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西洋料理食材のパイオニア・アルカンが教える食材のはなし 01_フランス料理を代表する食材・オマールブルー

西洋料理食材のパイオニア・アルカンが教える食材のはなし 01_フランス料理を代表する食材・オマールブルー

アルカンは、日本に初めてフレッシュのフォアグラやトリュフを紹介したフランス料理食材のパイオニア。産地本来の味を大切に、風土に根ざした食文化を伝えることを使命とし、ウェルカムシャンパーニュからデセールまで多様な食を取り扱っています。ここでは、そんなアルカンが自信を持っておすすめする食材について、ご紹介します。

フランス料理の高級食材として知られるオマール。英名はロブスターで、分類で言うとエビ目ザリガニ目アカザエビ科、ザリガニの仲間です。市場に出ているのはヨーロッパ産のオマール(学名オマルス・ガンマルス)と北アメリカ産(同オマルス・アメリカヌス)の2種類。南アフリカなどでも獲れるそうですが、量が少なく味も落ちるため出回らないのだとか。

「大西洋を中心とする水温の低い海域が生息域で、アメリカ東海岸やカナダ、ドーヴァー海峡沿岸のフランスやイギリスで水揚げされています。高級食材として名を馳せているのはヨーロッパ産、特にフランス北西部ブルターニュ地方で獲れるものです。青く紫がかった殻の美しい姿から〝オマールブルー〟とも呼ばれています」 

そう教えて下さるのは、高級レストランを顧客とした業務食材の仕入れを行なっている株式会社アルカンの阿部英彦さん。なぜ高級なのか、その理由をお聞きすると「養殖が不可能なうえ、アメリカ・カナダ産に比べて圧倒的に漁獲量が少ないんです。フランス国内でも希少な食材なんですよ」と、阿部さん。前者との水揚げ比率でいうと、10対1ほどなのだそう。

「そしてやはり、味が違います。フランス産のものは甘味とうま味が濃厚で、身が締まっている。漁期は春から秋にかけてで、6月から9月頃が旬です」

こちらがハイプレッシャー冷凍オマールブルー テールとツメのむき身(160g)。殻付きの頭部や半身、コライユもある。

この時期に水揚げされたオマールの美味しさを、そのまま厨房に届けるために開発された冷凍技術が「ハイプレッシャー(高圧処理)冷凍」と呼ばれるもの。

「これは、獲ったばかりの新鮮なオマールに生きたまま約3000バール(約3000気圧。1気圧=1平方cmに1kgの圧力)もの高圧をかけて身を硬直させ、急速冷凍する技術です。これにより生の状態でも甲殻から身が外れ易くなり、非常に扱いやすくなるんです」

最高級オマールの産地フランスで唯一、このハイプレッシャー冷凍を行なっているのが、アルカンが取り扱っているブルターニュ地方ロリアンの「サンク・デー・オー」。生簀から出してから冷凍処理を終えるまで、わずか30分というスピーディーさだと、阿部さん。

「活きたオマールを扱う場合には、どうしても身が溶けやすい。それは、オマールの頭部から出る酵素が原因です。このメーカーではハイプレッシャーの後すぐに頭部を切り離し急速冷凍しているため、身溶けが起きないんです。食材ロスも防げますし、在庫管理も容易になります。また旬の時期に集中して加工するので、価格が安定していている点も使い易いポイントだと思います」

松本シェフが中華技法を取れ入れて仕上げたひと皿。アメリケーヌソースをまとったオマールブルーに添えられたのは、グリーンアスパラガスのリゾット。
松本シェフが中華技法を取れ入れて仕上げたひと皿。アメリケーヌソースをまとったオマールブルーに添えられたのは、グリーンアスパラガスのリゾット。

そのハイプレッシャー冷凍オマールを実際にシェフが使ってみての評価は、高いです。本誌2021年8月号では東京會舘「レストラン プルニエ」の松本浩之シェフが、これを真空パックのまま解凍し、塩と酒で下味をつけた後に卵白と片栗粉をまぶして揚げ、アメリケーヌソースを合わせた一品を紹介してくれました。「鮮度が素晴らしく、ストレスをかけていないからか甘みがあって、身がぷりぷりしている」との松本シェフからのコメントも、紹介されています。

「初めて使ったときは、すごく使いやすく味もフレッシュと遜色はありませんし、身の色もきれいで、ちょっとびっくりしました(シェ・イノ料理長 古賀順二シェフ)」

「一番の魅力はフレッシュと遜色ないところ。味や質感は同じだと思いますし使い勝手もよく、品質はフレッシュよりも安定しているといえます(銀座レカン料理長 栗田雄平シェフ)」と、ほかの一流店からの信頼も厚いものがあります。

そんなオマールですが、漁獲量は年々減少傾向にあり、フランスでは両目を結んだ線から尾までが22㎝以下のものの捕獲を禁止するなどし、資源を守ろうとしています。それでも成長に時間がかかるため、なかなか増えないのが現状。食材となるサイズ(500~600g)に育つためにかかる歳月が6年以上と聞けば、供されるオマールに、自然と感謝の念がわくのは私だけではないのでは。

次回はやはりフランス料理を代表する食材・ヴォライユ(家禽)についてご紹介します。

text:奥 紀栄 (料理王国編集部)

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