけど、そのかわり自由ですよ。朝マルシェに行って買ってきた食材で、どんどんメニューを変えていっちゃうんです」

その証拠に、びっしりとメニューやワインリストが書かれた黒板には、至るところに書き換えた跡が残る。週に3回も来店する常連や、週末だけの家族連れ。さまざまなゲストがいるが、「みんな注文せず僕が作る料理を食べて帰ります」。

ディジョンの人たちは、SOの料理が好きなのだ。

「最近『料理』がすごく難しくなっている気がします。人間が頭の中で難しくしている。僕はそれをできるだけシンプルにしたい」と高橋さん。厨房には小さな冷蔵庫が1台しかないのも、「冷凍ものを使わず、その日に手に入ったものを出す」という高橋さんの考え方を象徴する。

海外で成功するために必須条件は「言葉」だと断言する。言葉ができなければ、どんなに仕事ができても上のポストに就けない。開業しても自分を発信していくことができない。「何よりも、フランス料理を理解するには、フランス文化を理解しなければいけない。そのためにも言葉は必要。言葉は文化ですから」

高橋さんは妻とともに、古の街並みにしなやかに確実に根をおろす。

「ディジョンの農家から仕入れる豚をフライパンで焼き、マルシェで買ったコック貝、チリメンキャベツ、ニンジンでとったジュを煮詰め、バターでモンテし、豚肉に合わせた。

So Takahashi
1978年千葉県生まれ。辻調理師専門学校リヨン校を卒業後、帰国。「タイユバン・ロブション」を経て、2006年に再渡仏。ブルゴーニュの一ツ星「ル・シャルルマーニュ」や、ディジョンの一ツ星「ステファン・デルボード」などで修業し、2012年に独立した。

レストランSO
Restaurant SO
15, rue Amiral Roussin, 21000 Dijon

料理王国=取材、文 村川荘兵衛=撮影 

本記事は雑誌料理王国第252号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第252号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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