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【連載】キッチンの必需品!シェフが惚れ込む調味料3選 永島 義国さん(サローネトウキョウ)

シェフが惚れる調味料

一流シェフたちが「自分の料理に欠かせない」と惚れ込む調味料とは、どのようなものか? この連載ではシェフに愛用する3種類の調味料を紹介する。今回は、イタリア料理レストラン「SALONE TOKYO(サローネトウキョウ」の永島義国さんに登場いただく。イタリア料理らしからぬ、意外性のある品も含む3種類を挙げてくれた。

第一回「オマージュ」荒井昇シェフの記事はこちらから
https://cuisine-kingdom.com/hommage003

永島 義国
1975年新潟生まれ。19歳でイタリア料理の道に入り、29歳で渡伊。5年間でロンバルディア州、ヴェネト州、リグーリア州、エミリア・ロマーニャ州、トスカーナ州、シチリア州の星付きレストランなど計8店で修業する。帰国後、2014年よりサローネグループに入社。2018年にサローネトウキョウシェフに就く。

永島さんが調味料を選ぶポイントは、「個性」だという。ただし、「調味料全部の個性が強いと料理が疲れてしまいます。食材があり、合わせるメインの調味料があり、そこから個性ある調味料で料理の輪郭を際立たせるイメージです。今回紹介するのは後者の個性のあるもの」という。また、選ぶ調味料はヨーロッパのものとは限らない。「イタリア料理のベースは守りますが、調味料の間口は広いです」。時には日本の調味料も柔軟に使う。

【惚れ込む調味料その1】栗の有機ハチミツ (イタリア ミエリツィア 輸入元・日仏貿易株式会社)

「ミエリツィア」は、情熱を傾けてハチミツを作るイタリア全土の養蜂家・養蜂団体で構成される組合「CONAPI」が手がけるハチミツのブランド。さまざまな地域のさまざまな種類の花の製品があり、すべてがオーガニック。永島さんが選んだ栗のハチミツは、トスカーナ地方で採蜜されたものだ。

「少し苦味があり、黒糖に似たコクを持つところが気に入っています」と永島さん。特に、サローネTOKYOの定番のデザートである「白いティラミス」では、このハチミツは欠かせない。

「白いティラミス」は、器に少量のくるみのケーキやシャインマスカットなどの季節の果実を入れたところに、栗のハチミツのアイスクリーム、マスカルポーネのクリームを重ね、コーヒーパウダーをふった一品。「マスカルポーネのクリームではグラニュー糖を使いますが、それとは異なる甘みである栗のハチミツを同時に使うことで、皿全体の甘さに奥行きがでます」。

なお永島さんは、イタリアのさまざまな州で5年間にわたり修業してきた経歴の持ち主。その間、土地ごとにさまざまなチーズがあり、それに合わせるハチミツの種類も豊富にあることに感銘を受けたという。「今でも、ハチミツといえばチーズというイメージが自分の中では強いです。この栗のハチミツはゴルゴンゾーラのような力強いチーズにも、マスカルポーネのようなやさしいチーズにも、幅広く合います」。

【惚れ込む食材その2】自家製煮干しオイル

こちらは、煮干しの香りと旨みをじっくりとオイルに移して作る、自家製の調味料。煮干しとオリーブオイル(1対3の重量)を真空パックに詰め、72度で2時間加熱したものだ。「ご家庭で作るのであれば、ボウルに材料を入れてラップをし、湯煎で2時間ほど温めればできます。オイルは、ピュアオリーブオイルなどの香りのないもので」という。

実はこのオイルはコロナ禍の間に生まれたという。「みんなのテンションが下がっていた時、普段作らないものを、と、まかないでラーメンを作ったんです(笑)。その時に、旨みを強めるために魚粉を入れるのが個人的に粉っぽくて好きではない――と作ったのがこのオイルです」。予想以上に香りが強く、ほろ苦いけれど旨みのある味わいが気に入り、店で提供する料理にも使うようになった。

たとえば、アサリのだしを沸かして煮詰め、イタリアンパセリを入れ、煮干しオイルとともにミキサーでまわせばパスタソースに。アサリの旨み、煮干しの骨太な旨みと風味、イタリアンパセリのさわやかさの合わさった品ができ上がる。

「パスタソースに少しだけアクセントで入れると旨みが広がります。その他にも、ご家庭ではラーメンはもちろん、餃子や炒めものにもぴったり。幅広く使えるオイルです」。

【惚れ込む食材その3】生かんずり(新潟 有限会社かんずり)


かんずりは、トウガラシを雪の上にさらしてアクを抜き、塩麹やユズなどを混ぜて発酵させて作る伝統調味料。永島さんの故郷、新潟の特産品だ。角の取れたトウガラシの辛さ、塩麹の旨み、ユズの香りが一体化した、深みのある味わいが魅力だ。

「コロナの前、地元に帰った時に訪れた朝市で、農家の方の手作りのかんずりを買って食べたら、“旨辛”と言うんでしょうか。旨みを強く感じてとてもおいしかった。それで『これは店でも使える!』と思ったんです」。

イタリア料理でかんずりを使うのは異色だが、感覚としては、カラブリアの「ンドゥイヤ(トウガラシと豚の内臓で作るペースト状のサラミ)」と似ているという。「どちらも練れた辛さです。パスタソースで、ンドゥイヤの代わりに使ったこともあります」。

そのほか、「たとえばシンプルなトマトのパスタソースに入れると、ただ辛いだけではない、厚みのある辛さをプラスできます」とも。かんずりはオリーブオイルとの相性もよい。「オリーブオイルを用いた肉料理や魚料理にも手軽に使えるので、ぜひ試してみてください」。

サローネ トウキョウ
電話番号 03-6257-3017
東京都千代田区有楽町1-1-2
東京ミッドタウン日比谷 3階
ランチ:12:00- 13:00L.O.
ディナー:18:00- 20:00L.O.
定休日:無休
http://salone.tokyo

取材・文・写真 =柴田泉 


柴田泉
東京多摩地区生まれ、横浜育ち。大学で美術史を学んだのち、食の専門出版社「柴田書店」に入社。プロの料理人向けの専門誌『月刊専門料理』編集部に在籍し、編集長を務める。独立後は食やレストランのジャンルを中心とするライター・編集者として活動する。




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