こんにちは、編集部のナナコです。
ゴールデンウィークもあっとゆう間に終わって5月も後半、今は8月号取材の真っ最中です。
観光地はどこも混みあって、コロナ前のにぎわいを少し取り戻したようですね。飲食店にも人が戻ってきたようでうれしいです。
さて、今回の日記では、私のゴールデンウィークのある1日を振り返りたいと思います。
4月30日、私は朝から東京・京橋へ出かけていました。
その目的は、連載「ロバート キャンベルの美味ごころ」6月号で取材した、お菓子の名店「イデミスギノ」の閉店を見届けることでした。
私がお店の前に到着したのは朝8時半過ぎ。お店のオープンは正午なのですが、すでに90人ほどの行列ができていました。1番乗りの方は、なんと、朝4時から並んでいたそうです。
ケーキの味を語り合いながら待つご婦人たち、1人黙々と読書をしながら並ぶ男性パティシエ、一度は食べてみたかったと最終日に並ぶことを決めたスイーツ好きの大学生、閉店を知り新幹線に乗って遠くから駆けつけた男性2人組・・・・・・。行列に並んでいると、皆さんのエピソードが自然と耳に入ってきました。イデミスギノのケーキを、どんなシチュエーションで、誰と食べたのか、ファンの皆さんは1つひとつ鮮明に覚えていらっしゃるようでした。
開店まであと1時間をきったところで、杉野英実シェフが外に出てきてくださり、並んでいるお客さま1人ひとりに挨拶を始めました。杉野シェフと話しながら、涙を浮かべる方も多くいらっしゃいました。
私の整理番号は85番目。「きっと生のケーキは売り切れてしまうだろうけど、それでも良いのだ」と思いながら待っていました。並ぶこと約8時間、本当にぎりぎり、なんとか生のケーキを4つ、焼き菓子もいくつか購入することができました。
本来ならば買えないはずなのに、シェフやスタッフの皆さんは、長時間並ぶファンのために、できるだけたくさんのケーキを作ってくださったのでしょう。その思いやりを感じながら、かみしめるように、ケーキを頂きました。軽やかで香り高いムース、立体的で気品ある味わいの重なり。このケーキがもう食べられなくなるなんて、本当に寂しいです。
話を6月号に戻しましょう。
連載「ロバート キャンベルの美味ごころ」は、国文学者のロバート キャンベルさんが、心に残るとっておきのお店を紹介してくだるものです。昨年10月号からスタートして、5回目の今回は、初めてのパティスリー。3月末ごろ、閉店前のイデミスギノへ伺ったのでした。
2階には杉野シェフが日々お菓子を作るアトリエがあり、取材ではその中にも入らせていただきました。1992年に神戸で独立されて、東京・京橋のこの場所に移ったのは2002年。ちょうど20年経つアトリエは、床も台も器具も、丁寧に磨き上げられていてピカピカ。そこにはシェフの美意識が息づいているようでした。取材の日、お菓子の生地を仕込む杉野シェフから頂戴した言葉の数々は、記事に掲載しています。
杉野シェフのケーキの大ファンであるキャンベルさん。閉店を前にして、その想いを綴ってくださいました。詳細はぜひ6月号やウェブマガジンで読んでいただけたらと思います。
お忙しいなか取材に対応してくださった杉野シェフ、マダム、スタッフの皆さまには心から感謝申し上げます。そして杉野シェフの次なる挑戦を、心から、応援しています。