World news Paris : 黄色がテーマカラーのショコラティエ、クリステル・ブリュアの「マダム・カカオ」


パリ6区シェルシュ・ミディ通りに新しいショコラトリー「マダム・カカオ」がオープンした。世界的にも知られるブランジュリー「ポワラーヌ」の本拠地の2軒隣にある。黄色のカラーの外観に、黄色を基調にした店づくりで一際目立つ店舗だ。オーナー・シェフのクリステル・ブリュアさんがオープンしたのは今年のイースターの直前、4月7日。フランスの大統領夫人であるブリジット・マクロン氏からも祝福を受けたことで話題になった。

クリステル・ブリュアさんは1977年生まれ。フランス・パリでミシュラン3つ星を享受する小林圭さんをはじめ、現在のフランス料理界を牽引する料理人やパティシエたちと同世代だ。

クリステル・ブリュアさん。自身の店をオープンするという長年の夢を叶えた。パリの中心地シェルシュ・ミディ通り、パン屋で知られる「ポワラーヌ」の左隣にある。

ブリュアさんは昨年の8月までエリゼ宮に製菓の最高責任者として3年ほど勤務していた。ブリジット大統領夫人は北部地方アミアンで知られる老舗のショコラティエ出身ということもあり、チョコレートには一際こだわりがある。そんななか、ブリュアさんの才能を買っていた。当初からブリュアさんがいずれ独立して自身の店を作りたいと思っていたことを知っており、ブリュアさんにチョコレートの才能があるということを見抜き、助言したそうだ。パティスリーではなくショコラトリーをオープンするきっかけになったという。

ブリュアさんはそれまでレストランのパティシエとしてキャリアを築いてきた。初めは料理人としての腕も磨き、21歳でロレーヌ地方の最高見習い賞で最高位に輝いたこともある。「デ・ガトー・エ・デュ・パン」を2006年にオープンした、ピエール・エルメの愛弟子クレール・ダモンさんのキャリアも思い出される。彼女もパティスリーと料理を経験しており、1995年にはフランス最高見習い賞で優勝した1977年生まれだ。女性のパティシエが活躍するきっかけを作った二人とも言っていい。

「マダム・カカオ」のテーマカラーはイエロー。モダンで元気、Kawaiiイメージを打ち出す。

ブリュアさんはパリの3つ星レストラン「プレ・カトラン」のシェフ、フレデリック・アントン氏との出会いを通じて、2003年シェフ・パティシエに就任することになる。彼女のスペシャリテは「ポム・スフレ」。吹きガラスのように砂糖の飴を膨らませ、青リンゴの形に似せて作った砂糖細工の中に、青リンゴ、シードルの香りのゼリー、ライスパフ、パチパチはじけるペタセタキャンディなどを閉じ込めた美しいデザートだ。この一皿で、いくつかの雑誌の最高パティシエ賞にも輝いている。2018年には「Les grandes tables du monde/世界の最高レストラン」協会で、世界最高パティシエ賞も受賞している。

「プレ・カトラン」で、多くのことを学び、力をつけてきたことをアントン氏に感謝するブリュアさんだが、2019年にエリゼ宮の料理長だったギヨーム・ゴメズ氏から声がかかり、エリゼ宮の製菓長に就任することを決める。アントン氏も16年勤めてきたブリュアさんを労っていた。

ナッツやフルーツのコンフィなどが贅沢にのったタブレット。季節のフルーツをドライにして載せたものも人気。

季節のフランボワーズを乾燥させてタブレットに乗せたり、チョコレートはいくつかの味わいを自分でブレンドしてオリジナルの味わいに近づけたりと、料理のように、あるいはデザートのように組み立てるのが、自身のスタイルだというブリュア氏。

コルシカ島のフルーツ・コンフィ専門メーカーである「アレクシア・サンティニ」のオレンジ・ピールやジンジャー・コンフィのチョコレートがけの美味しさも際立つ。「アレクシア・サンティニ」のフルーツ・コンフィは、プロでもなかなか手に入らないことで知られており、ブリュア氏の腕を買われているということの証拠だろう。このコンフィにコーティングするチョコレートには、ニコラ・ベルジェのマダカスカル産チョコレートを使う。こだわりがあちこちに散りばめられている。

ところでブリジット大統領夫人が特に気に入っているのは、ライスパフを入れたミルクチョコレートのタブレットだそう。未来の成長をファーストレディも見守っている。

うさぎ型の愛らしいチョコレートには、「味に対して誰よりも敏感で、誰よりもクリステルを支えてくれている」10歳の息子リュシアンさんの名前を冠した。

Madame Cacao chocolaterie
10 Rue du Cherche-Midi 75006 Paris 6
Instagram @madamecacao_paris

text:Aya Ito photo:Natalia Khoroshaieva

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