イタリアには地方ごとに、さまざまな手打ちパスタがある。そのいっぽうで、全土にあるもの、同じ名前であっても、土地によって詰め物や形状が違うものも存在する。そこで数ある中でも、個性が際立つピエモンテ州の手打ちパスタに注目。ベーシックな作り方を、堀江純一郎さんに教えていただいた。
イタリア北部では、軟質小麦の00粉を使った手打ちパスタの有名どころが各地に点在するが、ピエモンテ州ではロングパスタのタヤリンと詰め物パスタのアニョロッティのふたつがとりわけ名を馳せている。
タヤリンは、もとは卵黄だけで小麦粉を練るパスタだが、昨今では卵黄と全卵で練ったり、ここで紹介した堀江さんのレシピのようにセモリナ粉を加えたりと作り手によるバリエーションも増えてきた。いずれにしてもタリオリーニのピエモンテ方言というだけでなく、よりコシがあってツルンとした軽さがあるなどタヤリン独自のスタイルがある。堀江さんは配合の工夫だけでなく、生地を薄めにのばし、工程の要所でしっかり乾かすことでいっそう歯ごたえのよいものに仕上げている。調理法としては、セージ風味をつけたバターや、各種肉のラグーで和えるのが定番である。
いっぽう、アニョロッティは大きく分けてふたつのタイプがある。およそ5センチ四方の正方形や円形に作ったシンプルで大形サイズのものが一般的なアニョロッティ。指でつまみながら成形する小ぶりで凹凸の多いのがアニョロッティ・ダル・プリン。堀江さんが作ってくれたのは「これぞピエモンテの魂」というプリンのほうだ。
生地の配合はどちらも共通だが、プリンのほうは粉生地のうま味を味わせつつも、生地をかなり薄く作って喉越しのよさを出し、同時に詰め物の肉のおいしさを引き立てるように作る。今回の詰め物は3種類の肉を混ぜた定番的なものだが、フォンティーナチーズを使ったフォンドゥータ(フォンデュ)もポピュラーだ。
タリオリーニのピエモンテ方言がタヤリンで、軽さとコシの強さが同居したような食感。基本材料は軟質小麦粉と卵だが、堀江さんはセモリナ粉も混ぜてよりコシを強めている。
00 粉 200g /全卵 2 個/塩 5g /オリーブオイル 20mℓ
詰め物の材料(6~7人分)
牛腿肉 400g /豚ロース肉 80g/ウサギ腿肉 200g /ホウレン草 20g /米 20g /パルミジャーノチーズ 適量/全卵 1/2 個/ニンニク1/2 片/ローズマリー 1/2 枝/白ワイン 適量/バター 少量/牛のブロ ード、塩、コショウ 各適量(作り方は省略)
サルシッチャと牛挽き肉で作る濃厚な風味のラグーに、ピエモンテの秋の味覚、ポルチーニ茸を加えたソースで和えたタヤリン。冬場なら、バターで和えたタヤリンに白トリュフの薄片をたっぷりとふりかけるのが定番中の定番
材料(作り方は省略)
ラグー:牛挽き肉 150g /生サルシッチャ 150g /ソッフリット 50g/ローズマリー、タイム、セロリの葉、ニンニク、ローリエ 各適量/マルサラ酒 30mℓ/ポート酒 30mℓ/トマトソース 60g /赤ワイン 400mℓ/ソースの仕上げ:ポルチーニ茸 100g /ニンニクのペースト 10g /エシャロットのペースト 10g /白ワイン、ブロード、パルミジャーノ・レッジャーノ、イタリアンパセリ(みじん切り)、塩、コショウ 各適量
アニョロッティはピエモンテ版のラヴィオリで、成形時に指でつまんで複雑な形に作るとダル・プリンの名称がつく。極薄の生地にして詰め物の肉のうま味を引き立てるのがポイント。
00 粉 190g /セモリナ粉 60g /卵黄 2 個分/全卵 1個/塩、オリ ーブオイル 各適量
詰め物に牛、豚、ウサギの 3 種の肉を組み合わせてうま味に厚みを持たせた典型的なアニョロッティ・ダル・プリン。米やホウレン草も加わって、噛むほどに複雑なうま味が広がる。ゆでたあとは、バターとパルミジャーノ・レッジャ ーノを中心にシンプルに味付け。
ソースの材料(作り方は省略)
バター、グラス・ド・ヴィヤンド、パルミジャーノ・レッジャーノ、ローズマリー各少量
河合寛子―文 長瀬ゆかり―写真
本記事は雑誌料理王国2008年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2008年10月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。