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本場で育ったシェフのフォアグラ使い「シェ オリビエ」


牛乳で臭みを取った“自家製”が当たり前だった

「家では、フォワグラを買ったことはありませんでした」とオリビエさんはこともなげに言う。といっても、オリビエさんの家で鴨を育てていたわけではない。

オリビエさんが子どもの頃、ボルドーでは、フォワグラ用の鴨を街のマルシェで普通に買えたからだ。「毎年秋だったと思いますが、年に1回、マルシェでフォワグラ用の鴨を何十羽も買ってきて、自分の家でフォワグラを取り出して、保存していました」

マルシェで買ってきた鴨のお尻からフォワグラを取り出して、牛乳に入れ、臭みをとる。掃除をして、血管なども取り除いたら、それを煮沸消毒した密閉容器(瓶)に入れ、塩・コショウで味をつけたら蓋をして、沸騰した湯に入れて煮込む。その後、取り出して冷やし、あとはワインセラーで保存しておく。

長時間煮ると、少し油は出てしまうが、長期間保存できる。逆に、煮る時間を短くすれば、保存性は少し悪くなるが、味はおいしい。

「それぞれの家庭でつくり方はさまざまです。でも、1年くらいは保存できるので、必要なときに必要な量だけ出してきて、ウチでは祖母や母がいろいろな料理をつくってくれました」

オリビエさんの故郷、ボルドーにもほど近いサンテミリオンの風景。ユネスコの世界遺産にも登録されている。

モモ肉やムネ肉も保存して一年間食べる

残ったモモ肉やムネ肉はコンフィ(オイルに漬けてじっくりと火を入れる)して、油の入った容器に漬け込んで、セラーで保存。こちらも1年くらいは保存できる。

「冷蔵庫がなかった時代に、ローマ人が考案した保存方法だそうで、ボルドーやランドでは、昔からこの方法で保存していました」とオリビエさんは話す。

さらに、クビの部分には他の部分の肉を詰めてパティにするなど、鴨の肉は余すところなく使う。ボルドーあたりでは鴨のフォワグラが主流だが、アルザスではガチョウのフォワグラを使うことも多いといわれている。

もちろん、今でもマルシェでは生のフォワグラを売っている。「小さい頃から親しんできたから、私は今でもフランス産、特にボルドーのフォワグラしか使いません」

一時期、鳥インフルエンザのためにフランス産のフォワグラの輸入が禁止されたことがあった。「あのときは、どうしても他の国のフォワグラを使う気になれなくて、思い切ってフォワグラ料理をメニューから外してしまいました」とオリビエさんは苦笑する。〝本場の本物〞を知るオリビエさんだからこそ、フォワグラを見る目は温かくて厳しい。

鴨のフォワグラのロティルバーブ、ジュランソンワインのソース、ドライナッツと赤い実のフルーツ

フォワグラがどっしりとした存在感を主張する一方で、ルバーブのしっかりとした酸味と甘口ワインとハチミツの甘さがフォワグラをふわりと包み込み、奥深い味わいが口中に広がる。ソースの中に入れたナッツやフルーツなどとフォワグラの食感の対比も絶妙だ。

Olivier Oddos
1970年、 フランス・ボルドー生まれ。16歳で料理の世界に入り、ミシュラン星付きレストランなどで働く。パリの「ラ・トゥール・ダルジャン」(当時2ツ星)でセカンドシェフを務め、2000年に「ル・コルドン・ブルー」の料理教授として来日。エグゼクティブシェフなどを歴任後、 2009年、東京・市ヶ谷に「シェ オリビエ」をオープンする。

Chez Olivier
シェ オリビエ

東京都千代田区九段南4-1-10
4-1-10, Kudan-minami, Chiyoda-ku, Tokyo
☎03-6268-9933
www.chezolivier.co.jp

山内章子=取材、文 星野泰孝=撮影

本記事は雑誌料理王国301号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は301号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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