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ドイツで生まれ変わる日本の発酵食品

ドイツで生まれ変わる日本の発酵食品

ベルリンのシェフたちは常に「新しい味」を探求している。彼らがそのために頼るのは清水マルクスさんだ。

清水さんはベルリンで、塩麹や味噌、醤油といった日本の発酵食品を作る。趣味で作り始めたものが人気を集め、自宅では間に合わなくなった2017年、醸造所と店を兼ねた「mimi」をオープン。今ではトップシェフたちが買いにくる。

最初に清水さんの仕事に注目したのは、ミシュラン星付きレストラン「Nobelhart & Schmutzig」のミヒャ・シェーファーさんだった。ドイツならではの食材にこだわるシェーファーさんのために、清水さんはドイツで馴染みが深い蕎麦の実を米代わりに使って、蕎麦塩麹を作った。

それをシェーファーさんはバターと一緒に温めて泡のソースにし、生きくらげと合わせた料理を考案。「蕎麦塩麹とバターが深い味を醸し出すと同時に、添えられたタイムが香り立ち、上下に引っ張られるような食の体験だった」と清水さんは表現する。

ベルリンの二つ星レストラン「FACIL」のミヒャエル・ケンプフさんは、清水さんが作った酸味の強いレンズ豆の塩麹を、牛肉料理の付け合わせにした。シンプルに添えることで、その酸味をあえて前面に出した。

日本では下味として使われることが多い塩麹を、ドイツのシェフたちは「スパイスのようにハイライトとして使う」と清水さんは言う。「その使い方には『遊び』があります」

趣味が高じて日本の伝統的な発酵食品の醸造所兼店舗をオープンされた清水マルクスさん。写真は蕎麦麹。
趣味が高じて日本の伝統的な発酵食品の醸造所兼店舗をオープンされた清水マルクスさん。写真は蕎麦麹。

遊び心に応えるように清水さんも新しいものを生み出す。たとえばトゥルンジュというトルコ唐辛子の塩麹。スパイス感覚で炒め物やパスタに入れても、ラー油代わりに酢醤油に足して餃子のたれにしてもいい。その他、ビートルートで作ったピンク色の味噌、アインコーン(一粒小麦)などの古代小麦で作った醤油など、試してみたくなるものばかりだ。

今後は、さまざまな人たちとのコラボレーションも増やしていきたいと清水さんは言う。「たとえばパン屋。毎日パンが余ってもったいないでしょう。それを使ってパン麹を作り、それで味噌を作るとかね」

食材にこだわるトップレストランでは、食品が無駄になることも多い。鶏の胸肉だけを使って、残りは廃棄したりするからだ。食品廃棄の問題に悩む三つ星レストラン「Rutz」のマルコ・ミュラーさんのために、残った鶏の足と卵の白身を、麦麹で発酵させたソースを作ったこともあるという。「古い赤ワインの樽で作ったら、コック・オ・ヴァン(鶏の赤ワイン煮)みたいになった」と笑う。

「実験をするのが好き」という清水さん。もともとアーティストだった。そのクリエイティビティが、日本伝統の発酵食品をドイツで新しいものに変えていく。

清水マルクスさんが手がけた商品たち。瓶詰めされた蕎麦塩麹や白味噌、玄米味噌が並ぶ。
清水マルクスさんが手がけた商品たち。瓶詰めされた蕎麦塩麹や白味噌、玄米味噌が並ぶ。

Text: クレイトン川崎舎裕子、photo:mimi /クレイトン川崎舎裕子

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