西洋料理食材のパイオニア・アルカンが教える食材のはなし 02_フランスの食文化を象徴する家禽・ヴォライユ

ラカン産ピジョンを使った後藤祐輔シェフのひと皿。「ビジョンの炭火焼き シロールと枝豆、焼きとうもろこしの香り」  photo:Gaku Yamaya

アルカンは、日本に初めてフレッシュのフォアグラやトリュフを紹介したフランス料理食材のパイオニア。産地本来の味を大切に、風土に根ざした食文化を伝えることを使命とし、ウェルカムシャンパーニュからデセールまで多様な食を取り扱っています。ここでは、そんなアルカンか自信を持っておすすめする食材について、ご紹介します。

ヴォライユ=家禽とは、肉や羽毛、卵などを利用するために家畜化された鳥類を指します。代表的なものといえば、鶏や鴨、ウズラ、七面鳥や鳩。このほか、ガチョウやキジ、ダチョウ、またウサギやカエルなどもこの範疇に入りますが、今回は特にフランス料理に欠かせない鴨と鳩について、株式会社アルカンの阿部英彦さんにお話を伺いました。

「ジビエとして愛されている野生の鴨がマガモ。バルバリー種はこの野生種を起源としてフランスで改良されたものです。ほかにも、フォアグラを取るアイガモのミュラ―ル種(バルバリー種の雄と北京ダックの雌の掛け合わせ)やイギリス原産のチェリバレー種、クロワゼ(マガモの雄とアヒルの雌の掛け合わせ)などがあります」

ちなみに野生のマガモを食肉用に改良・家畜化したのがアヒル。アヒルとマガモを交配させたものがアイガモ。日本で鴨南蛮などに使われているのはこのアイガモで、雄のアイガモの肝臓がフォアグラ—という相関関係。これらは英語ですべて「Duck」と呼ばれます。

「鴨は品種によって食味がかわりますが、最も上質とされるのがカナールシャランデです。フランス西部太平洋岸のヴァンデ県にあるシャランという地域で、伝統的な飼料と飼育法で職人によって育てられたもので、生産量が少ない高級品として知られています。きめ細かく柔らかな肉質が特徴で、屠鳥の仕方も違います。窒息させて、血を抜かずに残す“エトフェ”をする。これによって野性的な味わいが楽しめるんです。カナールシャランデは、鴨料理で有名なパリのトゥールダルジャンが使っている鴨としても知られています」

ヴァンデ県はもともと湿地帯が多く、野生の鴨が多くいた場所だったと阿部さん。それが、この地域で鴨の生産が盛んな事に繋がっているようです。

西洋料理食材のパイオニア・アルカンが教える食材のはなし 02_フランスの食文化を象徴する家禽・ヴォライユ

一方、ビジョン(鳩)はというと「食用については品種というよりも産地・生産者のこだわりによって食味が異なるんです」との事。

「フランスでは、鶏の産地として知られるブレス産、使いやすく価格も手ごろなヴァンデ産、そして品質の高いラカン産などがあります。鳩もエトフェすることで、より野性的な味わいが楽しめる食材ですね」

フランスでは品質の良い食品を市場に広めることを目的とし、生育環境や飼育過程に厳しい規定を設けた品質保証制度があります。その中でも家禽類の対象が多いのが「ラベル・ルージュ」。1960年代、大量生産主義に疑義を唱える養鶏業者の活動から生まれ、鶏や鴨はもちろん、今では乳製品や野菜、水産品など多くの食品に対し付与されています。アルカンでは「ラベル・ルージュ」の認証を得た家禽類も幅広く取り扱っています。

西洋料理食材のパイオニア・アルカンが教える食材のはなし 02_フランスの食文化を象徴する家禽・ヴォライユ

「2015年に発生した鳥インフルエンザの影響で、2018年までフランスからの家禽の輸入が停止されていました。この間、国産の鴨を使うシェフも増えたと思います。でも、鴨や鳩などのヴォライユは、フランス料理を構成するために欠かせないもの、つまりフランス食文化の象徴です。食材のもつ歴史や背景も含めて、大切にお届けしたいと考えています」と、阿部さんは言葉を続けます。

本誌では、このシャラン産とのカナール(鴨)とラカン産ピジョン(鳩)使った料理を、広尾のフレンチレストラン「アムール」の後藤祐輔シェフに手掛けて頂きました。通常は国産鴨を使っているという後藤シェフも「やはり、肉の味が強く皮目につく脂もしっかりしていて、いいですね」と、フランス産のポテンシャルを高く評価。両者ともシンプルにローストし、その魅力を表現してくださいました。

ラカン産ピジョンを使った後藤祐輔シェフのひと皿。「ビジョンの炭火焼き シロールと枝豆、焼きとうもろこしの香り」  photo:Gaku Yamaya
ラカン産ピジョンを使った後藤祐輔シェフのひと皿。「ビジョンの炭火焼き シロールと枝豆、焼きとうもろこしの香り」 
photo:Gaku Yamaya

魯山人がトゥールダルジャンを訪ねた際、醤油とワサビで鴨を食したという逸話しかり。食材にまつわるエピソードが豊かなのも、フランスを代表する食材だからこそ、でしょうか。

ラカン産ピジョンを使った後藤祐輔シェフのひと皿。「ビジョンの炭火焼き シロールと枝豆、焼きとうもろこしの香り」 

text:奥 紀栄 (料理王国編集部)

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