World news Paris : 弁護士からショコラの世界へ。気鋭のショコラティエを父に持つジャド・ジュナンの挑戦。


食の都パリで、食ジャーナリストして活動する伊藤文さんから届く美食ニュースをお届けする本連載。昨年12月、ショコラティエのジャック・ジュナンの娘、ジャド・ジュナンが自身のショコラトリーを開いた。洗練されたショコラに加え、弁護士から転身したという異色の経歴も話題だ。

パリのチョコレート好きであれば、「ジャド・ジュナン」の名前を聞いてピンとくるかもしれない。そう、気鋭のショコラティエ「ジャック・ジュナン」の名前を思い浮かべたなら、大当たりだ。ジャド・ジュナンはジャックの娘だ。

そのジャドが2022年クリスマス直前の12月に、自身のショコラトリーをオープンした。オペラ座を正面に見るオペラ大通りに面した広いアトリエ付きのショコラトリー。なんと、飛ぶ鳥を落とす勢いの人気パティシエ、セドリック・グロレのブティックの2軒隣という立地で、これからの名声を約束されたような場所に構えた。

オーガニックなフォルムでありながら、ホワイトの明るい内装に、ゴールドを効かせ味にしたモダンな内装。アーティスティックな雰囲気は、父親の気質譲り。ジャドの腕は、復活祭の時期の、チョコレートでできた卵のオブジェで知られていた。卵のオブジェにペインティングしたジャックの作品は毎年話題だが、ジャドが多く担当していた。

父親ジャック・ジュナン譲りの創造性を未来にも期待したい。
photo:©Stéphane Grangier
昨年12月、オペラ大通りにオープン
photo:©Malthusian Belt

ジャドは1992年生まれ。弁護士の道を選んだが、チョコレート作りへの魅力に取り憑かれて、父親の仕事に従事するように。2019年には晴れて「ジャック・ジュナン」のチョコレート制作のシェフにも就任。独立することを決めた。

父親譲りの繊細な香りを閉じ込めたボンボンショコラは、季節限定の香りも含めて20種類近くあり、フォルムはピラミッド型。パリ生まれのパリジェンヌであることから、パリのイメージが浮かび上がるようなフォルムにしようと、この形に決めたという。
「ルーブル美術館の広場にあるガラスとメタルでできたピラミッドの形の入り口と、コンコルド広場にあるオベリスクのてっぺんにある帽子の形からインスピレーションを得た」とジャド。

製造のアトリエも同階に備えている。
photo:©Malthusian Belt
ピラミッド型でオリジナルな味わいであることも主張している。ペインティングした見た目も美しい。
photo:©Thomas Duval

冬季限定の香りは「松かさエキス風味のガナッシュ」。そのほか、日本の海苔をガナッシュに入れた「NORI NORI」や、中東ミックススパイス「ザアタル」とフルール・ド・セル入りのオートミールのプラリネ「THYM PARFAIT(パーフェクトなタイム)」、ジャスミン風味のオーガニックアーモンドのプラリネ「JASMINA」など、オープンマインドで、オリジナルな味わいに次々に挑戦しているのも好感度が高い。

岩のような形に仕立てたプラリネチョコレート「ロシェ」も、口当たりも楽しく秀逸。ポップライス入りモルトのプラリネやポップライス入りヘーゼルナッツのプラリネ、ピスタチオとオートミールのプラリネなどと、こちらも個性揃い。

2代目だからこそできる、新しい境地を開いてくれる遊びのあるチョコレートばかり。パリに誕生した、期待の新人ショコラティエであることは間違いない。

photo:©Malthusian Belt

Jade Genin(ジャド・ジュナン)
Instagram @jade.genin
https://www.instagram.com/jade.genin/
HP https://jadegenin.fr

text:伊藤 文

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