ベルリンのディナーパーティーへようこそ


ベルリンにあるアパートメントの一室で、月に数回だけ行われるディナーパーティー。大きなテーブルに用意された6人分の席。誰と一緒に食事をするかはわからない。レストランのようなメニューもない。旬の食材にこだわった10皿から15皿のコース料理は、運ばれてきてからのお楽しみだ。

ホストであるシェフは、ミカル・ローゼンブラットさんとカール=ルイス・ケムラーさん。「ファインダイニングを、親しみ感のあるカジュアルな体験にしたかった」とローゼンブラットさんは言う。

「良いレストランへ行くと私は、裏にいる人たちに興味を持ちます。話を聞きたいと思う。でもそんなことなかなかできないでしょう。大きなバリアを感じます」

そこでローゼンブラットさんらはそのバリアを取り払い、まるで友達の家のディナーパーティーかのような空間を作った。シェフが客と話をし、客同士も話を弾ませる。「運ばれてくる一皿一皿が、会話のトピックになるのです」

夜8時から11時に設定されている食事は、たいてい真夜中まで続く。食後に座り込んで飲み直すこともあり、客同士が親しくなってそこから他のバーへ出かけることもある。

集まる人はさまざま。17歳から60代までの人が共にテーブルを囲んだこともある。小さなグループで参加する人もいるし、一人で参加する人もいる。

「お客さんで、いつも一人で高級レストランに行っているという人もいました。そういう方にとって、一人で参加しても他の人と一緒に食事ができるというのは魅力のようです」とケムラーさんは話す。

 

「Loumi」を立ち上げたのは2016年。友人たちを招待して料理を振る舞っていたことがビジネスにつながった。

二人が大切にしているのは食材。高品質なものを選ぶのはもちろんのこと、その食材がベストな状態にある短い期間にこだわるため、旬真っ盛りのものが中心になる。またサステイナビリティへの配慮から、食材はできるだけ近い地域で調達する。そのため地元の生産者との関係も丁寧に築いていく。

「食材、そして生産者へのリスペクトを大切にしている」と言うケムラーさん。参加者との会話のなかで、食材がどこから来たかについても伝えるようにしているという。生産者とシェフから、シェフと客、客同士までつながる食の体験だ。

いまは誰もがインスタグラムなどで、常に「何か面白いもの」を探しているとケムラーさんは言う。ベルリンらしい、ユニークな形のファインダイニング。そんな新しい体験を探している人は日本にもいるのではないだろうか。

text:クレイトン川崎舎裕子 photo:Loumi

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